自閉症の息子と歩んだ子育て——母が語る療育と支援制度のリアル
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ライター:keita0206
今回は自閉症当事者の伊沢こうやさんのお母さま、伊沢智恵子(以下伊沢さん)さんに自閉症の子育ての経緯、工夫についてインタビューさせていただきました。
自閉症は、本人との意思疎通に困難を伴うことが少なくないですが、適切なサポートがあることで、豊かな生活を送ることが可能です 。そこで、生活の中でのサポートを始め、教育機関や行政サービスを通じて具体的にどのような支援が受けられるのか、詳しくお話を伺いました!
①幼少期から学校生活を送るまで
「こうやは1997年6月生まれです。生まれたころはほほ笑んだりして、他の子と変わりなく過ごしていました」
伊沢さんはこうやさんが幼少のころ、2歳上の姉と比べて言葉を発する時期が遅いなと思っていた。しかし、男の子は言葉を覚えるのが遅いと聞いていたので、最初はそこまで気にしていなかったという。

▲子どものころのこうやさん
だが3歳を過ぎても呼びかけに反応をしなかったり、公園でお友達と遊ぶ際もずっと砂場で一人遊びをしていたりなど、次第にコミュニケーションに違和感を抱き始めた。
母親仲間からの助言もあり、伊沢さんは保育園入園前のこうやさんを連れて地域の発達センターに足を運んだ。
発達センターとは、発達支援センターとも呼ばれており、主に発達障がい者やその関係者が相談する窓口のことである。各市町村の自治体に設置されており、対応する年齢幅も施設によってさまざまだ。専門医や言語聴覚士などが在籍している施設もあり、ここでは療育方法や今後の進路相談にも乗ってもらうことが可能だ。
「行ってみると、こうやみたいに多動で部屋の中をぐるぐる走り回っている子がたくさんいるんです。 そこで地域の有名な自閉症の専門医を紹介いただいて、初めて自閉症の診断を受けました」
自閉症は生まれてすぐは気づきにくい障害だ。周囲と比べて発達が遅いという違和感から検査につながるので、大体3~5歳くらいに気づく人が大半だという。
「診断を受けた当初は『自分の子がまさか』と、受け入れられない気持ちもありました。元気だし、運動神経も問題はなかったので」
自閉症スペクトラムの認定を受けたこうやさんは、4歳になる際、保育園か幼稚園のどちらに入園するか決めなければならなかった。

▲子どものころは多動性がよく見られたというこうやさん
「発達センターの先生にもどちらにすべきか意見を聞きに行きました。幼稚園はみんなと一緒に遊んだり、工作や運動をしたりするのが主なので、生活の仕方をメインで教えてくれる保育園に入園を決めました」
特筆すべき点として、保育園には障がい児枠もある。特別な支援や配慮を必要とする子どもに対し、通常の配置基準に加えて保育士や教員を追加で配置するという加配制度を利用できるのだ。これによってこうやさんは必要な支援を受けながら保育園での生活を送ることができた。
②学校生活と自閉症の特徴
保育園を卒園したのち、伊沢さんはこうやさんの小学校への進学の際、特別支援学級か特別支援学校のどちらに入学するかで再び選択を迫られた。
特別支援学級は地域の小・中学校の中にある 、障害を持った子たち専門のクラスです。運動会などの行事ごとでは、通常学級のお子さんたちともかかわります。一方、特別支援学校は、それぞれの障害に合わせてじっくり専門的に見てもらえる学校です。 こうやには定型発達のお子さんたちとも関わってほしいと思ったので、特別支援学級を選択しました」
特別支援学級に進学したこうやさんは、授業の時間以外を通常学級の子たちと一緒に過ごした。しかし自閉症の症状によっては、集団の中で活動するのが苦手な子もいるので、どの学校を選ぶかはケースバイケースとなってくる。
こうやさんは日常生活を送るために、学校生活と合わせて療育センターと公文などの、外部機関も活用しながら、日々の生活の幅を広げてきた。
「こうやは元々座ってお勉強するというのがどうしても苦手でした。公文では、障害のある子への理解や配慮があり、座る姿勢や集中力を身につけることを学びました。あとは点を線でつなぐ絵を描いたり、迷路ゲームをやったりして論理的思考を育ててもらいました。

▲こうやさんの描いた絵日記。伊沢さん曰く、人物の髪型がいつも同じだという
勉強面では、こうやは計算がすごく早くて得意なんです。でもそれを日常生活に生かすのが苦手で、例えば『300円のものを買うために、いくらお金を出せばいいのか』という、実際の買い物とお金の概念が結びつかないんです。そういった概念を教えてもらうために、療育センターにもお世話になっていました」
自閉症の当事者に新しいことを教える際、理解するために必要なステップは障害のない子に比べ複雑だ。アプローチの手段も様々で、各支援機関ごとにサポートできる内容も違うので、発達センターなどの窓口で適切な教育機関を教えてもらうことが必要だろう。
③地道な訓練が日常生活を送るカギに
こうやさんが学校生活を送る中、伊沢さんはバスや電車に乗る際も基本付き添いで見守りを続けた。特に混雑時には、周囲への配慮を根気良く教えたという。
「自閉症の子は、周りの状況を察することが苦手なんです。こうやの場合も、席を詰めて座ったりスペースを空けることを一人で察するのはまだ難しいですね。 あと、人がたくさんいる場所だと、雑音や話し声などの音も苦手です。こうやには全部同じ音量で聞こえるみたいなんです。だからいろんな状況を経験させて、本人なりの対応力を育んでいければ、という意味合いもありますね。 」
自閉症当事者によく見られる傾向として、予測してない事態や初めての出来事に遭遇した場合、取り乱してしまう事が挙げられる。伊沢さんはこれまで、予定が変更になっても、こうやさん自身が少しずつ折り合いをつけられる練習を重ねてきた。
「例えば次の休みの11時に、『公園に行こうよ』と予定を決めておくんですけど、当日時間前に『ごめん急に買い物の予定ができちゃったから、今日は行けません』って、わざとなかったことにするんです。そうすると本人はその心づもりでいたので、わーってなるんですけど、そういうこともあるんだよってことをあえて経験させるんです。
他には部屋のドアを少し開けておいて、それが気になっても『いいよいいよ、このままにしといて』と、小さなことは気にさせないようにもしてますね」
実際このような経験を重ねると、 こうやさん自身もちょっとした事ではほとんどパニックを起こさないようになったという。しかし時折取り乱す場合もあるそうで、その際の対応も話してもらえた。
「療育センターで教えてもらったんですけど、何かあった時に力で無理やり押さえつけても逆効果なので、いったんゴロンと横になって、気持ちが落ち着くのを待つようにしています。こうやの場合は体に乗せたお手玉を落とさないようにじっとしてもらうなどしながら。そうすると30分程度で落ち着いてくれますね」

▲療育活動の一環として行った「絵しりとり」
大人になってからだと、パニックを起こした場合は力も相当なものだ。だからこそ、子どもの頃から家庭生活の中で少しずつ経験を積み重ね、対応力を育んでおくことが大切であろう。
④こうやさんと過ごす日々で得たもの
自閉症の子は、発達の過程で丁寧なサポートを必要とすることもあるが、こうやさんと過ごす日々がもたらしてくれた喜びや人間関係も多くあったと伊沢さんは語る。
「小学校の運動会の時は、お姉ちゃんは運動神経がよく、かけっこでもよく1番取ったりして、私も素直に喜んでました。でも、こうやの場合は運動会に出てくれるだけでうれしかったです。集団行動が苦手で、最初のころは運動会に出たくないと泣いてましたから。たとえかけっこでビリだったとしても、『最後まで走り切った!』という、お姉ちゃんとは違う喜びを味わわせてもらえたのが大きいですね」
運動会だけでなく、学童保育での親御さん同士での付き合いでも、こうやさんの障害に理解を示してくれる人とも出会うことができたという。また、家庭内ではこうやさんの存在が家族のきずなを深めてくれていると伊沢さんは話す。

▲こうやさんを中心に、よく家族で出かけるそうだ
「夕飯時にお父さんが帰ってくると、こうやは『パパおかえり』って、笑顔で迎えてくれるんです。お父さんはそれがすごい嬉しいみたいで。こうや自身いつもニコニコしてるので、家族もみんな癒されてます。
こうやは家族みんなが揃っているのがすごい好きなので、私たちも週末はみんなで散歩に出かけたり、夕飯の時もなるべくみんなで食べるようにしていますね」
家族が協力してこうやさんを支える中で、行動を共にできている。またこうやさんを支えようとしてくれる人とのつながりも深めてくれていると伊沢さんは話してくれた。
⑤まとめ こうやさんだから伝えられること
伊沢さんは1年半くらい前から、こうやさんの書いた絵や日頃の生活の様子をInstagramにアップしている。
「お姉ちゃんの提案でこうやのことをInstagramにアップし始めたんです。自閉症の小さいお子さんの様子がアップされているアカウントもよく見かけますが、大人の自閉症の方の様子はなかなか投稿されてなくって。私自身、こうやが小さかった頃は彼の将来が見えずとても不安だったので、同じ思いをしている親御さんの役に立てればいいなと思ってアップしています」
こうやさんの投稿を見てくれた、同じ自閉症のお子さんを持つ親御さんからは『将来の不安が和らいだ』『こんなこともできるようになるんだ』と、感謝のコメントが届いているという。

▲「誰からも愛されて、楽しく過ごしてもらいたいというのが、私のこうやへの望みです」と伊沢さんは語る。
「こうやのことで誰かの役に立てると思っていなかったので、私もとてもうれしいです。Instagramはお姉ちゃんに教えてもらいながら少しずつ覚えていってますが、こうや自身のファンも増やしていければいいなと思っています」
こうやさんの成長した姿や日常生活での工夫は同じ自閉症を持つお子さんの親御さんにとって大きな指針となるだろう。この記事も、自閉症の症状に戸惑う周囲の人や本人が暮らしやすくなるヒントに繋がれば幸いだ。
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ライター keita0206
1992年福岡県生まれ。先天性四指欠損という、左手の指が生まれつき4本無い状態で生まれる。大学4年生の就活の最中、ママチャリ日本一周を思い立つ。大学卒業後は就職せずアルバイトで資金を貯め、2015年5月〜2016年9月までの約1年4ヶ月で、ママチャリでの日本一周を達成。その後クラウドファンディングにて旅の記録を書籍化。旅後は大阪で一人暮らしをするも、旅したい欲求が溢れ2022年7月〜12月にバイクで2度目の日本一周を達成。現在は自転車インド一周の旅に向けて準備中。
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