一つじゃない 第1回
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ライター:風来坊
トランプのジョーカーは「ババ抜き」では「ハズレ」カードですが、「ポーカー」ではどんなカードにもなれる「アタリ」カードです。
同じモノなのに視点が変わると中身も変わる。
そんなモノが世の中には溢れています。
他人と自分の視点が違うとき、
他人の視点が正しいのでしょうか。
それとも自分の視点が正しいのでしょうか。
若しくは両方の視点が間違っているのでしょうか。
世の中の見方は一つじゃない。
障がい者の状況も一つじゃない
私は事故により利き手の薬指と小指が不自由になり、一時は握力が20kg以下でした。
そこでリハビリとして様々なことにチャレンジし、指先を動かすことにしました。
そのリハビリの一つが元々の趣味のプラモデルでした。
初めはパーツを切るだけでも痛みが走り大変でしたが、やがて説明書通りに組み立てることができるようになり、今では簡単な塗装や改造ができるようになりました。
その様子を逐一SNSにあげていたところ、ある言葉が私に向けられました。
「リハビリと称してプラモデルをたくさん作っていて説得力がない」
また、SNSである障がい者に向けられた言葉に
「本当に障害者ならSNSをできるはずがない」
というものもありました。
これらの発言から見えることは
「障がい者は何もできないはず」
という歪んだ障がい者像をあたかも事実のように認識している人がいるということです。
確かに、体調が悪く「何もできない(何もしていないように見えても療養している)」状況にある方もいますが、多くの方が障害を抱えながら生活をしています。
また、現在の日本では「障害があっても働きましょう(就労移行、就労継続支援等)」という考えが主流であり、国も「障がい者は何もできない」とは考えていません。
さて、「障がい者は何もできない」という認識を持っている方に知って頂きたいことがあります。
それは「障害等級区分」です。
福祉に関する知識がない方のために噛み砕いた説明をします。
障害等級区分とは「障害者手帳に記載される当事者の状況を表すもの」で「上の等級ほど障害が重度」と今回は理解してください。
それを踏まえH30年度の「厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部」の調査結果が下記です。
・身体障がい者の等級は・・・
1級 139万2千人(32%)
2級 65万1千人(15%)
3級 73万3千人(17%)
4級 88万4千人(21%)
5級 24万1千人(6%)
6級 16万人(4%)
不詳 22万7千人(5%)
・知的障がい者の等級は・・・
重度 37万3千人(39%)
その他 55万5千人(58%)
不明 3万4千人(4%)
・精神障がい者の等級は・・・
1級 13万7千人(16%)
2級 45万2千人(54%)
3級 20万4千人(24%)
不詳 4万8千人(6%)
となっており、「障がい者は何もできない」という認識を持っている方の障がい者像が「重度」を指しているとしたら、身体障がい「約32%」、知的障がい「約39%」、精神障がい「約16%」が「障がい者は何もできない」という認識を持っている方の想像する障がい者となります。
この数値だけを見ても、まだ「障がい者は何もできない」存在と言い切れるでしょうか。
また、当然ですが「重度」だから「何もできない」わけではなく、多くの方が就業しており、特に身体障がい者の平均月収は高い数値(2018年平均月収21万5千円)を示しています。
(過去記事をご参照ください)
障がい者は体調が悪くても自身で出来ることを見つけながら日々を生きています。
しかし、「何人かは何もできない人がいるはずだ」と言われれば療養のために休んでいる方もいるのでそうかも知れません。
ですが、健常者も障がい者も同様に体調面や経済面など様々な理由で「何もできない(療養している)」状況にあるのは同じであり、それをもって障がい者が「何もできない」と主張するのは間違っているのです。
障害の捉え方も一つじゃない
SNSでは多くの方の善意のお言葉で悲しさに押し潰されそうなときでも元気を頂いています。
しかし、稀に心無い言葉が飛んでくるときがあります。
「障害者というなら傷跡を見せろ」
私の手は不自由ではありますが手術で形は整えてもらいました。
それでも以前の自分の手とは違う形なので今も見ることが辛いのです。
そうした自分で見るのも辛い手を、撮影し、他人に見せることなど出来ません。
ですから「傷跡を見せろ」という言葉に対し、私は「なんて失礼で配慮がない言葉だ」と憤り「SNSで障がい者に向けられる心無い発言」という記事を書くために取材を始めました。
そんな中である義足ユーザーの女性のSNSに「断端を見せて欲しい」という言葉が送られているのを見かけ、私は「この言葉を送った人物は道行く女性に太ももを見せてと平然と言えるのか?」と憤り、女性に「今回の出来事を記事に書いて良いか?」と伺いました。
そうしたところ
「個人を特定されないようにすること」
「あなたの主張が障害者の総意ではないと書くこと」
「障がいを見せたい人もいる。傷跡にタトゥーを施し、お洒落に楽しんでいる人もいる。」
というお言葉を頂きました。
私は義足ユーザーの女性との対話で障がいの捉え方も人それぞれ違うということに改めて気付かされたのでした。
健常者が思う障がい者像も一つじゃない
私が「障がい者と接したことがない」方に最も伝えたいことは
「障がい者は人間」
ということです。
しかし、サイコパスを題材にした映画が公開されたり、障がい者が関与した犯罪の報道がされれば「障がい者は人を傷付ける悪魔」のように形容され、夏のチャリティ番組が放送されたり、障がい者が題材のドラマや映画が公開されると「障がい者はへこたれず努力し続ける天使」のように形容されます。
こういった相反する情報が流れると障がい者と接したことがない方は最早、障がい者が「悪魔」なのか「天使」なのかわからなくなると思います。
しかし、これには明確な一つの答えがありますので惑わされないで頂きたいのです。
それは
「障がい者は人間」※大切なことなのでもう一回言いました。
ということです。
障がい者は悪魔でも、天使でもなく、ただの人間なのです。
確かに、不自由な体で生活を送ることやリハビリなどで健常者より努力が必要な場面があり頑張っています。
しかし、それ以外は普通の人間であり、楽しい気持ちになることも、悲しい気持ちになることも、恋をすることも、諦めることもあります。
当然ですが、愚痴もこぼしますし、他人に嫌味を言いたくなるときもあります。
だって
「障がい者は人間」※大切なことなので三回言いました。
なのです。
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ライター 風来坊
東北の片田舎在住のアラフォー。 児童虐待、いじめ、パワハラ、自傷による措置入院を経験。 田舎では福祉に偏りがあると考え30代から大学で福祉を学ぶ。 数年前には事故で利き手が不自由になり、現在はリハビリを兼ねた趣味(プラモデル、ニードルフェルト、UVレジン)に没頭中。 いつか全ての人が楽しめる駄菓子屋を開きたい。
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