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水増し問題で活発化する「障害者の公務員採用」の現状と課題

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ライター:Media116編集部

みなさんこんにちは、「障がい者総合研究所」所長の戸田です。早いもので2018年ももうすぐ終わりですね。今年も色々な出来事がありましたが、特に印象的だったのは8月に発覚した「中央省庁の水増し問題」ではないでしょうか。本来、障害者雇用を促進する立場の自治体による不正に怒りや憤りを感じた方も多かったと思います。
10月には、政府から2019年中に障害者を4,000人採用するという発表があり、障害者限定の公務員採用も始まりましたが、その後の状況はどうなったのでしょうか?

高い競争倍率となった「障害者限定国家公務員採用試験」

今年の8月に発覚した中央省庁における障害者雇用の水増し問題を受け、12月3日から障害者限定の国家公務員採用試験の受付けが始まりました(12月14日で応募は締め切り)。

ふたを開けてみると、採用予定人数676人(29省庁)に対し応募総数は8,711人に上りました。競争率は13倍です。

申込者の内訳は、精神障害者が57%、身体障害者が40%、知的障害者が3%でした。主な勤務地域別では、関東甲信越が4,033人(採用予定328人)で最多。近畿1,483人(68人)、九州891人(51人)と続いています(12月21日付共同通信の報道より)。

競争倍率は関東甲信越が約12倍、近畿が約22倍、九州は約17倍となっており、採用予定数が少ない分、地方での競争倍率が高くなっているようです。

行列のイメージ


今回の採用計画の実現可能性は?

現在、政府は2019年中に障害者を4,000人採用するという計画を掲げていますが、本年度の国会公務員の採用予定数1,490人のうち676人しか障害者採用数を割り当てませんでした(全体の45%)。

残りの3,300人強の採用を来年中にどうクリアしていくのか、その点はまだ不透明感が残ります。こうした点を見ても障害者を職場に迎え入れるには未だ準備不足であるという印象はぬぐえません。

また、残りの約3,300人強の採用をこれまでのような臨時職員、非常勤で賄うという流れであるなら、数年後の契約期間が満了したタイミングで同じことを繰り返すことにしかならないわけで、根本的な解決の道筋にはつながらない気もします。賛否両論あるかとは思いますが、ここはしっかりと時間をかけて障害者も働きやすい風土を醸成しながら長期的なタームで雇用率是正計画を立ててほしいところです。

国会議事堂のイメージ


今回の公務員採用試験の特徴をひも解くと・・・

去る11月27日に開催された府省庁合同の説明会(府省等就職希望者向け業務説明会)で配布された資料等から今回の公務員採用試験の特徴について簡単にまとめてみます。

まず応募資格については障害種別不問、かつ年齢も18歳~59歳まで応募資格があるという点です。これまで難関と思われた国家公務員採用の道が思いがけず目の前に現れたことで、多くの障害者には魅力的に映ることと思います。

現在求職中の障害者のみならず、民間からの人材流出の可能性も否定できません。現に「今の会社は契約社員なので、記念受験になったとしてもこの機会を生かしたい」といった現職障害者の声も聞かれます。

各府省の説明資料を見ると、各省庁の業務説明に終始して採用後に担当する業務について具体的な記述が全く見られない省庁もあれば、採用後の職務や職場環境、サポート体制について言及があり、必要な情報がきちんと掲載されている省庁もあるなど、受け入れ準備度合いに大きな差があることが見て取れます。

ただし、募集する職種内容の多くが一般事務、軽作業、庶務に偏っているのは気になるところです。正規職員と臨時職員の職務権限の違いが分からない説明資料もありました。

また、正規職員だと選考試験やその他独自のキャリアパスで課長補佐級、係長級といったキャリアを積む道もある、と明確な道筋を提示し、職務内容に広がりが期待できる、あるいはキャリアを積むことが期待できるといった希望を感じさせてくれる説明が見られた省庁はごくわずかにとどまりました。

障害者採用の枠(受け皿)そのものが増えることは歓迎すべき事柄ではありますが、一方で選考過程の性質から実際に採用される障害者に偏りが見られるという問題も予想されます。

統一筆記試験の実施、その会場も9市に限られるといった試験を受ける上での合理的配慮に関する不備もそうですが、最近も応募資格の中に「身体障害者のみ」、「自力で通勤できること」、といった記載を残した応募内容が非難されたという報道もあったように、いまだ「健康な成人と同様にフルタイムで勤務できる人を採用したい」という中央省庁の潜在的なニーズは図らずも露呈しています。

障害者公務員採用のイメージ



今後、公務員採用試験に臨むにあたって

すでに求職活動中の方で「公務員採用試験を最優先で、民間企業の就活は結果を見てから」といった動きを取られる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに公務員と言えば(正規職員になれたなら、という前提で)昇給や待遇に差はない、年間休日や期末勤勉手当(ボーナス)や退職金が貰える、定年まで勤めあげる確率は民間よりもぐっと上がるなどのイメージもあるでしょうし、今回は何より中央省庁での勤務ということで入庁後の生活などを思い描くといろいろと希望も大きいかもしれません。

ただ、今回の募集職種に関しては、仕事内容が不明確なものも多く、人によっては自分が思い描く理想の職場や働き方に乖離が出る可能性もあります。

就職、転職活動を進めている皆さんに置かれては、自分は何を目的に就職するのか(したいのか)について今一度問いかけ、応募する職種が本当に自分の望んだものかどうかを慎重に確認してほしいと思います。

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障がい者総合研究所 ホームページはこちら → http://www.gp-sri.jp/
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ライター Media116編集部

障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。

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