1. Media116
  2. 社会
  3. その他
  4. 【超福祉展】2020年、「超福祉」が当たり前の社会にするためには? ~「超福祉・実現MTG」を聞いて~

【超福祉展】2020年、「超福祉」が当たり前の社会にするためには? ~「超福祉・実現MTG」を聞いて~

この記事を共有

【超福祉展】2020年、「超福祉」が当たり前の社会にするためには? ~「超福祉・実現MTG」を聞いて~ タイトル画像

ライター:Media116/超福祉展2017

11月7日(火)〜13日(月)に渋谷ヒカリエほか、渋谷の各所を舞台に開催中の「2020年、渋谷。超福祉の日常体験しよう展。(通称:超福祉展)」。障がい者や高齢者、LGBTなどのマイノリティ、そして福祉そのものに対する「意識のバリア」を取り外し、マイノリティの存在をマイナスからゼロではなく、「かっこいい」「かわいい」と憧れの対象まで押し上げようと企画された博覧会だ。
Media116は開催期間中、この超福祉展を密着取材してきた。今回は10日(金)に行われた目玉イベント「超福祉・実現MTG」をご紹介したい。

「超福祉・実現MTG」は、さまざまな福祉の分野で活躍する5名のプレゼンターが、「2020年に超福祉な社会を日常にする」ために解決すべき課題を持ち寄り、それについて、専門家や技術者、自治体関係者、民間企業、障がい当事者など立場の異なる人たちと議論を交わす。そして、その課題を解決するためのアイデアや施策を打ち出そうという、福祉の明るい未来を目指したワークショップ型のイベントだ。

プレゼンターはこちらの5名。
・島影圭佑さん
株式会社OTON GLASS 代表取締役。視覚障がい者・読字障がい者のための、文字を読み上げてくれる眼鏡型デバイス「OTON GLASS」の研究開発と事業化に取り組む。
・近藤玄太さん
NPO法人Mission ARM Japan理事。上肢障害者同士の出会いの場をつくり、想いの共有、情報の共有を通し、義手の開発や障がい者向けの商品の企画提案、開発支援などを行う。
・織田友理子さん
車椅子ウォーカー代表。NPO法人PADM代表。自身が遠位型ミオパチーにより簡易電動車椅子を利用。バリアフリー&バリア情報をシェアできるアプリ「WheeLog!」を開発。
・瀧澤啓太さん
「アンドハンド」プロジェクトチーム ワークショップデザイナー/クリエイティブファシリテーター。LINEなどを活用し、身体・精神的な不安や困難を抱えた人と、手助けをしたい人をマッチングする「アンドハンド」を開発。
・嶋村仁志さん
一般社団法人TOKYO PLAY代表理事。冒険遊び場での実践を中心に、20年以上にわたり、子どもたちに豊かな遊び場を提供するための活動を行う。

身体障がい者が、街に溶け込む世の中に

この場では、各プレゼンターを囲み、技術者や専門家、自治体関係者や障がい者当事者などがテーマごとに意見を交換し合うタームがメイン。その中でも、Media116読者の障がい当事者に関連性の高いものをピックアップしたい。

義手の開発や障がい者向けの商品の企画提案、開発支援などを行う、近藤玄太さんのチームでは、身体障がい者が違和感なく街に溶け込んで、生活できる世の中にするためにどんなことができるか?をテーマに議論が交わされた。

「ユーザーでなくとも、欲しがるようなかっこいい義手とは?」
「AppleWatchのように、機能的なツールが埋め込まれた義手なんていいかも」
「義手が、デザイナーがデザインしたいと思えるようなおしゃれなアイテムになるといい」
「義手だけじゃなく、片手でも使いやすい傘など便利なツールがもっとあるといい。それなら、身体障がい者でなくとも欲しいと思うはず」

など、この「超福祉展」のテーマでもある、マイノリティが「かっこいい」「かわいい」と憧れられる存在になるためには?という視点も加わり、さまざまな意見があがった。

そして、最終的に集約された提案はこの3点。
1 セレクトショップにかっこいい義手を
著名なデザイナーがデザインしたり、高級ブランドがプロデュースしたり、義手を使わない人でも欲しくなるようなアイテムにしたい。また、セレクトショップには片手で開閉や片付けが可能な傘など、身体障がい者やそれ以外の人にとっても便利なグッズも並べたい。

2 身体障がい者の遊び場を増やす
スポッチャなど、スポーツを楽しめる施設にスポーツ用の義手や義足が当たり前に置いてあり、身体障がい者も健常者も同じように娯楽に興じられる環境に。

3 義手・義足を手軽にメンテナンス
駅中などで靴やスマホの修理を行っている「ミスター・ミニット」に、義手や義足を微調整するメンテナンスのサービスをメニューとして追加してもらい、身体障がい者が気軽に立ち寄れる場所に。

「当事者の方、技術者の方などから、具体的な意見がたくさん出て、とても有意義な場となりました。ここで挙がったアイデアを実現するためにすぐにでも動き出したい」と近藤さん。

車椅子ユーザーがためらいなく繰り出せる街にするには?

バリアフリー&バリア情報をシェアできるアプリ「WheeLog!」を開発する、織田友理子さんのチームでは、「2020年に向け、バリアフリー情報がまとまっているだけでなく、実際に車椅子ユーザーが街のそこかしこに出掛けている状況」をゴールとし、何をすべきかを話し合った。

各市区町村でとりまとめているバリアフリーマップは、なかなかアップデートされず、また、情報の詳細さもまちまち。なおかつ、障がいの種類がさまざまな中で、車椅子に特化した情報をまとめたものでは十分でない、との課題が。

「最初に自治体へ協力を仰ぐよりも、民間企業とタッグを組んでスタートし、そこへ行政に入って来てもらうようなやり方も良いのでは」
「自治体ごとに異なるフォーマットを統一したい」
など、行政とどのように関わっていくべきかについて、多くの時間を割いて意見が交わされた。

車椅子ユーザーが何十人、何百人と街に出た時、電車に乗り切れるのか?店は対応しきれるのか?道路での安全は確保されるのか?など、不安要素はたくさんある。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの際には、それが現実のものとなる可能性が高く、早い段階で、車椅子ユーザーはもちろん、その他の障がい者が不便なく街を歩くことができる環境を整えることが必要だ。

「バリアフリーだから街に出る」のではなく、「車椅子ユーザーが街に出ることで街が変わる」、織田さんはそんな想いでアプリ「WheeLog!」を生み出した。
車椅子で入りやすかったお店や施設、トイレなどのスポット情報、車椅子ユーザーが通った道を記録する走行ログ、「こんなことを知りませんか?」といったリクエストなど、ユーザーの投稿型で運用される当事者のリアルな声が詰まったもの。

今後、スマホを活用したツールが世の中に出回ることを見据えて、「渋谷区を歩きスマホ特区にしてはどうか?」という画期的な意見もあがった。誰のための、何のためのツールなのかを考えたら、確かにそれは突飛な提案ではなく、十分検討の余地のある意見。そこにはやはり行政の介入が不可欠で、冒頭で紹介したように、自治体とどのように連携していくかという議論を深めていく必要がありそうだ。

手助けしたい人の背中を押して、気持ちの良いサポート体制を

LINEなどを活用し、身体・精神的な不安や困難を抱えた人と、手助けをしたい人をマッチングする「アンドハンド」を開発する瀧澤啓太さんのチームでは、この「アンドハンド」がどうすれば多くの人に活用されるのかをメインに話が進められた。

「アンドハンド」は、妊婦や身体・精神障がい者などが、キーホルダーや杖など自分に合ったデバイスを携帯して、手助けが必要な時に、それをONにすると、周囲にいる手助けをしたいと思っているサポーターのLINEにメッセージが届く仕組み。

手助けをしたいけれど、困っている人がどこにいるのかわかりづらい、手助けを必要としている人や状況がわかりづらいといった負を解消し、積極的にマイノリティへのサポートを行うことができるツールとして、注目を浴びている。

LINEで「&HAND」を検索、友だち登録をすることでサポーターとしてこのシステムに参加できるのだが、サポーターがいなくては成り立たない。

「誰かに席を譲ったら、それがポイントとして加算されてインセンティブがもらえる」
「ポイントが貯まったら、ゴールドPASMOがもらえるっていうのも面白い」
「改札を出る時に〝ありがとう″という感謝のメッセージが出たらうれしいかも」
「ポイントの高い人をランキングづけして、車内のテレビで紹介したら?」
など、手助けをする側にとってうれしいメリットを打ち出して、より多くのサポーターを獲得し、システムの定着化を目指していくのが良いのではと、意見がまとまった。

アンドハンドには、先に紹介した織田さんのチームから「ぜひタッグを組みましょう」とのラブコールもあり、障がい者に向けた発展途上のプロジェクト同士が連携する可能性を生み出す、建設的な議論の場となった。

「超福祉・実現MTG」という名の通り、近い将来、ここで挙がったアイデアを実現させることが何より重要。

Media116ユーザーの中には「マイノリティを憧れられる存在にする」という考え方自体、障害当事者の現実を分かっていない!、あるいは突飛なアイデアが実現できるの?と議論を懐疑的に捉える方もいるかもしれない。最もな話だ。
しかし、現実に横たわる課題や既存のイメージを払拭しようと奔走した先人達のバトンリレーによって新しい世界が生み出されてきたのもまた事実だ。


各プレゼンターの今後の動向に注目していきたい。

「2020 年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」11/13(月)まで開催中!

会場:渋谷ヒカリエ 8F「8/(ハチ)」
時間:11:00-20:00 (最終日は 16:00 まで)
サテライト会場:渋谷キャスト、ケアコミュニティ・原宿の丘、ハチ公前広場、代官
山 T-SITE、みずほ銀行渋谷支店、SHIPS 渋谷店、モンベル 渋谷店
公式ホームページ

この記事を共有

アバター画像

ライター Media116/超福祉展2017

2017年11/7(火)~11/13(月)まで渋谷にて開催される「2020 年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう 展」。 マイノリティや福祉そのものに対する意識のバリアを変えていく福祉の一大イベントをMedia116が密着取材します!

ブログ
公式HP
https://www.media116.jp/author/shuzaihan

このライターの記事一覧を見る

おすすめ記事

Media116とは?

アットジーピー

障害別専門支援の就労移行支援サービスアットジーピージョブトレ。障害に特化したトレーニングだから働き続ける力が身につく。職場定着率91パーセント。見学・個別相談会開催中!詳しくはこちら。

MENU
閉じる
ページの先頭へ戻る