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察する、予測する、相手を信じる・・・第6感が磨かれるコンタクトスポーツ/日本代表 上田監督に聞くデフバスケットボールの魅力とは?~前編~

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ライター:Media116編集部

デフバスケットボールとは、聴覚障がい者がプレーするバスケットボール。プレーヤーの人数、コートやボールの大きさ、得点の加算方法など、基本的なルールは健常者が行うバスケットボールと何ら変わりません。異なるのは、聴力による不平等をなくして身の安全を確保するため、プレーヤーは競技中の補聴器装用が禁止されていること。チームメイトの声やドリブルの音、審判の笛や声が全く聞こえない状態でプレーをするため、コートの四隅に旗を持った人を座らせ、審判の笛が鳴ると旗を挙げてくれる人の設置をおこない、視覚での判断の補助を設けています。

聴覚障がい者のスポーツとしては珍しい、体と体がぶつかり合うコンタクトスポーツであるデフバスケットボールの楽しさや、選手にとってデフバスケットボールに取り組むことがどんな影響を与えているのかなど、日本代表チームを率いる上田頼飛監督に聞きました。

3ポイントシュートがよく決まる!? 聴覚障がい者の驚異的な集中力

Q.接触が多く危険であるとの理由から、ろう学校ではバスケットボールは推奨されていないと聞きましたが、何をきっかけにデフバスケットボールを始める人が多いのですか?

小学生の時にバスケットボールをしていたけれど、ろう学校にはバスケットボール部がなく、それでも競技を続けたいという人がデフバスケットボールのチームに所属することが多いですね。とは言え、全国でデフバスケットボール協会に所属しているチームは男女合わせて20チームほど。競技人口も200名程度ととても少ないスポーツなんです。

U-18のバスケットボールの日本代表に選ばれた選手が、聴覚障がいを持っていて、最近、デフバスケットボールの日本代表にも入ってくれました。彼は「自分は聞こえないことで苦労してきた。だから、自分と同じような思いをしている人の目標になりたい」とこちらの世界に飛び込んできてくれたんです。彼のように一般のチームや普通中学校・高校の部活で補聴器を付けてプレーしている人が、デフバスケットボールに目を向けてくれるといいなと思っています。

コートでの風景

Q.デフバスケットボールならではのプレーや選手の特徴は何かありますか?

 選手たちは、指でのサインやアイコンタクトを多用してプレーしています。ただ、サインだけに頼り過ぎると試合の流れの中で臨機応変に動くことが難しくなります。ですから、「こういう展開になったら、こう動こう」という決まり事をいくつか設けておいて、あとは選手の判断、選手間の信頼関係に任せる部分が大きいですね。

だからこそ、日々の練習で選手同士がよくコミュニケーションを取って仲間のことをよく知ることが大切。練習を積み重ねながら、「きっとここに仲間が来るはず」と予測したり、「今後ろに来た」と見なくても感じることができたりと、第6感のようなものが研ぎ澄まされていくのです。彼らは、人間の5感のうち「聴力」が欠けているわけですが、それを感じさせないくらい第6感が磨かれているなと、私は日々感じています。

 そして、もう一つ特徴だと思うのは、聴覚障がい者は驚異的な集中力があるということ。スリーポイントシュートの決定率が高い選手が多いんです。163cmと小柄ながら、日本代表のポイントゲッターである大平選手は「俺、補聴器取ってた方がシュート入ります」と発言したほど。余計な雑音に邪魔されることなく、自分の世界に入り込める、それが聴覚障がい者の優れた点だと思っています。


独りよがりではできないスポーツ 仲間意識と向上心が選手を変える

Q.上田監督は日本代表の選手たちを指導していますが、彼らがデフバスケットボールに一生懸命に取り組むことで得たものとは何だと思いますか?

 一般のチームの中でプレーしてきた選手も多いのですが、そういう環境だと「自分に合わせてもらって当たり前」「やってもらって当たり前」という意識が知らず知らずのうちに芽生えてしまう。でも、デフバスケットボールのチームは違います。手話ができない、手話しかできない、口話ができない……などさまざまな状況の人がいる中で補い合ってプレーをする必要がありますから、自分本位ではいられないわけです。

上田監督の取材風景

これまで過ごしてきた環境が生んだ価値観の違いから、選手同士が対立することも多かったのですが、根気強く、時間をかけて意識改革をしてきました。一番良かったのは「日本代表としての品格」を問うたこと。「君たちは障がい者の代表ではなく‟日本代表‟なんだ」と言い続け、振る舞い、言動、そして普段の身なりさえもプレーに影響するということを、選手たちは理解してくれるようになりました。
バスケットボールがうまくなっても、社会生活に影響はない。でも、好きなバスケットボールを通じて自分を磨ける。それが彼らにとって大きな財産になっていると思うのです。

(後編に続く)

プロフィール

上田頼飛(うえだよりたか)1981年、大阪生まれ。2006年、大阪体育大学卒業。バスケットボール選手を目指していたが指導者へ転向。14年にデフバスケットボールの男子日本代表監督に就任。15年の世界選手権大会(台湾)で特別コーチ賞、大阪バスケットボール協会より優秀コーチ賞を受賞。16年から真言宗山階派の僧侶。16年11月よりNPO「one-s future」を設立し、デフバスケットボールを通じて学んだコミュニケーションの大切さを広める活動を行う。
※デフバスケットボールに興味のある人は、協会のHPもしくは上田監督のブログやSNSから「上田監督宛て」と明記してメールを送付。
http://jdba.sakura.ne.jp/
http://ameblo.jp/yori1981/
staff@ones-future.com

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ライター Media116編集部

障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。

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