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【イベントレポート】第1回 超福祉 障害✕震災ワークショップ

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ライター:Media116編集部

2019年8月7日、渋谷区にある美竹の丘・しぶやにて、第1回「超福祉 障害✕震災ワークショップ」が開催されました。このイベントは東京都の「仮設住宅不足への対応準備事業」を実施する専修大学が「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展(以下、超福祉展)」を主催するNPO法人ピープルデザイン研究所と、共同で実施。2回のワークショップを経て、2020年、東京都に政策提言することを目指して、第1回目のワークショップでは障がい者が避難生活で直面するであろう課題を明確にしていきます。
いつどこで起こってもおかしくない震災、誰にとっても他人事ではないテーマかと思います。読者の皆様の”もしも”の備えのヒントにもなるよう、ワークショップの様子をレポートしていきます!

「超福祉 障害✕震災ワークショップ」開催のきっかけ

午後2時、暑い中約20名の参加者が会場に集まりました。まず初めにマイクをとったのは、NPO法人ピープルデザイン研究所代表・須藤シンジさん。ワークショップ開催のきっかけについてお話しくださいました。超福祉展の開催をはじめ、障がい者をはじめとするマイノリティや福祉そのものに対する「心のバリア」を取り除こうと国内外各地を周り活動されている須藤さん。

「防災に関して関心をもったきっかけは東日本大震災。妻の実家が福島にあり、被災しました。その中で、当時知識やマニュアルが合ったにもかかわらず、約7万人もの災害弱者の支援がとどめおかれたということを知りました。」

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そんな問題意識をもった須藤さんが数年前に出会ったのが、専修大学の佐藤慶一教授です。佐藤教授は東京都が2018年より実施する「大学研究者による事業提案制度」に採用され、2019年から「首都直下地震時の仮設住宅不足への対応準備」という事業を開始しました。

「発災後、長い場合は数年にわたる避難生活・仮設住宅での暮らしは、震災後に話し始めていては間に合わない。混乱する前に、生活再建の様々なフェーズや世帯属性・避難の時期や場所別に、複数のシナリオを想定し対策する必要があります。」

そう語る佐藤先生。須藤さんが今回の場と超福祉展シンポジウムの場を提供してワークショップを開催し、佐藤先生がその成果を取りまとめることで、実際に東京都に政策提言することを目指します。

発災時の生活で「障がいによる支障がある」と考える当事者は多数

今回のワークショップ運営に協力するのは、株式会社ゼネラルパートナーズとワークショップデザイナーのタキザワケイタさん。ゼネラルパートナーズではタキザワケイタさん協力のもと、2019年3月に「障がい者と震災を考えるワークショップ」を社内で開催しています。

2018年3月、ゼネラルパートナーズの障がい者総合研究所は、障がい当事者向けに「震災対策および防災に関する調査」を行いました。こちらの調査結果では、回答者の過半数が、避難時・避難所での生活において過半数が「障がいによる支障がある」と回答しましたが、一方で障がいに関係する防災対策を行っている人は約3割にとどまっています。

障がいのある方の就職・転職サービスを手掛け、日々障がい当事者が事業所に訪れるなかで、障がいに関係する防災対策は何が必要なのか。まずは防災意識をもつことを最初のゴールとし、3月のワークショップでは障がい当事者のゲストと社員が模擬避難訓練や防災に関するディスカッションを実施しました。

YouTube動画はこちらから

このワークショップでは障がいの有無に関わらずそれぞれができることを行い、お互いに助け合えるよう、平時からコミュニケーションをとっておくことが重要だ、という気付きがありました。今回の「超福祉 障害✕震災ワークショップ」でも参加者それぞれの視点を活かした成果が得られるよう、「&HAND」の社会実装などを手掛けるタキザワケイタさんがワークショップを進行していきます。

▼&HANDに関する記事はこちら
「【超福祉展】人のやさしさをLINEでつなぐ「&HAND」 ~みんなホントは、困っている人の役に立ちたい~」
「視覚障がいのある方が「ふらっ」と外出できるようになる!?「VIBLO by &HAND」を体験してきた!」

発災後、避難所や自宅で過ごす際の困りごととは?

ワークショップはワールドカフェ形式で進行し、震災時の各フェーズで障がいごとにどのような課題が想定されるか、障がい当事者と参加者が一緒に考えていきます。今回のゲストは視覚障がい者の高澤さん、聴覚障がい者の曲尾さん、車椅子ユーザーの小野さん、清水さん、そして精神障がい者の山田さんと佐藤さんです。
まず想定するフェーズは「発災後の避難所生活」。読者の皆さんは避難所生活と聞いてどのような光景を想像するでしょうか。学校などにブルーシートを敷き毛布にくるまって・・・・・・決して快適なものではない、でも “避難所だから仕方ない” と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
実は東日本大震災では、震災関連死のうち約3割が、避難所等における肉体・精神的疲労により亡くなっています。その数なんと1,263人、決して少ない数ではないことが分かります。そのため、避難生活を一次的に我慢するものと捉えず、要介護者も含め肉体・精神的疲労を減らして過ごせるようにしていくことが、命に関わる大事な対策なのです。

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そんな佐藤先生のレクチャーを受けたディスカッションでは、視覚障がい者と車椅子ユーザーの方からは「(盲導犬も含め)トイレが使いづらい」という課題が挙がりました。車椅子ユーザーでも使える洋式トイレや、盲導犬用のトイレを設置してほしいという意見のほか、視覚障がい者は仮設トイレの使い方をイメージしづらいため、平常時から使い方を知れると良いという意見もありました。
また聴覚障がいや精神障がいの方は外見から障がいが分かりづらく、「配慮が必要と気付いてもらえない」ことが大きな課題に。特に精神障がいのある方で自身のストレスや体調不良に気付きにくい方は「大丈夫?」という声かけに「大丈夫」と応じてしまい体調が悪化するケースがあるとの指摘がありました。また感覚過敏の症状がある方は、避難所内の音に気持ち悪くなってしまうものの、楽しそうに音楽を聞いている様子に「やめてほしい」と言えないことがつらかった、という事例も語られました。

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次に想定したフェーズは「避難所に入れなかった際の在宅避難」です。様々な事情で避難所で過ごせず、自宅に被害があっても留まらざるを得ない状況も予想されます。その場合の課題は、どの障害にも共通して「支援者とつながれず必要な情報や物資が得られない」ことが挙げられました。
支援者と言っても、非常時に信頼できる人なのかどうか、判断がとっさにできるわけではありません。普段からコミュニケーションをとることで、視覚障がい者が声で「信頼できる人だ」と分かったり、防災無線が聞こえない聴覚障がい者に気付けたりするのではないか、という意見が出されました。
また視覚障がい者や車椅子ユーザーは自宅の被災状況の全貌を把握することが難しく、被災時には近隣の方に確認してもらったという事例が挙げられました。一方で、精神障がいのある方は普段障がいをカミングアウトしていないケースもあり、災害時に支援を求めることがカミングアウトになってしまう葛藤もあるようです。

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数年間続く可能性もある仮設住宅生活、想定される課題は

災害によって自宅に住み続けられなくなった際に、国や地方自治体の負担で済むことが出来る仮設住宅。佐藤先生によると、東日本大震災では「壁が薄いため音が抜けやすく、眠りにくい」という声や、「2人暮らしなのに4畳半のスペースしかなく狭い」といった声が聞かれたといいます。熊本地震の際には東日本大震災の教訓を活かしたスロープ付きの仮設住宅が提供されるなど、バリアフリーに対応した改良も進んでいますが、「視覚障がい者は適度に音が聞こえたり、段差があったりしないと周囲の状況が分からずかえって危険」という声が。どの障がいにとっても最低限必要なラインを整え、障がいによって必要な設備をカスタマイズできることが理想かもしれない、という仮説が見えてきます。

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加えて仮設住宅で困難が生じやすいのは、近隣住民の方とのコミュニティ形成です。聴覚障がい者は言葉の扱いに齟齬が生じたり、理解できていなくても分かったふりをしてしまう時があり、周りの健聴者が分かりやすい言葉を選ぶのもなかなか難しいという課題が挙げられました。また精神障がい者も周囲の理解がないことから「怖い、いなくなってほしい」と言われてしまったケースが過去にあるそう。仮設住宅は一度住むところを決めたら容易に引っ越すことができないため、コミュニティ内のコミュニケーションがうまくいかないことは、長きにわたりストレスになってしまう可能性が感じられました。

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最後に話を進めたのは、仮設住宅に入居できなかった場合についてです。仮設住宅には発災後に建てられる建設型仮設住宅のほかに、民間賃貸住宅を活用した借上型など「みなし仮設住宅」と呼ばれるものがあります。しかし震災の影響がどこまで及ぶか予想できない中、みなし仮設住宅も含めた供給が充分に行われるかどうか不安が残ります。
このように仮設住宅に入居できない場合の課題として「支援者とつながることができるか」という点がどの障がいにも共通して挙げられました。行政の制度への知識と障がい理解、どちらの要素も備えた支援者にSOSを出せれば、住み慣れた土地を離れざるを得なくても安心できるかもしれません。また普段から障がいによる困りごとを聞いてくれる人が地域にいなかったり、震災によって障がい者になりこれまでのつながりがなかったりする場合も考えられます。様々なケースに応じた支援の仕組みを整えるほか、地域で仮設住宅以外にも活用できる建物はないか洗い出すことも有効そうだという声があがりました。

防災は誰にとっても自分ごと。困りごとや要望についての対話が備えになる

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約3時間にわたり白熱したディスカッション。フェーズ・障がい別に様々な課題が出され、参加者の皆様はワークショップが終わっても話し込む様子が見られました。
誰にとっても起こりうる震災、想定以外のことが発生してもおかしくない非常時に、平時にできないことはできません。災害弱者が取り残されないためのヒントがたくさん見つかったワークショップは大きな前進の一歩と言えるでしょう。
その中でも、どのフェーズ・障がいにも共通して重要なのは「普段から障がいを理解し助け合えるネットワーク」の有無ではないでしょうか。それぞれできること・できないことが異なる人が、それぞれの立場から困りごとや要望を伝え、対話する。今回のワークショップような過程を踏むことで、まさに非常時のライフラインとなる、人と人とのつながりがつくられていくと感じました。

■関連リンク
自分が災害弱者に!?第2回 超福祉 障害✕震災ワークショップに参加してきた!

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