一つじゃない 第15回
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ライター:風来坊
日本では様々なところで「平等」が叫ばれています。
教育、性別、地域間格差、所得の再分配…。
誰の命だって同じく大切だから当然と言えるでしょう。
これ以外にも様々な課題について国は様々な施策を行っていますが、それらは本当に「平等」を実現しているのでしょうか。
国の考える「平等」と国民が考える平等は一致しているでしょうか。
「平等」の考え方も一つじゃない。
<医療は平等に受けられる?>
物価には地域差がありますが医療にかかる費用に地域差はありません。
例えば、同じ病気でレントゲンを撮った際に請求される金額は、北海道の病院でも沖縄の病院でも同じなのです。
これは国が作った「全国どこにいても同じ金額で同じ医療を受けられる平等なシステム」があるからです。
しかし、これが本当に「平等なシステム」でしょうか。
先の例えのように、同じ病気でレントゲンを撮り1000円の治療費を東京都で働く人と宮城県(筆者の居住地)で働く人が請求されたとします。その際の経済的負担は平等でしょうか。
東京都の最低賃金は1041円/h(令和3年10月)であり、宮城県の最低賃金は853円/hとなっています。
つまり、東京都で働く人は1000円の治療費を請求されても一時間分の時給で支払いを済ませることができますが、宮城県で働く人は一時間分の時給では医療を受けることができないのです。
このように国がドヤ顔で行っている「全国どこにいても同じ金額で同じ医療を受けられる平等なシステム」は、確かに「全国どこにいても同じ金額で」という点は実現できているかも知れませんが、経済的負担に地域差が生じているからには負担の大きい地域では医療の受け控えが起こり、そこには経済的理由による不平等が存在しているのです。
わかりやすく言えば、お金持ちは医療を受け易いが、貧しい人は医療を受け難いという不平等なシステムがまかり通っているのが現在の日本なのです。
<医療は平等に受けられる?2>
先に述べたように医療は平等に受けられるものではなく経済的負担の重さに地域差があります。
この経済的負担は地域差だけでなく、障がい者と健常者の間にも存在しているのです。
先の例えのような医療を受けるためには、宮城県で働く人は東京都で働く人より約1.3倍の経済的負担が発生しています。
これと同じように身体障がいのある人には約1.8倍の経済的負担、知的障がいのある人には約3.3倍の経済的負担、精神障がいがある人には約3倍の経済的負担が発生しているのです。
イメージとしては、東京都で働く人が1000円で治療してもらえる病気に対して、宮城県で働く人は1300円支払わなければならず、身体障がいのある人は1800円、知的障がいのある人は3300円、精神障がいのある人は3000円支払わないと治療が受けられないのです。
このように、日本の医療は健常者の間でも格差が生じていますが、障がい者と健常者の間にも格差が生じており、更に健常者より医療が必要な立場にある障がい者は強制的に医療費という重い負担に苦しめられているのです。
<障害者割引運賃の対象から除外される精神障がい者>
身体障がい者や知的障がい者はJRを利用する際に「障害者割引制度」という運賃の割引サービスがあります。しかし、精神障がい者は割引になりません。そこでJRに「どうして精神障がい者は割引にならないのですか?」と電話で問い合わせると「その件に関してお答え致しかねます」と電話を切ろうとするので「では、現在の障害者割引は誰が決めたのですか?」と質問すると「国土交通省です」という回答と共に通話は終了してしまいました。
そこで、私は国土交通省に「なぜ精神障がい者はJRの割引対象外なのですか?」と問い合わせると国土交通省からは「国土交通省では精神障がい者もJRの割引対象にするべくJRに働きかけていますが様々な組織との擦り合わせが上手くいっておらず実現していません」という返答と「国土交通省は努力しているので何もしていないように言われたくありません」とお叱りのお言葉までもらいました。
現在の福祉の考え方では、身体障がい者も知的障がい者も精神障がい者も同じサービス受けられるということが基本的な考えになっています。
しかし、JRでは精神障がい者を仲間外れにすることが当然と考えているようです。
先に述べた通り、こうした障害者割引制度の不平等について国はJRに責任があると認識しているのです。
<障がい者を蚊帳の外にして責任を押し付け合う人々>
私は、国土交通省の主張を踏まえてJRに改めて「国は精神障がい者も障害者割引制度の対象に加えるべきだと考えているのに、どうしてJRは精神障がい者を障害者割引制度の対象に加えないのですか?」と文章で問い合わせました。
すると、JRから
「身体障害者、知的障害者に対する割引につきましては、国等の法的な規制により実施しているものではなく、事業者の判断に基づき実施しているものであり、公的な補助等は受けておらず、現在は当社、ひいては一般のお客さまのご負担により実施しているものです。
当社では、身体障害者割引等、国鉄時代に国の施策として始められ、それを継承して実施している公共割引は、本来は国の社会福祉政策の一環として実施されるべきものであると考えており、国の施策がとられるまでの間、これまで実施している公共割引にきましては引き続き実施してまいりますが、これ以上の割引対象の拡大は、割引対象となる方の増加により、一般のお客さまのご負担増ひいては運賃への転嫁などにも繋がりかねないため、これ以上の割引対象の拡大については考えておりません。」
という回答がありました。
この回答に私はハッとしました。
JRはもう公共事業ではないのです。
つまり、障害者割引制度はJRの善意で提供されているサービスであり、その実施に関してJRには何の義務も責任もないのです。
これはラーメン屋の親父さんが客Aにはチャーシューをサービスして、客Bにはサービスしなかったとしても誰にも文句を言われる筋合いがないのと同じなのです(サービスされなかったBさんの身になると心苦しいものはあります)。
むしろ「JRには精神障がい者も障害者割引制度の対象に加えるべき」と、お金は出さないくせに一般企業に負担を強いる国の方が責任転嫁をしていて悪質と言えるのではないでしょうか。
ただ、JRが障害者割引を「一般のお客さまのご負担」と考えている点には不愉快な感情があります。
JRにとって、障がい者は一般の客の迷惑なの?
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ライター 風来坊
東北の片田舎在住のアラフォー。 児童虐待、いじめ、パワハラ、自傷による措置入院を経験。 田舎では福祉に偏りがあると考え30代から大学で福祉を学ぶ。 数年前には事故で利き手が不自由になり、現在はリハビリを兼ねた趣味(プラモデル、ニードルフェルト、UVレジン)に没頭中。 いつか全ての人が楽しめる駄菓子屋を開きたい。
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