人生初の感覚、全盲でもメドレーが歌える!視覚障害者向け点字カラオケを体験してきた。
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ライター:カノスエトク
こんにちは!弱視の自称ジャーナリスト・ライター見習い、カノスエです。突然ですが、みなさんは「視覚障がいのある友達と遊びに行く場所」というと、どこを思い浮かべますか?
僕がパッと浮かぶのは、ズバリ、「カラオケ」です!
周りに音楽好きが多く、店内では移動もいらないからありがたいんですよね。しかし!カラオケも、点字が必要な方にとっては歌詞を事前に用意しなければならず面倒だったり、メドレーや、即興で歌うことが出来なかったりと、色々と悩みがあったりします。。。
今回はそんな視覚に障害がある身にはありがたい、歌詞を点字ディスプレイで表示してくれる機械「点字カラオケシステム」があるカラオケ館 高田馬場2号店に、点字使用者の先輩と2人で潜入レポートしてきました!
目的のお店は、高田馬場駅徒歩3分ほどのところにありました。(JR高田馬場駅からの詳しい行き方は末尾に記載しています)
早速入店し、予約の旨を告げると、店員さんが慣れた対応で肩を貸してくれました。
部屋に到着すると、機械の操作方法からトイレの案内まで、1つ1つ丁寧に説明してくれます。机の上には点字メニューが置かれ、その行き届いた配慮に驚くばかり。
店員さんが去り、まずはじっくりテーブルを観察。
「おー!これが、噂の点字ディスプレイ!!」、。
その機械はノートパソコンにつながれ、机の上に設置されていました。何でもこの機械、画面の歌詞を点字に自動翻訳し、点字ディスプレイという専用の装置で歌の進行に合わせて歌詞を点字で表示してくれる、という優れもの。PCでは弱視の人のために、歌詞を白黒反転で大きく表示してくれます。そして、両手は点字を読むのに使うためスタンドマイクが設置してあります。
この点字ディスプレイ、いったいどのような動きをするのか、、、さっそく選曲。先輩は、スマホを使いネットのページで曲を検索。記載された曲番号をリモコンで入力していました。ナルホド、これならばデンモクが見えなくても曲の予約ができます。(もちろん、デンモクも置いてあります)
さて、いよいよ曲がスタート!
―――
♪イントロが開始。まだ点字ディスプレイは何も反応しません。
徐々にメロディーが進み・・・
画面に歌詞が。すると歌詞に合わせて、ちゃんとディスプレイに点字が浮き上がってきました!!。
先輩は、両手でディスプレイを触り、テーブルに置かれたスタンドマイクに向かって歌い始めました。テンポよく流れる音楽、そして歌詞に同期しながら小刻みに浮き沈みする点字、その光景自体、圧巻です。(スピーディに動く点字を読む先輩もすごいですが・・・)
ノートPCには歌詞の拡大文字が映るため、私のような弱視にとってもありがたい。
―――
ここで、先輩に点字ディスプレイの感想を聞いてみました。
カノスエ「使い心地はどうです?」
先輩「問題ないよ」
カノスエ「使いにくい部分は?」
先輩「歌い始めはギリギリにならないと点字が出てこないから少し焦るけど、慣れれば問題ないかな」
カノスエ「なるほど~」
先輩「それと、カナ間違いが少しあるね。例えば、福山雅治を(ふくやまみやびち)と読んたり 笑。でも平均すると1曲に1~2個程度の間違いだから、そんなに気にならないかな」
カノスエ「逆に、良いところはあります?」
先輩「うん。今までは歌詞を暗記している歌か事前に歌詞カードを用意している歌しか歌えなかったが、その場で思いついた曲を入れられたり、(歌詞カードを用意しにくい)新曲を歌えたり、、、歌詞カードを持っていない点字使用者の仲間とも気軽に遊びに行けそうだから、便利だよね」。
なるほど、かなり利点もあるようです。
―――
さて、次は「メドレー」に挑戦!
「メドレー」・・・小さい頃から点字を使っている先輩にとっては、人生初めての体験です。。
カノスエ「どうっすか?」
先輩「曲の切り替わりに、次の曲の情報がちゃんと出るね♪」
カノスエ「ちゃんと出るんですね」
先輩「うん。なんか・・・次何の曲だろうって、ワクワクするね!!健常者って、こんな面白さを味わってるんだ!」
先輩は、そう笑顔で語ってくれました。
―――
その後、メドレーを一緒に歌い、テンションさらにヒートアップ!
点字ディスプレイを使えば、メドレーを一緒に歌えます。
「俺、この頃○○してたよ!」とか、「あ!こういう系統好きなんだ!」とか、相手の好みや知らない一面が垣間見られ、会話がいつもより盛り上がる!これぞメドレーの醍醐味!。
最後に2人でシメの曲を熱唱し、時間が終了~。興奮冷めやらぬまま退店すると、「また来たい!」と、先輩から嬉しいお言葉。
いつもお世話になっている先輩に、『人生初』というプレゼントができたのだなと、僕は心の中でガッツポーズをしつつ、電車に乗り込んだのでした。
視覚障害の方へ~JR高田馬場駅からカラオケ館高田馬場2号店への行き方~
1)JR線・西武線・地下鉄東西線の高田馬場駅下車
2)早稲田口改札
3)点字ブロック(以下、点ブロ)に沿って駅外へ。大通りに出る(各線から外への出方は末尾参照)
4)90度右に曲がり、点ブロに沿って直進(JRは40歩ほど、西武・東西線は10歩ほど)
5)90度左にある信号をわたり切る(駅を背にする形)
6)90度右に曲がり、60歩ほど直進(大通りに沿う形)
7)大きな横断歩道に突き当たる。それを直進で渡りきり、さらに100歩ほど直進
8)小さい横断歩道に突き当たる。それを直進で渡りきり、さらに40歩ほど直進(途中、パチンコ店が左手にあり)
9)左手側に目的地(基本的に店先に音楽が流れている)があります。
【カラオケ館高田馬場2号店:ホームページ】
http://karaokekan.jp/shop/tokyo_area3/03030016.html
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ライター カノスエトク
カノスエ トク(仮称) 1989年生まれ。弱視の自称ジャーナリスト・ライター。 現在、TVの報道番組制作会社に勤務。 3歳の頃に怪我をし、視力左0.06、右0の視覚障がい者(弱視)となる。中学生の時にみていた「週刊こどもニュース」で報道の面白さに目覚め、盲学校の仲間たちとの関わりを通し、障がい者に対する偏見を自分自身すらも抱いていたことに気づき、衝撃を受け、価値観がガラリと変わる。これら の体験から、「普段耳にしない人たちの生の声を伝え、世間に何気なくある価値観を揺さぶる記事を作りたい」と、ジャーナリスト・ライターを志し、現在修行中の日々。 (出演経歴) 2013年 NHKラジオ「聞いて、聞かせて」など
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