一つじゃない シン解釈!障害者差別解消法
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ライター:風来坊
令和6年8月、とある方がトラブルに巻き込まれました。それは「障害者差別解消法」に抵触する違法なものでしたので、その方は法廷で反論することにしました。
このお話は、たった一人で企業と戦ったある当事者の実体験です。障害者差別解消法が救うのは、障がい者か?企業か?裁判の先に答えがある…かも。
もしあなたが、お店で困ったことを相談して「出入り禁止」と言われたら?

4コマ漫画その1

4コマ漫画その2

想像してみてください。あなたがいつも行くお店で、ちょっとした困りごとを相談しただけで「もう来ないでください」と言われたら。そんなことが実際に起きて、裁判になった事件があります。
令和7年12月12日、M県簡易裁判所で注目すべき判決が出ました。
障害者差別解消法違反を理由に、店舗側の責任が認められたのです。
ことの発端は、カードゲーム大会だった
令和6年8月、発達障害があるAさんはトレーディングカードゲームの公認ショップ大会に参加しました。ところがこの大会、公式イベントのはずなのにローカルルールで運営されていて、Aさんは困惑します。
Aさんは店舗に相談しました。
「私には発達障害の特性があって、勝手に物を触られたりすると動けなくなってしまうんです。ルールを守った大会運営をしてもらえませんか?」
これは障害者差別解消法でいう「合理的配慮を求める」という、法律で認められた正当な権利です。
ところが店舗の答えはというと、、、
「うちのルールが合わないなら、他の店に行くしかない」
そしてAさんに「出入り禁止」を宣言したのです。
行政が動いた…と思ったら
Aさんは内閣府の相談窓口「つなぐ窓口」に相談しました。行政が店舗に聞き取り調査を行うと、店舗は態度を変えます。
「来ないでくれとは言っていない。景品を預かっているのでまた来てください」
一件落着…のはずでした。
ところが数日後、店舗は弁護士を雇い、再びAさんに出入り禁止を宣言します。
今度の理由は「しつこく長時間クレームの電話を入れた」というものでした。
Aさん「でも、1回しか電話していないし、10分程度ですよ?」
店舗弁護士「証拠を持っている。お前が悪い。この件を誰にも相談するな」
こうして、事態は法廷へと持ち込まれることになりました。
法廷で明らかになった「3つの相違」
裁判で店舗側の主張とAさんの主張には大きな相違がありました。
相違その1:「何度も長時間クレーム電話があった」
→Aさんが通話履歴を提示。電話は1回、10分程度でした。
相違その2:「人員増加という過重な負担を求められた」
→Aさんが通話音声を開示。求めたのは「ルールを守った運営」だけでした。
相違その3:「少人数経営だから対話は負担」
→実は従業員260名、M県内でも上位の企業規模でした。
そして店舗側は最後にこう主張します。
「建設的対話は義務じゃない。障害者差別解消法に違反しても問題ない」
ここで重要なキーワードが出てきました。「建設的対話」です。
「建設的対話」って何?これが今回の核心
障害者差別解消法では、障がい者から合理的配慮を求められた企業は、「どうしたら利用できるか」を一緒に考える"建設的対話"をすることが求められています。
そして対話をした結果、本当に調整できない場合だけ、企業は配慮を拒否できるのです。
つまり、いきなり門前払いはダメ。まず話し合いましょう、ということ。
でも店舗側は「建設的対話は義務じゃない」と主張しました。
これに対する裁判官の判断は明確でした。
「建設的対話を軽々に困難と考えることなく、障がい者と事業者双方の間で、十分にこれを試みられるべきものである」
店舗の行為は「不当な差別的取り扱い」「合理的配慮の提供義務違反」と認定されました。
この判決、実はみんなを救う
この判決は、障がい者に「困ったことがあったら、安心してお店の人に相談して良い」という前例を作りました。
でも、救われるのは障がい者だけではありません。
実は企業側にとっても、これは朗報なんです。
なぜなら、障害者差別解消法には「過重な負担」など曖昧な表現が多く、企業は「どこまでやればいいの?」と困っていたからです。様々な障害があるため一律に決められず、弾力性を持たせた結果の曖昧さでした。
今回の判決で、企業がすべきことが明確になりました。
①建設的対話の機会を確保する
②その場で判断できない場合は、日時や場所を変えて対話する
③障害特性の理解が難しい時は相談機関にアドバイスをもらう
これらを試みても調整できない場合は、合理的配慮を拒否して良いのです。
つまり「ちゃんと話し合えば、断っても違法じゃない」ということ。
企業にとっても、対応の道筋が見えたわけです。
あなたにも関係ある話
この判決は、障がい者と企業だけの話ではありません。
「困っている人がいたら、まず話を聞こう」
「一緒に解決策を考えよう」
「それでもダメなら、ちゃんと説明しよう」
これって、すべての人間関係の基本ですよね。
障害者差別解消法は、この当たり前のことを、法律として明文化したものなのです。
そして今回の判決は、その運用方法に具体的な道筋をつけました。
障がいのある人も、企業も、そして私たち一人一人も。みんなが暮らしやすい社会をつくるための、小さいけれど確かな一歩です。
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ライター 風来坊
東北の片田舎在住のアラフォー。 児童虐待、いじめ、パワハラ、自傷による措置入院を経験。 田舎では福祉に偏りがあると考え30代から大学で福祉を学ぶ。 数年前には事故で利き手が不自由になり、現在はリハビリを兼ねた趣味(プラモデル、ニードルフェルト、UVレジン)に没頭中。 いつか全ての人が楽しめる駄菓子屋を開きたい。
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