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人前で話すのが苦手だった私がセミナー講師に。さまざまな障がい者の声を届ける仕事とは?

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ライター:aki

「人前で話すのは苦手なほうだと思っていたのですが、実際にセミナーで話してみたら意外とスラスラ言葉がでてきて、“あれ?向いているのかもしれないな”と自分でも発見でした」

富田健介さんは、2009年、26歳のときに事故で脊髄損傷を負い下肢障がいとなりました。現在は車いすで生活をしています。
事故の前は飲食店のホール担当として働いていた富田さん。現在はセミナー講師として障がいやバリアフリーについて多くの人の前で話をするようになりました。富田さんの現在の仕事内容とやりがい、そして会社について話を聞きました。

第一印象から「入社したい」と思っていた

「入社の決め手になった一番のポイントは環境面です。職場が空港内なので、車いすでの移動も安心だろうと思ったのと、車通勤OKだったことが大きかったです」

2015年にANAグループの特例子会社、ANAウィングフェローズ・ヴイ王子株式会社(本社:東京都大田区羽田空港、以下ANAウィングフェローズ・ヴイ王子)に入社。いくつかの部署を経て、現在はUniversal Standard Consulting事業部(ユニバーサル・スタンダード・コンサルティング事業部。通称USC事業部)で働いています。

下肢障がいになってから初めての就職活動で、「通勤のハードルが低いかどうか」という点を重視していた富田さん。障がい者向けの就職エージェントに登録して、いくつかの企業にエントリーしました。その中でもANAウィングフェローズ・ヴイ王子は、環境面の安心感もあり第一志望でした。

取材に答える富田健介さん
取材に答える富田健介さん

入社して8年経った現在の主な業務はセミナーの講師です。ANAグループ各社やグループ外の企業を対象に、さまざまな障がい者の声を届けることが主な役割です。

2015年に入社してから現在まで、いくつかの部署を経験し、遠方の出張もこなしています。
「年に何回か、セミナーで遠方に行くことがあります。また、空港内の導線や機内サービスのどこにどんなバリアがあるか実際に搭乗して検証する仕事があります。沖縄や北海道にも行きますし、昨日も福岡から帰ってきたばかりです

富田さんの一日

富田さんの1日のスケジュールをまとめてみました。
リモートワークや出張の日もありますが、出社した日の内容をまとめています。

オフィスへ向かうエレベーターを降りると、目の前は羽田空港の滑走路。
オフィスへ向かうエレベーターを降りると、目の前は羽田空港の滑走路。

8:50ごろ 車で出勤
 横浜方面の自宅から、手動運転できるマイカーを運転して出勤します。
 「ラッシュがないので、私は電車通勤よりも合っています」
9:00 業務スタート・朝の情報共有
 リモートワークメンバーも含めて、本日の業務内容の確認や調整、情報共有などを行います。
9:15ごろ 部内進捗共有
 セミナーのための情報取集や調査をしたり、発表用の資料をまとめます。
 出張後であればレポート作成をする日もあります。
 「資料作りは得意ではないですが、日々チャレンジしています。セミナーでは、聞く方の興味を引くポイントを入れるようにしています」
12:00ごろ お昼休憩
 各自キリのいいタイミングで、お昼休憩を取ります。
 「最近は、従業員エリア内で我社が展開するカフェで買って自席で食べることが多いです」
13:00ごろ 午後の個人業務スタート
 午前のタスクを引き続き行います。
 日によって、社内打ち合わせや社外打ち合わせもあります
18:00 業務終了~車で帰宅
 残務整理、進捗報告等をしてから、マイカーで帰宅します。

USC事業部のオフィス内で、パソコンに向かう富田さん。
USC事業部のオフィス内で、パソコンに向かう富田さん。

USC事業部の部屋はとてもコンパクトです。机を壁面に向けているのは、車いすで室内を移動しやすくするためでもあります。
車いすで利用できるトイレも、富田さんの部署から行きやすい導線に配置されています。

ANAウィングフェローズ・ヴイ王子は、どんな会社?

富田さんの働いている、ANAウィングフェローズ・ヴイ王子は、航空会社大手ANAグループの特例子会社です。社員の約85%は何らかの障がいがある人で、富田さんのような肢体の障がい以外にも様々な障がいのある人が働いています。

表

グラフ
(表・グラフ引用元:障がい者内訳|ANAウィングフェローズ・ヴイ王子)

富田さんが所属するUSC事業部を含めて、全部で11の部署があります。(2024年1月現在)各事業の詳細は、リンク先をご確認ください。

● 富田さんが所属する「Universal Standard Consulting事業部」。
 ユニバーサルな環境づくりのためのコンサルティング業務を行う。
● マイレージに関するサポート業務全般を担う「ANAマイレージクラブサービスセンター」。
● ANAのフライトに関する領収書や各種証明書を発行する「ANAコンタクトセンター」。
● 整備や事務の業務をバックアップする「ANAグループ・グッドジョブサポートセンター」。
● グループ各社のユニフォームの保管やクリーニング、貸与等を行う「ユニフォームセンター」。
● フランチャイズ契約をしているコンビニエンスストアを3店舗運営する「コンビニオペレーションセンター」。
● スワンベーカリーでパンの製造・販売を行う「ベーカリー事業部」。
● 人事・総務のほか、新規事業の立ち上げなども担当する「働き方企画部」。
● ANA従業員エリア内で展開するカフェ「ANA WOnderful Day」。
● グループ内の書類のデータ化を主業務とする「大阪事業室」。
● 宮崎県にある紙製品や木工の工房「ANA青島ファクトリー」。

それぞれの事業でさまざまな職種の人が、自分に合った働き方で働いています。

現在の求人が気になった方は、こちらをご参照ください。

エレベーターホールから、夜の滑走路を望む。
エレベーターホールから、夜の滑走路を望む。

「とりあえずやってみる」さまざまな部署を経験

入社当初は「マイレージクラブサービスセンター」で、郵便物を内容ごとに仕分ける仕事からはじめた富田さんでしたが、徐々にセンター内でもより複雑な業務を担当するようになりました。
その後「働き方企画部」で採用業務を担当。再び「マイレージクラブサービスセンター」でスタッフの管理を担当します。

そして、富田さんが現在所属しているのが、Universal Standard Consulting事業部、通称USC事業部です。2016年に設立されました。

USC事業部は、さまざまな障がい者の声を集め、社内に蓄積されたノウハウを活かして、ユニバーサルな環境づくりを検証・提案するのが主な業務です。グループ内だけでなく、空港をはじめとする公共交通機関、商業施設、官公庁、企業等を顧客としています。セミナー・商品開発・各種検証などをニーズに応じて提案・提供する部署です。

「USC事業部の立ち上げ当初、私はマイレージクラブサービスセンターにいました。そのころ“ちょっとセミナーで話してくれる?”と頼まれて、話したのが最初でした。
やってみる前は不安でしたが、いざ話してみたら時間が足りないくらいで、“あれ?もしかして向いているのかな?”と気づきました」

その後、2020年からUSC事業部専属になりました。
一緒に働く方たちは、富田さんの「とりあえずやってみる」姿勢を高く評価しています。

上長の俣野さん「社員の中には自分を低く評価してしまったり、新しいことをやってみるのに不安が強い方もいます。ですが、彼は“とりあえずやってみよう”という姿勢や考え方です。それが本人の成長にもつながっているし、周りの信頼も得られていると思います」

人事の佐藤さん「本人は“自分はネガティブだ”と言いますが、慎重にいろいろ考えたり、しっかり振り返ったりという姿勢は、仕事をするうえでは、むしろプラスに働く場面も多いです」

打ち合わせ中の富田さん。
打ち合わせ中の富田さん。

前職は飲食店だったため、はじめは資料作りもメール対応も苦手だった富田さんですが、先輩社員のメールを参考にしたり、書籍を読んでパソコンについて勉強したりしながら克服していきました。

富田さんがUSC事業部に異動した2020年はちょうどコロナ禍でした。対面のセミナーが中止になる中、自社のオンラインセミナーのひな形づくりも、富田さんが中心になって進めました。

自分の体験が「社会課題」とつながっている実感

明るい笑顔で、取材に答えてくださいました。
明るい笑顔で、取材に答えてくださいました。

富田さんに現在の仕事のやりがいについて聞いてみました。

「セミナーに参加する方が、一生懸命に前向きに聞いてくださって、質問などもたくさんしてくださるので刺激になります。

ただ、障がい者もそれぞれ1人の人間なので、対応方法も、ニーズや考え方も個々に違います。“これが正解”というのが言えないのが非常に難しいなと感じています。
だからこそ、“正解はないけれど歩み寄るにはどうしたらいいか”というのを伝えたいと思っています。

ちょっと大げさな言い方になってしまいますが、ユニバーサルな環境づくりという社会課題において、微力ですが影響を与えているという実感を持てるので、非常にやりがいがあります」

また、仕事の枠にとらわれない夢として、次のように話してくれました。

「広く一般に向けて、様々な障がいを体験できる施設のようなものを作ってみたいです。
違う立場の人同士が歩み寄れるような機会を広げていくことで、世の中が今よりも少しよくなるといいと思います」

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ANAグループの総合受付にある空港の模型。
ANAグループの総合受付にある空港の模型。

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ライター aki

ASDの長男と、たぶん定型発達の夫と暮らしています。私自身は診断をうけていませんが、おもちゃを一直線に並べて遊ぶ子どもではあったらしいです。                Twitter: https://twitter.com/akiko_m_psy10

ブログ
https://note.com/aki_m_psy10
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