「障害者差別解消法」施行から2ヶ月。自治体は具体的にどんな対応をしている?
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ライター:Media116編集部
4月に障害者差別解消法が施行されてからまもなく2ヶ月、皆さんはもうこの法律を理解されていますか?この法律のポイントはふたつあります。
ひとつめは「差別的取扱いの禁止」で、国・都道府県・市区町村などの行政機関や、会社や店などの民間事業者が、正当な理由なく、障がいを理由として障がい者を差別することを禁じるものです。
ふたつめは「合理的配慮の提供」です。障がい者にとって暮らしにくくするようなものや事態があった場合、負担が重すぎない範囲で除去などの対応をすることを求めています。「行政機関はこの提供が法的義務」とされ、また、「民間事業者は努力義務」となっています。
この法律の施行によって各地方自治体は、障がい者からの相談に対し、より具体的な改善につながる対応が求められるようになりました。では、各自治体はこの法律に対し、具体的にどのような対応をしているのか?自治体へのヒアリングなどを行い、その現状を調査しました。
自治体の対応 その1 ・職員用「対応マニュアル」を作成
都道府県や市区町村などの役所は、国の意向で障がい者の声を反映しながら「不当な差別的取り扱い」や「合理的配慮」の具体例を盛り込んだ「対応要領」の作成に努めることになっています。対応要領というと難しそうですが、要は職員用の「対応マニュアル」です。
この「対応要領」、本来は法施行と同じ4月1日に策定することとされていますが、内閣府による自治体に対するアンケートでは、全市区町村のうち4月1日に策定していたのは21%とのことでした。
「対応要領」を策定した自治体の多くは、ホームページにそれぞれ独自の職員対応要領を作って掲載しています。なかには青森県のように、職員用だけでなく、病院用、教育委員会用、警察用などの「対応要領」を作成し、掲載しているところもあります。
青森県庁ホームページ
一方、各自治体が障がい者に対して実施している差別の体験アンケートをみると、
「病院の受付で『耳が聴こえないため、順番が来たらこのあたりに座っているので教えてほしい』と伝えたが、結局直接教えてもらえず、順番をとばされた。」
「障がいがあるために希望していた学校に進学できなかった。」
といった声があがっています。公的な病院や施設、学校なども今後は障がい者向けの合理的配慮に基づいた対応が求められるようになりますから、こうした様々な分野の対応要領ができるのはのぞましいことです。
また、東京都の福祉保健局のホームページには、都庁職員、市区町村職員用の「対応要領」として、障がい者の声を反映したハンドブックが掲載されています。
民間事業者も活用できるように、①学校、②病院・福祉施設、③交通、④住まい、⑤銀行、⑥小売店、⑦飲食店といった業種ごとの差別的事例と合理的配慮例も掲載されているほか、各障がいの特性と対応についても解説しており、わかりやすく充実した内容です。どんなことが差別に該当し、どんな配慮を求めることができるか、を把握する上で網羅性のある一冊としておすすめです。(下記:「東京都障害者差別解消法ハンドブック」)
「東京都障害者差別解消法ハンドブック~みんなで支え合い、つながる社会をめざして~」
自治体の対応 その2 ・一般用の啓発パンフレットをリリース
地元の民間事業者や一般の方向けに、「障がい者差別解消法」をわかりやすく説明したパンフレットやポスターを作成している地方自治体も多いようです。音声コードを入れたり、やさしい言葉を使うなどの配慮もされています。(下記:山形県の障害者差別解消パンフレット)
山形県の障害者差別解消パンフレット
障がい者施策で先進的な取り組みを行っている名古屋市では、市の広報誌である「広報なごや」で、2月に「障害者差別解消法特集号」を発行、市内全戸に配布しました。名古屋市の障害企画課には、この広報を読んだ市民の方から「法律について詳しく教えてほしい」といった問い合わせが複数寄せられたそうです。(下記:広報なごや「障害者差別解消法特集号」)
広報なごや「障害者差別解消法特集号」
周知に課題のある障害者差別解消法ですが、名古屋市のように、よく多くの市民の目に入るように力を入れている自治体もあるのです。
自治体の対応 その3 ・障がい者向けの差別相談窓口の開設
実際に行政機関や民間事業者に対して「これって差別では?」と感じたとき、その場で合理的配慮が得られなかったときに、「なんとかしてほしい!」と思っても、「どこに相談したらいいかわからない」とか「本当に差別にあたるのかもよくわからず相談しづらい」のが実情ではないでしょうか。
障害者差別解消法では、地方自治体ごとに「障がい者からの相談窓口を設ける」ことも決められています。ですから、まずは自治体の相談窓口を利用してみましょう。窓口は、自治体ホームページに掲載されているほか、市区町村の障がい福祉窓口に問い合わせてもわかるはずです。
地域別に相談窓口を設けているところもありますし、もともとあった障がい者用相談窓口を利用して対応する自治体も多いですが、この法律をきっかけに、「差別相談」専用の窓口をあらたに開設した自治体もあります。一本化した窓口があるのは、非常にわかりやすい取り組みです。
「差別相談」の窓口を一本化した自治体のひとつが兵庫県です。4月1日から、県庁内に「障害者差別解消相談センター」を開設しました。開設から1ヶ月、どのような反響があったか、担当者にお聞きしたところ、1ヶ月で44件の相談が寄せられたそうです。寄せられた相談のなかには
「クレジット会社で障がいのあることを伝えたうえで、書類の代筆を頼んだところ断られた」
というケースがあったとか。民間事業者にも合理的配慮の努力義務がありますが、提供が行われなかったわけです。この相談者には、専門の相談員が法律のことも含めた事業者への伝え方をアドバイスされたそうです。ほかには、小学生の障がい児をもつ親御さんから
「地域に障がい児向けの放課後デイサービスがなく、福祉サービスが受けられないのは差別ではないか?」
との相談もあったそうですが、このケースは不当な差別的取扱いとは言えません。ですが、該当地域にある学童保育で障がい児も保育を受けられるので申し込みをしては、と具体的な解決策がアドバイスされたそうです(ちなみに申し込んだ学童保育で、もし障がいを理由に断られた場合は差別対応にあたります)。
このケースのように、相談内容は差別に直結しないものも多かったそうです(特に「障害年金が少ない」などの生活相談も多数寄せられたとのこと)。ただ「障がいのことで困っているが、どこに相談したらわからない」といった方々の最初の窓口となり、分野に応じた専門窓口につなげていけた点から、兵庫県の相談センターの開設は、福祉サービスとして大きな役割を果たしたといえるでしょう。
障がい者の方にとっては日頃から日常生活に不自由を感じることも少なくないため、今感じている社会的なバリアが差別か、差別にあたらないのか、その判断が難しいケースも多く、「差別」をとらえきれていないのが実情かもしれません。ですが、「これって差別?」と思われることがあったら、判断に迷われるケースだったとしても、まずは相談されてみてはいかがでしょうか。より生きやすくなるための一歩につながるかもしれません。
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ライター Media116編集部
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