ADHDと生きて60年、AIの進化で人生が夢のよう
この記事を共有

ライター:飯塚まりな
近年、成人ADHDは広く知れ渡るようになり、ネットや本で多くの情報を得られるようになりました。
以前は大人の持つ発達障がいが、いまほど話題に上ることはなく、社会に埋もれた当事者たちは少なくありません。
今回、ご紹介する株式会社リオンヌ代表の篠原由佳さんもその一人です。
2002年、篠原さんは白井由佳名義で日本人初の成人ADHDにまつわる著書「オロオロしなくていいんだね!ADHDサバイバルダイアリー」を出版。2年後には、「ビクビクするのはやめよう!ADHDの人に人間関係ガイド」を出版します。
そして今年、24年ぶりとなる新刊「ADHDのまま、60歳になりました」をKindleで出版。
現在はデジタルやAIを積極的に活用し、生きづらさを大きく減らしてきました。これまで「やりたい」と思っていたアイデアを形にし、実現できるようになったことで、篠原さんの人生は大きく変わりました。
「産業革命以来の転機!私はいま、ADHD革命が起きていると思っています」
そう語る篠原さんに、どのようにデジタルやAIを使えば、生きやすさにつながるのか。その実践と工夫を尋ねました。
自分を追い詰めた過去にさよなら
篠原由佳/株式会社リオンヌ代表(以下、篠原):私がADHDと診断を受けたのは30代のとき。この頃は、離婚してシングルマザーとなりパート勤めでした。当時はまだまだアナログな業務が多く、メモを取ることや伝票を書くのが苦手な私にとっては、とても苦しい時代でした。仕事も私生活も行き詰まっていたんです。

▲インタビューに応じてくださった篠原さん
飯塚まりな/Media116 ライター(以下、飯塚):いまほどインターネットが普及していない時代は、自分の努力や能力で補うことがほとんどでしたよね。いまは成人ADHDの検査を気軽に受けられますが、当時も簡単に受けられるものでしたか。
篠原:いやいや、それまでADHDは子どもの発達障がいと見なされていて、病院に行くと門前払いに遭いました。
それでも私が諦めなかったのは、サリ・ソルデンという著者の「片づけられない女たち」を読んだから。この本は成人ADHDを取り上げていて「まさに私のことだ!」と発見がありました。「自分の生きづらさに白黒はっきりつけたい」と思って、診断が出ればそれに沿った対策を取ればいいと考えていました。
飯塚:診断を受けてからの生活はいかがでしたか。
篠原:これまでは、仕事も結婚もうまくいかず、周りと同じようにできない自分に生きる価値があるのかと悩み続けましたが、自分を責める生き方をやめられました。
そこで、「自分と同じような状況に置かれている人と繋がりたい」と思い、自分でHPを立ち上げたんです。当時はYahoo!のカテゴリーに登録して、次の日には500件ほどのアクセスがあり、人生初の「バズる」を経験しました。
一人では対応できないと周りの助言を受けて、当事者同士の自助活動を目的としたNPO法人を立ち上げました。多い時は全国から3000人ほどの会員がいましたね。
飯塚:すごい展開ですね。まず、当時から自身のHPを作成するなどデジタルと相性がよかったことが伺えます。アクセスから届く声をどう受け止めましたか。
篠原:率直に「私と同じような思いをされている方がこんなにいるのか」と思いました。さらにADHDによる二次障がいを引き起こして苦しんでいる方が大勢いることを知りました。私自身も鬱病を患いましたから、みなさんの気持ちは痛いほどよくわかります。
法人設立後に、著書を出版して有難いことに売れ行きが好評でした。テレビなどのメディアに出るようになり、私の再現ドラマが数回放送されるほど、注目されていた時期がありました。
しかし、人生が楽になったかといえばそうではなく、年齢を重ねて更年期や経済面での不安、手術、精神的な不調に直面しておりました。
貯金も無くなり、在宅でできる仕事を探しました。恋愛系の電話相談の仕事や占いの仕事を始めて、収入を得られたことで生活が安定し、心身が回復していったのです。
手書きからAIへ、本からKindleへ

▲この度上梓された本「ADHDのまま、60歳になりました」
篠原:今回の著書は24年前の続編で書きました。昔と違うことは、私が一からパソコンの前に座って書いたわけではないことです。今年の2月からClaudeの一般向けプログラミング機能が開放されたので、音声入力でAIコーディングを使っています。
私にとってAIは「外付けの脳みそ」です。
最初は、AIに頭の中で思い付いたことを話しかけます。内容がまとまっていなくても気にせず進めて大丈夫。後で、AIが自動的に分類して章立てをしてくれます。本気で取り掛かれば3日で完成できるので、誰もが出版できるチャンスを持てます。
飯塚:たった3日間で仕上がるとは…そうなると、ライターや作家の仕事はなくなるのではないですか。
篠原:いえいえ、AIだけでは難しいです。私の場合は、あくまで「AIと自分が役割分担をして書く」といったイメージを持っています。執筆の場合は、AIがざっくり初稿を書いた後に、私たち人間が編集を行うといった形です。
AIで書いた文章を読んでも、人間らしさが見えなければ読者を飽きさせてしまうので、リライトや最終的な品質はやはり人間の手が必要です。
飯塚 :なるほど、AIと共存してやりたいことを叶えるのはいいですね。他にはどんな仕事をなさっていますか。
篠原 :AIコーディングで、事業分けした自社のWebサイトを複数作っています。以前は外注に依頼し、企画・仕様書の作成、業者との打ち合わせなどで数十万円~数百万円のコストをかけるのが一般的でしたが、いまは極限までコスト削減できます。

▲篠原さんがAIコーディングで制作した自社サイト
飯塚:コストをかけずにご自身の手で形にされているのはすごいですね。事務作業やスケジュール管理で、困っていることはありますか。
篠原:事務といえば、できるだけ苦手な「数字」と向き合わないようにしたいので、売り上げ管理や決算処理は経理担当のスタッフに任せています。
また、スケジュール管理はスタッフからラインで送ってもらい、うっかりミスを防いでいます。紙の資料などは極力作らず、どうしても必要な際は、画像化してクラウドで入れておくようにしています。
ADHDの特徴でもある、すぐに物を無くす、片付けができないなどは相変わらずで、60歳になっても苦手なことは変わりません。
飯塚:まだあまりAIに触れていないADHDの方は何から始めたらいいでしょうか。
篠原:まずは、ネットでChatGPTやGeminiを開いて「私はどうしたらいいの?」って問いかけてみてください。人に話せない悩みでもいいです。必ずしもAIが正解な返事を返してくれるとは限りませんが、壁打ちだと思って会話してほしいです。
ただ、のめりこみ過ぎないように気を付けてください。自分や家族の個人情報をそのまま開示するなどは危険ですから、モラルのある使い方をしましょう。
ADHDの人たちは、頭の中が多動な人が多いと思います。私は子どもの頃からよく妄想して、頭の中に次々とアイデアが浮かんでいましたが、アナログ時代は自分の考えを言語化できずにいました。
いまはAIがあなたの頭の中の整理をして、助けてくれますから、漠然とした思いやアイデアを素直に声に出してみてください。
飯塚:最後にMedia116 の読者にメッセージをお願いします。
篠原:いまは、障がい者雇用や障がい者支援が充実して、とてもいい時代がきました。
私たちADHDの人たちは今後、一気にビジネス界で活躍できると思います。
個人的には、可能であればAIに月額3,000円程度課金することをおすすめします。私も複数のAIに課金しています。AIにも得意不得意があるので、必要なものを選んで勉強するつもりで使ってみてください。私自身はそれだけの価値があるものだと感じています。
一緒にADHDの革命を起こしましょう!
この記事を共有
ライター 飯塚まりな
フリーライター/イラストレーター 近所の人から芸能人まで幅広いインタビューを行う。取材実績は300人以上。 フリーペーパーから始まり、現在はwebメディア、書籍、某タレントアプリなどで執筆。 介護・障がい者施設での勤務経験あり。「穏やかに暮らす」がここ数年のテーマ。
おすすめ記事
-
2026年7月31日
インスリンを打ちながら日本1周。本間さんの挑戦の軌跡
-
2026年7月24日
当事者だから伝えたい。義足の訓練と障がい者の防災意識
-
2026年7月17日
医療費の負担を減らす「自立支援医療(精神通院医療)」とは?
-
2026年5月29日
発達障がい当事者のエンターテイナー すがなるみさん 子どもに届けるエンタメの魅力
-
2026年5月22日
バリアを越えて走れ!自転車職人、半世紀の挑戦
-
2026年5月15日
おもしろい!を増やせばつらさは減る!面白がるのススメ
-
2026年4月24日
アート雇用で働いた僕「言いたいことが伝わらない」――田村健さん
-
2026年3月20日
統合失調症でも16万文字の本が出版できた
-
2026年3月13日
見えないからこそ、誰かと走る―全盲の自転車日本一周
-
2026年2月20日
一つじゃない シン解釈!障害者差別解消法
-
2026年2月13日
先天性四肢欠損を描いた絵本『さっちゃんのまほうのて』































コーポレートサイト








