2018年4月1日より2.2%に引き上げられた「法定雇用率」、実際に計算してみると…なぜか2.421%に!実際どのように計算されているの?

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ライター:Media116編集部

みなさんこんにちは。Media116編集部です。平成30年(2018年)4月1日より、いよいよ「障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法)」が改正され「法定雇用率」が2.3%となりました。「経過措置」(※後に詳しくご説明します!)として平成30年4月1日から当分の間2.2%に設定され、平成33年3月末までに2.3%に引き上げられることが決定しています。
法定雇用率とは、簡単にいうと「事業主(つまり民間企業や国・自治体)に対し、全従業員に占める障がい者の割合が一定以上になるよう義務付けられている数値」のことで、この数値の定期的な引き上げに伴い、国内の障害者雇用数も右肩上がりに推移してきました。

「法定雇用率なんて知ってるよ!なにを今さら・・・」

というアナタ。では、この法定雇用率がなぜ「2.3%」と設定されたのか、ご存知でしょうか?

「そりゃ、法定雇用率の算定式というのがあって、その計算結果でしょ」

とおっしゃるかもしれませんね。でもその算定式に正確な数字を入れてよくよく計算していったとき、本当に2.2%になるかというと、実は・・・その値は「2.421%」!

障がい者の雇用拡大につながる重要な要素であり、働く障がい者のみなさんにとって少なからず、いや間接的に大きな影響を及ぼす「法定雇用率」。国が具体的にどのように計算し、決定しているのか、一度しっかりと理解しておいても損はないかと思います。

知ってるつもりの「法定雇用率」。その数値が意味するものは?

障がい者の雇用拡大を目的に、全従業員数に占める障がい者の割合が一定以上になるよう義務付けられている数値、それが「法定雇用率」。そして、この法定雇用率を決定するための算定式がコチラ。

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図1「法定雇用率の算定式」(その1)
「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要(厚生労働省)」より引用
 
見たことがある方もいるのでは?・・・漢字ばかりで難しそうな式ですが、この数式が何を意味するのか、イメージしやすいよう誤解を恐れずざっくりとお伝えすると、

日本国内において障がいの有無に関係なく「働くことが出来る人」の中に「障がい者」がどれ位の割合いるか

を出した値。イメージで表すと、こんな感じです。

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図2「法定雇用率の算定式」のイメージ

「企業や国、地方自治体は、各々この割合以上は障がい者を雇用するように!」と法律で決めることで、障がい者の雇用拡大を図っているのです。

そして、今年4月からの法改正のポイントもこの図1に隠れています。算定式の分子の部分に「追加」と記載されているところがあるのが、お分かりですか?

「働くことが出来る障がい者の人数」の中に「精神障害者」も含まれるようになったのです。

ちなみに法改正前の算定式がコチラ。「精神障者」が含まれていませんね。

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図3 2018年3月31日までの「法定雇用率の算定式」

どういう事かというと、今までは「法定雇用率」の算定結果に基づいて雇わなければならないと決められていた障がい分類は身体障がいと知的障がいのみでした。この時点において、「精神障害者」は雇用義務の対象ではないが、雇用している障がい者の数としてカウントすることができる、という位置づけだったんですね。

2018年4月からの法改正により、この法定雇用率の算定対象として、身体障がい者と知的障がい者に加え精神障がい者も含めることとなりました(障害者手帳を持っている方のみ)。その結果、法定雇用率の算定式の分子の合計値が大きくなることで、法定雇用率の算定結果もUPすることになりました。

さらに法定雇用率の算定式を詳しく紐解くと・・・

では「法定雇用率の算定式」について、もう少し具体的な内容を説明していきましょう。
図1を改めてみてみましょう。

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図1「法定雇用率の算定式」(その1)
引用:「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要(厚生労働省)」より

前章において、法定雇用率は日本国内において障がいの有無に関係なく「働くことが出来る人」の中に「障がい者」がどれ位の割合いるかを計算している、と説明しました。「働くことが出来る人」というのは

「現在働いている人」+「働きたいけど仕事に就いていない人」

の合計です。図1の計算式のどの値に該当するか、というと

「現在働いている人」=「常用労働者」
「働きたいけど仕事に就いていない人」=「失業者」

の部分が該当します。計算式のイメージとしては、こんな感じでしょうか。

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図4「法定雇用率の算定式」のイメージ(その2)

ここまでなら比較的分かりやすいのですが、図1にあって図4のイメージ図にない要素があります。それは図1の分母にある「除外率相当労働者数」です。

除外率というのは、「障害者が働くのが難しい業種(例えば船員等による船舶運航等の業務など)については、企業が雇わなければならない障害者の数を軽減して良い」という制度のことで、軽減する割合は業種ごとに定められています。

例えば、
・「林業(狩猟業を除く。)」なら35%
・「船員等による船舶運航等の事業」なら80%
といった具合。
参考)障害者雇用状況報告における除外率について

「障害者が働くのが難しい業種」に該当する企業は、自社で雇用すべき障がい者の人数を算出するときに、「除外率」を加味して計算します。具体的な計算例で説明すると、

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図5 「除外率」の計算例

お分かりになりますでしょうか?企業は、自社の全労働者数に「法定雇用率」をかけた人数分、障がい者の雇用義務が発生するわけですが、「障害者が働くのが難しい業種」の企業に限っては、この全労働者数の数を「除外率」の分だけマイナスしてよい、つまり「雇用すべき障がい者の人数が減る」ということです。

では、図1の「除外率相当労働者数」が何か、というと「法定雇用率」の分母を計算する際に、「常用労働者数(働いている人)」から「障害者が働くのが難しい全業種で働いている人」の人数分を考慮して引いているのです。

※実はこの「除外率制度」、ノーマライゼーションの観点から平成14年の法改正により平成16年4月に廃止となっているのです。が、急に廃止してしまうと混乱が起きるという判断の元、現在は経過措置として廃止の方向で段階的に除外率を引き下げている途中、というのが実情です。

「やっと算定式の説明が終わった・・・」とホッとされた方、残念ながら実際の算定式は、こんな感じでもっと複雑・・・!

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図6 法定雇用率の算定式(その2)
第73回労働政策審議会障害者雇用分科会 資料より引用

「ここへ来てまた漢字の羅列でワケわからん!!」

とお怒りの方、もう少しだけお付き合いください。説明しますので・・・。

計算式の考え方自体は、今まで説明してきた通りです。ただ、実際の算定式では「常用雇用労働者」「常用雇用短時間労働者」という考え方が加味されています。

「常用労働者」とは、正社員・契約社員・パート社員等の雇用形態には関係なく、
 ・雇用期間の定めなく雇用されている労働者
 ・1年以上継続して雇用される者(見込みも含む)で1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者
をいいます。(ちなみに短期限定や20時間未満/週の労働者は、常用労働者には含まれません。)

そして、この計算式において、
「常用雇用労働者」・・・週30時間以上労働する人
「常用雇用短時間労働者」・・・週20時間以上30時間未満の労働する人
を指しています。

図6の計算式は、図1の法定雇用率の算定式に対し、上記の「常用雇用労働者」「常用雇用短時間労働者」の要素を加味したものです。イメージ図で表すと下記の感じです。

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算定式で法定雇用率を計算すると・・・その値は「2.421%」

では、上述の式に該当する数値を入れて計算するとどうなるか・・・実はこの算定式に数値を入れて計算した結果も、厚生労働省のサイト上で公開されています。

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図6「第73回労働政策審議会障害者雇用分科会資料 新たな障害者雇用率の設定について」より引用
※図6の「0.056」は除外率の数字を指しています。
「0.056」という数値は、それぞれ除外率の違う全業種の除外率を考慮した上で、合計した全労働者の数を、除外率を考慮せず合計した全労働者の数で割ったものです。

機械的に計算した結果は「2.421%」

と記載されています。でも、実際に定められた法定雇用率は2.3%(平成30年4月1日から当分の間2.2%)・・・これは一体どういう事なのでしょうか?

法定雇用率が2.3%に設定された理由は?

まず、法定雇用率の引き上げとなった大きな要因として「精神障害者が法定雇用率の算定式に加わったこと」があることは既に説明した通りですが、この事自体は平成25年の法改正で決まりました。そして、
「平成30年4月から5年間は激変緩和措置ということで、障害者の雇用の状況その他の事情を勘案して定める」ということも定められました。(障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律 | 平成 25 年法律第 46 号)

「激変緩和措置」聞きなれない言葉ですよね。でも簡単に言うと、急激に法定雇用率をUPさせてしまうと事業主(雇用する側)が大慌て、採用がパニックになってしまったりそれによって色々と問題が発生してしまったり…なんてことにならないよう、文字通り「急激に法定雇用率をUPさせないようにしよう」という国の措置なのです。

要は「平成30年4月から法定雇用率の算定式に精神障害者が加わるけど、その後の5年間は算定式の計算結果をそのまま適用するのではなく、実際の雇用状況や雇用を促進・安定させる施策などの状況を考慮しながら、政府が法定雇用率を設定する」ということです。本来の法定雇用率に対して企業や国、自治体がスムーズに採用を継続していくための措置というわけです。

法定雇用率2.3%(平成30年4月1日から当分の間、経過措置として2.2%)の数値自体は、平成29年(2017年)5月30日に実施された「第73回労働政策審議会障害者雇用分科会」という場で決まっており、WEB上にも議事録が公開されています。

参考) 厚生労働省ホームページ 2017年5月30日 第73回労働政策審議会障害者雇用分科会 議事録


議事録の内容をざっくり要約すると、

1) 法定雇用率の算定式に基づいた値は2.421%
2) 平成30年4月から5年間は「激変緩和措置」期間なので、雇用状況などを踏まえて決める。
3) 障害者雇用状況(実雇用率)から平成34年の状況を想定したとき、おおむね2.2程度になる。(図7参照)。前の法定雇用率2.0%(2018年3月31日までの値)より実雇用率がプラス0.2%超える想定に。

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図7「第73回労働政策審議会障害者雇用分科会 議事録」の説明に基づいて作成したイメージ図

4) 障害者の法定雇用率の引き上げにつながる雇用支援の実施なども加味し、3)の0.2%のアップ率に対しさらに0.1%をプラス。引き上げを0.3%とした。
参考)「第73回労働政策審議会障害者雇用分科会 参考資料2|働き方改革実行計画(抄)」

上記の1)~4)を考慮した結果、前回の法定雇用率2.0%に対し、0.3%を引き上げた2.3%が法定雇用率となった、ということです。
※ただし、経過措置として平成30年4月1日から当分の間2.2%に設定され、平成33年3月末までに2.3%に引き上げられます。ややこしいですがお間違えのないよう。。)

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働く障がい者にとって影響度の大きい「法定雇用率」。国が一体どのように決めているか理解が深まりましたでしょうか?

最後に特筆したいのは、法定雇用率の引き上げ率が上昇していること。1976年から2013年までの間で0.5%しかUPしなかった法定雇用率が、2021年4月までにさらに0.3%上昇します。そして、その後さらに引き上がっていくことが予想されます。

法定雇用率の引き上げをフックに、障がいのある方が働く機会が益々増え、能力や適性を活かして活躍する機会が増えることを、そしてその先にある「法定雇用率が不要な社会」を・・・

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