「メンタルが崩れるくらいなら辞めてしまいなさい!」転職を迷っている精神障がいがあるあなたへ
この記事を共有
ライター:ヒラノオツボネ
こんにちは!元キャリアアドバイザーの「ヒラノオツボネ」です。これまで人材紹介会社にて健常者・障がい者両方のサポート経験があり、通算200名以上の方の就職決定に貢献してきました。精神障がいのあるみなさん、現職では安定して勤務できていますか?「障がいをわかってもらえずストレスフルな環境で辛い」「もうメンタルが崩れる寸前・・・」そんなあなたに贈りたいメッセージです。極論になってしまうこともあるかと思いますが、「こんな考えもあるんだな~」くらいに読んでみてくださいね。
安定した生活を送るために大切なのは給与より「メンタルの安定」
私、ヒラノオツボネの個人的な意見ですが、キャリアアドバイザーをしていた時に思ったことは、特に精神障がいのある方は何事も真正面から受けがちな傾向があるのではないかということです。相手の言動ひとつをとっても深く考えてしまうことも多いのではないでしょうか。また、自責の念が強い方が多いな、という印象を受けていました。
「自責」
そのワードが持つ力は恐ろしいものです。メンタルを崩すきっかけになることもあります。
例えば、弊社の人材紹介会社経由で入社された求職者の方に対し、入社後から3か月間はキャリアアドバイザーが連絡を取り状況を伺っているのですが、体調が優れないとおっしゃる方の多くは
「私が〇〇できていないので、ご迷惑をおかけしているかもしれなくて怖いです」
「私がもっと頑張らないといけないと思うと不安で・・・」
というようなお気持ちを話されます。
そして、そういった多くの方が体調が不安定になっていく傾向があるのを見てきました。
上司や周囲との関係がうまくいかない、求められる業務レベルが高すぎるなど、「自責の念」だけではなく、メンタルを崩す原因は様々です。しかし、私は入社された後メンタルが不安定になった多くの方に言えないけど言いたいことがありました。
「メンタルを崩すくらいなら、辞めてしまいなさい!」
私はキャリアアドバイザーという立場でしたので、転職をあっせんする言動はできませんでした。しかし今なら筆をとってはっきりと伝えることができます。
仕事をすることは大事。給与を頂くことも大事。でも何より大切なのは「いかにメンタルを安定させて過ごすことができるか」に尽きると。
健康第一と昔から言いますが、健康とは必ずしも身体のことだけではないと私は思っています。メンタルが安定しなければ、公私ともに上手くいくはずだったことも上手くいかなって機会を逃してしまったり、ガクンとメンタルが崩れてしまうとその後何年も苦しい思いをすることになったり。そうなると次職につくこともままならなくなってしまいます。
転職をすることは逃げでもなければ弱い人間のレッテルを張られることでもありません。自分の体調を守れるのは、自分だけなのです。
Media116当事者ライター「わに」さんの体験談
Media116の当事者ライター「わに」さんの体験談をご紹介します。彼女はてんかんを患っており、精神障害者手帳2級を取得しています。彼女は新卒で入社した会社でうつ病を患うことになったのです。
「新卒で入社した会社では、馬車馬のように朝6時から夜は23時まで猛烈に働いていました。それだけなら耐えられたのですが、直属の上司からパワハラを受けていたんです。いくら成果をあげても認めて貰えず、日々暴言や人格否定の言葉を浴びせられていました。私だけ会議やアポを知らせて貰えず参加できないようにされたりと、嫌がらせも受けていました。」
1年半、その環境に耐えましたがある日彼女のメンタルは突然崩壊してしまったのです。
「朝出社して、気づいたらパソコンをゴミ箱に捨てていました。そして部長の怒声をBGMに27階から走り去ったのです。」
その後彼女は産業医面談を受けさせられ「適応障がい」と診断されましたが、休職中一向に体調が回復しないことから別の心療内科に通院したところ、「うつ病」と診断されました。
「あの時は地獄でした。」彼女は言います。「日々の人格否定から自信や尊厳を失い、私が弱いだけだと信じ込まされていたのです。だから鏡に向かって“大丈夫、私はまだやれる。大丈夫、大丈夫・・・”そう作り笑いを浮かべながら毎日毎日その言葉を唱えていたのです。」
結局、休職中に体調は戻らず退職。焦って次職に入社するもうつが寛解していなかったのでメンタルを乱し解雇に。そしてその後何年も彼女の苦しみは続いたのです。
「なぜメンタルが崩壊する手前で退職しなかったのか、今でも悔やんでいます。」そう語る彼女は現在でも服薬が欠かせない状況にあると言い、悲しそうに作り笑顔を浮かべたのでした。
先でも書いたように、彼女は日々人格否定や嫌がらせをされることにより自信や尊厳を失い、「できない自分が悪い」「もっと自分が頑張らないといけないんだ」という間違った方向性を刷り込まれていたのです。そして、その考えこそがメンタルの崩壊に繋がったのでした。
彼女は「なぜメンタルが崩壊する手前で退職しなかったのか悔やんでいる」と言いましたが、いくら後悔しても後の祭りだったのです。
安易に退職に踏み切る前になぜ辞めたいのかをよく考える
参考として聞いて頂きたいのは、私の元キャリアアドバイザーという視点からの考え方です。オススメするのは、転職するか現職に留まるかを決める際に一度、
① 入社してからどんな場面でストレスを感じて、それは自分次第で変えられることなのか?
② 体調が崩れそうになった時、崩れた時を思い出してどうしてそうなったのか?
この2点を深掘って考えることです。
例えば「業務負荷が大きい」「障がい特性上苦手だと伝えた業務を任された」といった場面で強いストレスを感じたかもしれません。体調を崩した要因をよくよく考えてみると「上司が高圧的だ」「入社前に聞いていたよりも時間的拘束が長く生活リズムが乱れた」などなど、それらを紙に書き出してみると良いでしょう。その中で自分の行動で変えられない要因の方が多ければ、もしかしたらそれは違う環境で頑張るという選択肢になりえるかもしれません。
気持ちに余裕を持って転職活動に集中するために
退職は、次の転職先を決めてから行うのがベストです。もし現在の仕事をもう少しだけ頑張れそうなら、現在の仕事を続けながら転職活動を行うことをお勧めします。昨今は障がいのある方専門の求人サイトや人材紹介会社など色々なサービスがあります。なるべく複数の会社を利用すると良いでしょう。(弊社でも障がい者専門の人材紹介会社「atGP(アットジーピー)」を運営しているのでお時間のある時にのぞいてみてくださいね。)
とはいえ、メンタルが崩壊するまで我慢してしまっては意味がありません。次職が決定する前に退職した方が良いケースもあるでしょう。
その場合、
「よく考えた上で退職を決めたけど、次職が見つかるまでどうやって食いつなごう・・・」
こういった収入面の不安が一番大きいかもしれませんね。退職してから転職活動をすると次職を見つけるまでの離職期間が少なからず発生するものです。その際に「離職期間中に貯金が底をついてしまったらどうしよう」そんな不安を抱えると思います。その懸念がありつつ退職し、不安の中で転職活動をしていくのはハードなことですよね。
その気持ちを和らげてくれる制度こそ「失業保険」です。一定期間条件下の賃金が支給されるので、その間は気持ち的にも少し楽になり、転職活動にも集中できると思います。
簡単に(本当にざっくり)失業保険を貰う流れを説明すると・・・
① まずハローワークに行く前に、会社から送られてくる雇用保険被保険者離職票を用意しましょう。必要な持ち物(https://tenshoku-web.jp/shitugyouhoken-hituyoushorui/)を持参します。(転職サファリより)
② ハローワークでいくつか質問を受けたうえで申し込みをします。
③ 受給資格があると認定されたら失業保険を受給するための説明会に参加します。(ここで雇用保険受給資格者証と失業認定申請書というものを2つ受け取って帰ります。)
④ 失業認定日までにハローワークで求職活動をすることがマストです。
⑤ 「失業状態」を認定された日から失業手当が振り込まれます。
受給資格や受給できる金額、条件は様々ですので、詳しくはこちらのページを見てくださいね。
ハローワークインターネットサービス
また、早期に転職を成功させるにはハローワークで求職活動を行いつつ、障がい者専門の求人サイトや人材紹介会社などを併用することをオススメします。
まとめ
ここまで書いてきましたが、転職するか否かは今後どんな人生を歩んでいくか、人生の分岐点でもあります。なので決断を迷ったり、慎重になるのは当たり前のことです。しかし、一番に考えてほしいのは
「自分が社会人として生きる上で何を大切にすれば、今後の人生をハッピーに暮らせるのか」
ということです。
給与なのか、仕事内容なのか、業界なのか、はたまた尊敬する人の元で働くことなのか・・・。そして私はこれまでサポートした方のお話を聞いて、「メンタルの安定」が重要なカギになることが多いと思っています。どうかこの記事を読んで少しでも何かを考えて頂けたのなら幸いです。みなさんどうか慎重に、そして自分の中で最良の「英断」を下してくださいね。
■ゼネラルパートナーズが運営する障がい者専門の人材紹介「atGP(アットジーピー)」はこちらから
この記事を共有
ライター ヒラノオツボネ
これまで一貫して人材紹介会社にて健常者・障がい者の転職サポートに携わってきた人材一筋のオツボネ。ゼネラルパートナーズではキャリアアドバイザーとして身体障がいのある方のサポートを経験した後、精神障がいのある方のサポートに従事。現在はMedia116のライターとして仕事系記事を執筆中。
- ブログ
- 公式HP
- https://www.atgp.jp/
おすすめ記事
-
2024年11月26日
学生起業家による障がい者アートを発信 ~株式会社SigPArt 古川友稀さん~
-
2024年11月12日
障がいママの子育て
-
2024年10月11日
年越しスリランカ旅byチョイノリ
-
2024年8月30日
一つじゃない 第22回
-
2024年8月9日
年越しスリランカ旅byチョイノリ
-
2024年7月24日
一つじゃない 第21回
-
2024年7月19日
脳性まひのある私が、重度訪問介護の利用で一人暮らしをして、はじめてコンビニに行った話
-
2024年7月4日
一つじゃない 第20回
-
2024年6月25日
インドの食文化と日常生活
-
2024年6月4日
山梨県から届いた嬉しいニュース!「難病者の働く」が世の働き方を変える
-
2024年5月10日
インド旅の1日紹介
-
2024年3月22日
「見えない障害」を伝えるために、当事者の声を冊子にする言語聴覚士・多田紀子さん
-
2024年2月16日
趣味も美容も仕事も「やりたいことを犠牲にしない」。当事者に聞いたセルフ透析のメリットとは
-
2024年2月9日
フィンランド大使館主催の映画『ブラインドマン』上映記念レセプションに参加しました