人生には冒険が必要だ! ~車椅子で木登り?ユニバーサル・ツリーイングの魅力に迫る~(後編)
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ライター:Media116編集部
皆さん、“Tree+ing(ツリーイング)”をご存知ですか?森の中、木の枝にロープでぶら下がり、ゆらゆらと時空を楽しむアクティビティです。ちょっと想像してみてください。新緑の木漏れ日の中、木の葉の間をすり抜ける風を感じながら、樹上から森を見渡す――。なんて気持ちの良い、贅沢な時間でしょう!「とっても素敵だけど、自分には関係ないや」と思ったそこのあなた。もし、専用の車椅子に乗ったままで楽しめるとしたら、どうでしょうか?
前回に引き続き、ご紹介するのはTree+ingをより多くの人が楽しめるように進化させた“Universal Tree+ing(ユニバーサル・ツリーイング)”です。提供するのは、『Outdoor for all』を理念として掲げる一般社団法人Water Ground Mountain(WGM)。前編では、代表理事の吉川史浩さんにサービスの開発や提供に到るまでの想い、ご苦労などについてお話を伺いました。今回の後編では、体験者とのエピソードや、今後の展望などについて語っていただきます!
大切なのは、家族や仲間と体験を共有できるということ
Q:体験された方とのエピソードで、印象に残っていることはありますか?
吉川:知的障害のある車椅子ユーザの息子さんを連れてこられたお母さんが、樹上へ上がっていく息子さんを地上で見ながら、
「私たち家族が森に入るなんて、一生ないと思っていました」
と涙ながらにお話しされたんです。「そんなことないですよ。お母さんも一緒に上がりましょう」と、息子さんと一緒に樹上での時を体験していただきました。その時、息子さんが葉っぱの方へ手を伸ばしたりする様子を見て、お母さんが
「いつもこんなに動いたりしないんです。喜んでいるんだと思います」
と言ってくれて、とても嬉しかったですね。
Q:一緒に体験するということを大事にされているんですね。
吉川:そうですね。様々なケースがありますし、木にもよりますが、障害の有無を問わず、なるべく家族や仲間と全員一緒に上がって、体験を共有できることが大切だと思うんです。僕らの理念は「Outdoor for 障がい者」ではなく、あくまでも『Outdoor for all』なんです。
障がい当事者だけではなくその家族も、どこか自分の欲求を諦めていたり、世間からはじかれているような気分に陥りがちだと思うんです。それは連続する日々の中でボディブローのように効いてくる。僕らは、みんなが一緒に楽しめる機会を提供することで、そういう閉塞感をぶち破りたい。
複数団体が参加するイベント会場でTree+ingを提供していたとき、元気いっぱいの弟君がやりたがるのを、「お兄ちゃんがいるからあかんねん」とお母さんが一生懸命諭そうとしたんです。すかさず「お母さん、お兄ちゃんも一緒にできますよ。なんなら弟君よりも高く上げてあげますよ」と声をかけると、弟君が言ったんです。
「お兄ちゃんと一緒にできるのって、初めてだね!」
って。子どもらしい無邪気な言葉に、その場にいた大人はみんな、感極まっていましたね(笑)あぁ、やってよかったなと、あらためて思いました。
すべての「やりたい!」という気持ちに応えたい
Q:Universal Tree+ingの今後の展開について、どんなビジョンをお持ちですか。
吉川:Universal Tree+ingは、現状WGMでしかできないアクティビティになっているので、人材育成に力を入れていきます。2017年度は、Tree+ingの指導者組織で一定のレベルに達している人材向けに、Universal Tree+ing講習会を年2回ほど開催する予定です。
あとは、実施できる場所を増やしていきたい。実績も積んできているので、色々な場所で体験できるようにしたいです。今度、埼玉県の車椅子ユーザの保護者の団体さんが呼んで下さることになっているんです。いろんな場所でTree+ingを体験できるようにして、その土地その土地で同じ思いを持った指導者を育成していきたいと思っています。
Q:吉川さんに来てほしいというオーダーには、どの辺りまで対応可能ですか?
吉川:日本全国どこにでも行きますよ。もちろん遠いほど経費の問題などもありますが、僕が行けば実現できるということであれば、どこへでも行きたいと思っているので、まずはご相談いただきたいですね。
まだまだ脆弱な日本の障がい者アクティビティ
Q:WGMはata Alliance(エー・ティー・エー アライアンス)という団体のメンバーになっていますね。
吉川:WGMを法人化し、HIPPO campeを活用したいとコンタクトを取ったのが、ata Allianceでした。HIPPO campeの輸入を始め、障がい当事者とその家族や友人たちが一緒に大自然を楽しむために必要な機材や技術を持つ団体で、ユニバーサル・ツリーイングの取組がきっかけとなって、現在WGMはata Allianceの関西地区の事務局として名を連ねています。
(写真:吉川氏)
日本では、障がい者が安心して旅行できる環境も整っていませんし、アクティビティに参加できる機会となると、旅行よりも極端に限定されてしまいます。そんな中、ata Allianceでは障がい者の旅行のほか、僕らのTree+ingをはじめ、デュアルスキーや山登りなどのアクティビティや、あるいは日本では経験できないアクティビティもカナダやフランスなどでのツアーとして企画もしています。
僕が知る限り、これほどバリエーションに富んだサービスを提供している団体は日本国内ではほかにないと思います。代表の中岡さん自身が難病患者であり、障がい当事者なんですが、車椅子に乗って富士山の登頂にも成功しているんです。
挑戦すれば、色んなことができるんだということを日本国内に発信していきたい。あえて多くの人が「絶対無理だ」と思うようなダイナミックなアクティビティをラインナップしているのには、より高いハードルを越えることで、さらに次へと可能性が広がっていくという狙いがあります。実際、アクティビティの参加者で「もうなんでもできる気がする!」と言って、帰っていく方が多いんですよ。
Q:最後に、読者にメッセージをお願いします。
吉川:僕自身が冒険が大好きで、冒険を通して成長してきました。障害の有無に関わらず、人には冒険が必要で、すべての人に冒険をする権利があると思うんです。「やりたい!」という気持ちには、全部こたえたいと思っています。お会いできるのを楽しみにしています!
Tree+ing を楽しむには
●樹上からの景色は最高!カメラには長めのストラップをしっかりつけるなど、落下防止対策を!
●冷えが気になる季節は防寒対策を。お尻の下を風が通り抜けます。
●年間を通して、兵庫、京都、長野などでイベント開催しています。詳しくはWebサイトへ!
●Universal Tree+ingは完全予約制です。専門技術スタッフを確保する必要があるため、早めにご連絡を!
Universal Tree+ing Webページ
URL:http://watergroundmountai.wixsite.com/wgmwgm/technical-support
WGM Webサイト
URL:http://watergroundmountai.wixsite.com/wgmwgm
ata Alliance Webサイト
URL:https://www.ata.tours/
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障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。
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