「申し訳なさ」を「感謝」へ~聴覚にハンディキャップのあるAさんがアルバイトから学んだこと~
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ライター:Media116編集部
みなさんこんにちは!Media116編集部です。みなさんはアルバイトを探すときに、障がい上の理由で断られてしまったり、採用されても業務上困難に当たったりしたことはありませんか?今回は弊社の社員で聴覚にハンディキャップのある女性に話を聞きました。実体験を踏まえ、彼女が伝えたいこととは・・・?
症状を説明してもなかなか理解してもらえないという現実
はじめに、彼女の聴覚のハンディキャップには7つの症状があります。
①自声強調(自分の声が頭の中で大きく聞こえる)があり、大きな声を出しづらい。
②自声強調から、自分の声量が自分でわからない。
③大きな声をだすと頭が痛くなったり、周りの音や声が聞こえない。
④自分が話している時に話しかけられると、何を言ったかわからないので話をかぶせないで会話をして欲しい。
⑤気圧の変化により、普段より声を出しづらくなることがある。
⑥気圧の変化により、耳鳴りや耳痛、めまいなどが起こり体調動くことが困難な時がある。
⑦症状が酷いときは、耳鳴り、耳痛に加え、耳に水が入った時のような感じになる。
特に④が一番理解されづらいとのこと。
当時アルバイトの面接を受けた時、彼女は当時自分で理解していた症状について伝えていました。その上で断られることはなかったそうです。「アルバイトとなると、面接も軽く流されている感じがしました」そう言う彼女。
コンビニやテーマパークのアルバイト、そして舞台の音響スタッフ、舞台監督のアルバイトをしていたそうです。しかし、実際に働いてみると耳の病気(耳管開放症)の症状で「声が小さい」ということで常に悩んでいたそうです。
接客で「いらっしゃいませ」という声が店の奥まで聞こえないこと等に対して
「あなたならもっと出せる」「がんばれば声を出せる」と言われ、理解されないことも多々あったそうです。
舞台音響・監督のアルバイトでも「声が小さい」「なんで声をだせないのか?」「そんなんじゃ誰にも指示を出せない」と言われることも。
「聞こえる人」達にとって、どれだけ自身の症状を説明しても「耳の病気」だからといって聞こえづらさだけが障がいになっていると思われ、症状が「声量」にも関わっていることに結びつかなかったようです。
「申し訳ない」よりも「感謝」で接すると決めた
彼女はその困難を解消するため「とにかく声を出していました。声をだしているときは周囲の音が遮断されていますがその時だけは声を出すことに専念していました。」と言います。きっと何かを犠牲にしたり、無理をする場面もあったのだと思います。
過去の経験を経てどうすれば無理なく働くことができていたと感じますか?という問いに対し、
「今、経験を含めて考えると症状の説明不足だったと思います。そう考えると、『きちんと症状を把握して、症状をくまなく説明する』『周りの理解を得る、協力を得る』というのがやはり働く上で症状の特性を乗り越えることに必要不可欠だと思います。」と語る彼女。
現在の舞台の仕事では彼女が説明する前に、一度こちらに集中してもらうため他の人に大きな声でアナウンスしてもらい、小さな声でも話しやすい状況を作ってもらっているそうです。
「『自分だけで乗り越えるのではなく、周囲の協力を得ながら乗り越える』ということが、働く上で大切になってくると思います。」
確かに、障がいの件に関わらず、社会生活を営んでいく上で多くのことは自分だけで完結するには限界がありますよね。人と人とのつながりの中で仕事をし、協力を得てより良いものを作り上げていくことが労働なのだとも思います。
そして最後に彼女はこう言いました。
「周りが協力してくれていることに『申し訳ない』ではなく感謝する気持ちに変えることが乗り越える秘訣だと思います。」
「申し訳なさ」はどうしても感じてしまうかもしれませんが、その気持ちを「感謝」に変えて周囲と接することで周囲と良い関係を築くことができ、結果的に働きやすい環境を得ることにつながるのですね。もしこれからアルバイトをしようと思われている方は、「自身の症状をきちんと把握してそれをくまなく説明する」、「周りの理解と協力を得る」この2つを是非覚えていてみてはいかがでしょうか?
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