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こころの距離を縮める就労体験プログラムとは?サッカークラブと製薬会社が異色のコラボ

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ライター:遠藤光太

芝生の匂いが広がる大きなスタジアムで、『ともに未来へ Green Heart Project』が開催されました。本イベントでは、「こころの病」を抱える方々が、Jリーグ公式戦が行われる当日にスポーツ教室、就労体験、試合観戦に参加。Jリーグ・東京ヴェルディが主催、ヤンセンファーマ株式会社が協賛し、晴れた冬空の調布市・味の素スタジアムに参加者が集いました。

ともに未来へ Green Heart Project
https://www.janssen.com/japan/green-heart-project

スタジアムのピッチレベルで、ボールを蹴ろう

作業所に通所する方々や、個人での応募者など、世代や性別、障がいや疾病の種類も異なるみなさんが、ひとつのフィールドで身体を動かしました。

写真上:スポーツ教室は味の素スタジアムの中で行われました!

「相手を見つけて、“おはようございます”と挨拶したら1ポイントもらえます!」

東京ヴェルディ普及部の中村コーチが、参加者に呼びかけます。最初は緊張している様子だったみなさんでしたが、朝に配られたお揃いの“Green Heart Projectシャツ”を着て身体を動かしていくうちに、表情がほぐれている様子が見えてきます。ちなみに、取材陣もみなさんと一緒にスポーツ教室に参加しました。

「はい、次は、グー!」
初めて会った方同士でも、徐々に輪が広がっていきます。

写真上:中村コーチが先頭に立って盛り上げます

コーチのみなさんが明るく盛り上げ、ときには歌を歌い、ときにはツッコミを入れ、笑いが起こります。自然と恥ずかしさや照れる気持ちがなくなり、運動の気持ちよさ、仲間と接することの喜びが感じられてきました。

サッカーボールを蹴ってコーンに当てるアクティビティでは、デモンストレーションで成功した参加者に拍手が送られました。スタジアムで拍手が起きると、音が大きく反響し、自然とボルテージが上がっていきます。

「仲間が蹴るときに“がんばってね"と応援するのが大事です。ぜひ仲間に声をかけてみてください」と中村コーチ。応援したり、“エアーハイタッチ”をしたりすることで、徐々に連帯感が出てきます。

スタジアムの大型ビジョンでは、驚くような方々からメッセージが届きました。ヴェルディのレジェンド・ラモス瑠偉さん、日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属でなでしこジャパンの長谷川唯選手、東京ヴェルディの元日本代表・大久保嘉人選手です。大久保選手は「スタジアムでの1日を楽しんでいただけたら嬉しいです」とGreen Heart Project参加者のみなさんに呼びかけました。

写真下:ヤンセンファーマのみなさんも参加!

就労体験で、クラブを「支援する」

お昼休憩でお弁当を食べ、ゆっくりしたあとは、Jリーグ公式戦試合前の「キッズパーク」で、接客業務を体験しました。キッズパークとは、観戦に訪れた子どもたちや保護者の方々に向けて、ボッチャ、サッカーボウリング、ブラインドサッカーなどを提供するエリアです。

Green Heart Project参加者のみなさんは各ブースに分かれて、お客様の誘導、ボール拾いなどプレイ環境の整備、応援などいろいろな役割を担いました。
「こころの病」とともに生きる方々は、ともすれば“支援される側”になりがちですが、ここではクラブの事業運営を“支援する側”となります。自主的にお客様の呼び込みをする方、サッカーボーリングでラベルの面まで正確にピンを並べる方など、多様な関わりが見られました。

スタジアムの客席に移動して、試合観戦

就労体験のあとは、お待ちかねの試合観戦です。緑色のシャツを着て半日活動してきたみなさんは、すっかりヴェルディサポーターに。試合は、昇格争いに鼻息の荒いV・ファーレン長崎に0–2で敗れてしまいましたが、さっきまでボールを蹴っていたピッチレベルでプロ選手たちが躍動する姿を見て、みなさん満足している様子でした。 終了後には、コーチのみなさんがゲートで見送ってくれました。

異色のコラボレーションでスポーツの力を未来へ

後日、ヤンセンファーマ株式会社の岸和田さんに、イベントのねらいを伺いました。
「弊社はジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門で、革新的な薬剤を患者さんにお届けするのが最大のミッションなのですが、『Beyond the Pills』(医薬品を越えて)という考え方も重視しています。SDGsの達成やノーマライゼーションの実現を目指している中で、東京ヴェルディさんとはビジョンが共通していたので、今回協働することができました。

最初は緊張されている方もいたと思うのですが、だんだんとほぐれて笑顔になり、最後は参加者の子どもたちに大声で『がんばれ』と言っている姿を目にして、私たちとしては、来年もプロジェクトを継続したいと考えております」

東京ヴェルディ普及部ディレクターの奈良さん、普及部コーチの中村さんも、後日インタビューに応じてくださり、こう話してくださいました。

「ヴェルディではホームタウンで2015年から障がいのある方々のスポーツ教室を始め、年間で約100回実施しています。今回、世界的な影響力をお持ちのヤンセンファーマさんと組ませていただくことで、我々が日頃取り組んでいる障がい者スポーツを軸に、良い影響力をさらに世界に発信していけたらと思っています」(奈良さん)

「サッカー教室、就労体験、試合観戦のプログラムのなかで、最初のサッカー教室はアイスブレイクの役割を持っています。スポーツをすることによって、最初は友達がいなかったとしても、いつのまにか人との距離が近づいていきます。

個別の障がいに応じてリスクマネジメントには気を配りますが、どの障がいがあっても我々のスタンスは基本的には一緒で、参加者の方々が楽しめることがいちばんです。『ルールがわからないから参加できない』とおっしゃる方もいますが、サッカーでも車椅子の方は手を使ってもいいですし。障がいのある人たちが安心して暮らせる、そしてどこに行ってもスポーツができるという環境を作っていきたいですね」(中村さん)

暮らしのなかでさまざまな困りごとや苦しさに直面していても、ひとたびフィールドに入ってしまえば、ともに楽しむことができることを体感できたイベントとなりました。スポーツを通じて、多様な人々の活動がこれからも広がっていきそうです。

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ライター 遠藤光太

発達障がいの当事者。二次障がいでうつ病になり、休職を経験。現在、フリーライター。さまざまな媒体での記事執筆のほか、テレビ番組等で活動中。

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