人も動物もハッピーに!ペット共生型グループホーム「わおん」
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ライター:大河内光明
障がいのある人が自立を見据えて入居し、共同生活を営むグループホーム。
株式会社アニスピホールディングスでは、空き家を活用した施設で、保護犬やペットと一緒に生活できる「わおん」という日本初のグループホーム事業を展開。「複合的な社会問題解決」をテーマとする同社ですが、背景にどのような想いがあるのでしょうか。
代表取締役の藤田英明さん、現場で働く職員の方と利用者の方にお話をうかがいました。
「ペット共生型グループホーム」で人間と動物双方の福祉を実現
▲代表取締役・藤田英明さんと元保護犬の広報部長・パル
24歳で社会福祉法人の理事と施設長に就任、26歳で独立し福祉分野で起業。現在では出版物の刊行やテレビ番組、youtubeでの露出も積極的に行う、株式会社アニスピホールディングス代表取締役の藤田英明さん。
そんな華々しい経歴の根底にある福祉への熱意は、子どものころまで遡るといいます。
「中学生のときにブラジルにサッカー留学をしたのですが、そこで驚いたのが貧富の格差でした。その経験もあり、大学では福祉について学びました」
様々な資料を読み込んでいくうちに、貧困の大きな原因の一つに障がいがあると気づいた藤田さん。精神保健福祉士の資格を取得し、福祉業界に就職。高齢者施設に勤務することになります。
しかしそこで目にしたのは、家族が介護に追われ疲弊していく姿でした。国の規制を変えていく必要を感じ、独自に介護保険内サービスと自費サービスを組み合わせた「混合介護」事業を始めました。役所と議論を交わす場面もありましたが、そうした経験も「わおん」の立ち上げに活きているといいます。
「もともと子どものころから勝手に保護活動をして、今でも犬、猫、フェレットやインコと一緒に暮らしている動物好きです。アニマルセラピーの論文も読み込み、メンタルに対する効用は実感もしていたのですが、実際に『わおん』を立ち上げるようとすると、一部の保健所から反対がありました。しかし以前の経験からきちんと話し合いのうえ、事業として保護犬・猫を引き取ることができるようになったんです」
紆余曲折ありながら、手掛けるグループホームの総数は今や900棟以上。毎月数棟、新規ホームの立ち上げがありますが、オープンすると3か月以内には満室になるという人気ぶり。
そうして入居した人の中には、動物と触れ合うことで変化していく人もいるといいます。
「動物と触れ合うと、癒されるという心理的効果、血圧や血糖値が安定する生理的効果、動物を介して人同士が交流できるという社会的効果があります。加えて私が実感するのは、障がい者の方が『自分が守るべき存在』を見つけることで責任感が出てくるようになるという点です」
とある男性は、家庭内暴力が激しく、てんかんの持病があったそうですが、入居後に犬と触れ合う中でどちらも収まっていったそうです。「保護される対象」から、「保護する側」へ。そうした意識の転換が、入居者の方にもいい作用をもたらしているのかもしれません。
現在、障がい者の健康維持のためのワーカウト施設や24時間体制の日中サービス支援型グループホームの運営にも乗り出した株式会社アニスピホールディングス。今後の展望はどのようなものなのでしょうか。
「今後はグループホーム入居者の高齢化にも対応していきたいですね。福祉以外でも、たとえばウクライナの避難民に対し、弊社施設の空き室を提供してお仕事を任せたりすることで社会問題の解決に貢献していきます。他の福祉関係の事業者さんにも、ぜひこうした点を参考にしていただければと思います」
運動療法を導入のデイサービス『ワーカウト』で心身共に健康に
▲ワーカウト中の冨澤さん
グループホームに入居する障がい者は増える一方、働けず運動不足状態の人も多いのが現状。そこで問題となるのが体力と運動機能の維持です。株式会社アニスピホールディングスはこのニーズに応えるべく、キックボクシングやヨガピラティスを導入したデイサービス「ワーカウト船橋」も運営しています。利用者の冨澤さんにお話をうかがいました。
「去年3月から『わおん』の施設に入居しました。今は仕事のある日には、午前7時に起床、食事をしてから10時に仕事に行き、15時には帰宅。家事やお金の管理などは手伝ってもらうこともあり、助かっています」
グループホームでは現在5、6人ほどと同居。入居者のペットの犬とも一緒に生活を送っています。冨澤さんが新たに仕事を始めたのには、そんな「わおん」や「ワーカウト」での生活で、心境に変化があったからだとか。
「欲しいなと思うものが増え、働いてお金が欲しくなったんです。今はロッテの小坂選手のユニフォームが欲しいです」
現在、週二回ワーカウトに通いながら体力を作り、自分のペースで働く冨澤さん。ワーカウトでは人だけでなく、犬が施設に訪れることもあり、一緒に散歩を楽しむ流れになることもあるそうです。
他の入居者や犬との交流、そして体力づくりの環境はモチベーションアップにもつながっているのかもしれません。
犬も入居者も家族…職員さんたちの想いとは
▲介護福祉士でサービス管理責任者の藤田良子さんと保護犬・タニシ
最後にお邪魔したのは、実際に居住者が生活するグループホーム施設。周囲は車の通行も少なく静かで、人にも犬にも優しい環境です。世話人さんが共有スペースを清潔に保っており、衛生状態にも心配がありません。
「タニシは元々道路沿いで保護されたので、車をとても怖がるのですが、このホームは居心地がいいようですね。普段引きこもりがちな入居者さんも、タニシの様子を確認するためにリビングに出てきてくれます」
こう話すのは介護福祉士の藤田良子さん。「わおん」のサービス管理責任者をされている中で、犬、職員、入居者の中に絆が出てくると話します。
「保護犬を引きとって人馴れさせる過程では、動物看護士を含めた本社スタッフと生活を共にします。この間は引き取った犬が実は妊娠しているとわかり、一気に4匹増えて大変でした(笑)。数か月を共に過ごしたのですが、それぞれ引き取り先のホームが決まって、涙のお別れになりましたね。
各ホームには世話人さんを配置していますが、ご自身が足を悪くされても、通いやすいホームではなく今のホームで、気心知れた利用者さんに会いたいと頑張って通われている方がいますよ」
ずっと一緒にいると家族になっていくんです、と藤田さん。
生き物を扱っている以上、様々な想定外のトラブルがあったりするようですが、それも利用者の方と一緒に乗り越えていくことで絆が芽生えていくようです。
株式会社アニスピホールディングスについてもっと知りたい方はこちらのwebサイトもぜひごらんください!
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ライター 大河内光明
1994年生まれ。早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科を卒業後、web出版社、裁判所事務官を経て副業でライターに。発達障害(ADD,ASD)の当事者であり、民間企業の障害者雇用で働く。
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