統合失調症でも16万文字の本が出版できた
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ライター:生きづらさ解消家だいだい
中学3年生で統合失調症を発症し、意欲や集中力、記憶力を失ったわたしは、「もう何も成し遂げられない」と思って絶望。けれど、今の自分にできることを探し、絵本を読むこと、短い文章を書くことから始めた小さな積み重ねが、少しずつ人生を動かしました。SNSでの発信、そして出版コンペへの挑戦。体調に配慮しながら言葉と向き合った経験を通して、「回復は一気に起こらなくていい」と気づいた軌跡を紹介します。
統合失調症が奪ったもの
わたしは統合失調症を患い、その症状に苦しまされてきました。統合失調症で有名な症状は幻覚や幻聴、妄想といった陽性症状と呼ばれるものですが、わたしの場合はやる気や意欲が低下する「陰性症状」と集中力、記憶力の低下する「認知機能障害」がひどかったです。また、周りの人たちが当たり前にできていることが自分にはできない、その事実に強い劣等感を覚えました。病気になる前はテストの暗記科目はそこそこ得意だったのに発症してから文字を読んでも言葉を聞いてもまったく頭の中に残らないのです。そのため、学校のテストの点数はガタ落ちしてずいぶんと落ち込んだのを覚えています。集中力もないのでそもそも勉強に身が入りません。周りの友人が自分の志望した高校へ入学していくのに自分は学力が低下して偏差値の低い高校に入ることに当時はかなり悔しく思ったものです。今考えればずいぶんと傲慢なことを考えていたなと思います。しかし、今まで当たり前にできていたことができないのはものすごくつらいのです。
絵本から始めた「読書」と「文章を書く」リハビリ
そんな劣等感を抱きながらも自分の低下してしまった能力をどうにか改善できないか、わたしは試行錯誤していきました。その中で最も力を入れて効果的だったのは「読書」と「文章を書く」ことです。わたしは幼い頃から読書が好きでした。小学生の頃は西遊記やロビンソン漂流記などを読み漁っていたので本を読むことにそこまで抵抗がありません。とはいえ、統合失調症の影響で3分と本を読むことができない状態です。普通の単行本などは読めませんでした。そこでわたしは絵本や児童文学といった読みやすい本を読むようにして本を読むことに慣れていきました。最初は「こんな本しか読めないのは恥ずかしい」という気持ちで葛藤も感じたものです。でも、少しずつ継続させてある日気づいたら大学在学中の4年間で600冊本を読むことができました。また、その本一冊につき感想文も書いていたので文章力も身についたように思います。感想文も最初は一言一文書いている程度でしたが、最後はノート2ページぐらい感想を書き、それをSNSに投稿するくらいになりました。読書は自分のペースで行うことができるので他人と比べる必要がなく、自分の好きなときに読めるので集中力の回復に役立ちます。誰かと比べて苦しんでいたわたしにはちょうどいいリハビリでした。また、文章を書くことで今の自分が何を考えているか自己観察することができます。「読書」と「文章を書く」トレーニングは病状の回復に役立ちました。
SNS発信から出版コンペへの挑戦
その後、わたしの人生の恩師である作家の方の本に「これからは情報発信の時代」と書かれているのを見つけ、自分も何か発信してみようと思い立ちました。最初は旧ツイッターで本の感想や日常の出来事をポツポツ投稿。毎日1投稿を継続しているうちに「もう少し長い文章も書いてみたい」と思い、noteというプラットフォームで1000文字程度の記事をほぼ毎日書くようになりました。そうしていつの間にか記事の数も積み上がり、現在は700記事を超えて自分でも驚きです。
そんな風に文章を書くのが楽しく思えるようになった頃、わたしはある大きなチャレンジをしました。「書籍の出版コンペ」に参加することを決めたのです。先述した敬愛する人生の恩師である作家さんが運営している出版塾で3年ほどわたしは出版について学んできました。そうしているうちに「自分でも本を出版できるんじゃないか」と希望を持ちました。わたしは子どもの頃「本を書く」ことを夢見ていたので「今の自分ならいけるんじゃないか」コンペに出場。正直、病気持ちの自分には大きな試練でした。企画書を書いて予選を通過したら、大勢の編集者の前でプレゼンをするのですから。何度も逃げ出そうか悩んだものです。結果は1年目と2年目は惨敗しましたが、3年目は予選を第一位通過して編集者約50名の前でプレゼンして8名の編集者から札が上がりました。そしてその中の一社と契約して本を書くことに!この出版コンペに出るまでかなり準備をしてきたので非常に嬉しかったことを今でも思い出します。
「無理しない」を武器に16万文字を書き切る
出版することが決まり、執筆が始まりました。正直しんどかったです。本を一冊書くには文字数にして15万文字は必要。そんなに文章を書いたことなど人生に一度もありません。さらに体調の波のあるわたしには厳しい状況でした。「最後まで書き切れるか」わたしは非常に不安を覚えたものです。しかし、わたしはそこで「無理しない」「頑張りすぎない」「ダウンしない」ための作戦を立てました。例えば毎日1000文字は最低限書くけど3000文字以上は書かないと頑張りすぎないようにルールを決めました。また、わたしの書く本は100個の項目があるので100マスのシートを用意して一項目書けたらマスを一つずつ埋めていくなどモチベーションの維持に務めるなど工夫を凝らしたのです。これは作家の活動以外にも役立ついいライフハックだと思います。この執筆期間中は自分をいかにコントロールできるかいろいろ実験ができました。この時間はわたしにとって宝物です。そして、結果として半年で16万文字書き切り、仕上げることができました。書き終えた瞬間の達成感は忘れられません。

その後、無事に本を出版することができました。自分の本が書店の棚に並んでいるのを見た時の快感は今思い出しても嬉しくなります。この本を通じて多くの人が「生きづらさ」を解消して毎日を楽しく生きてもらえるに違いないと確信しました。病気を発症して意欲も集中力、記憶力などを失ったわたしでも本を一冊出版することができた、これはすごいことだと我ながら思います。「自分はこんなことができる」と自信にもなりました。
今、将来に希望が見えないあなたへ
今もし、精神疾患の症状に悩んだり、将来に希望が見出せないなら、まず目の前のできることを一つ一つこなしていくのが大切だと思います。どんな些細なこと、わたしのように絵本を読んでその感想をSNSに一言投稿してみるなど自分にできそうなことを見つけてみてください。それを続けてみると今感じている悩みが解消したり、今見えていない希望に気づくことができるでしょう。

もし、「そんな動くことができない」と思っている方がいるならそれは休んだ方がいいサインなので休みましょう。休んでいる間に自分にできることが見つかったりします。生きている限り、何かチャンスが来ます。焦らずに自分らしく生きていきましょう。
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ライター 生きづらさ解消家だいだい
1995年生。中学3年で統合失調症を発症。5年前同じ病を患った姉の自死を経て、今は生きづらさ解消家としてSNSやnoteで活動中。当事者ならではの視点を用いた文章が得意。2025年6月『生きづらさを解消する方法を100通り試してみた。』出版。最近は生きづらさを解消できるボードゲームを開発中。書籍・各種SNSの詳細はこちら https://lit.link/daidainakanaka 公式X:https://x.com/daidai0725da
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