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察する、予測する、相手を信じる・・・第6感が磨かれるコンタクトスポーツ/日本代表 上田監督に聞くデフバスケットボールの魅力とは?~後編~

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ライター:Media116編集部

 聴覚障がい者がプレーするスポーツ、デフバスケットボール。その日本代表の上田監督に競技の魅力や、競技が選手たちに与える影響など話をうかがうインタビューの後編です。
「デフバスケットボールは社会を良くするツール」と捉えている上田監督が、競技を通じて選手や当事者の方に伝えたいことは何かを聞きました。

バスケットボールだけしていてはダメ 社会に貢献できる人間になってほしい

Q.上田監督はプレーだけでなく、選手に生き方や考え方まで教えているのですね。そこにはどんな思いがあるのですか?

 監督は指示を出す人でもありますが、彼らのプレーを最前列で見られる特権がある人でもあります。選手たちのファンでいたいから、選手にはファンでいられる存在であってほしい。私は今、彼らがかわいくて仕方ないんです。「聴覚障がい者と接する」というストレスは一切ない。意識の高い人材を指導できるのはむしろ楽しいことです。

 それに、選手が現役でいられる時間は短い。だからこそ、現役のうちに社会に貢献できる人間になることが大切だと思うんです。私は選手に「仕事ができないやつはバスケをするな」と日ごろから言っています。「面倒なことはやりたくない」というスタンスではダメ。先日、日本代表選手の一人がゼネラルパートナーズさんのアスリート専門の人材紹介サービスを通じて就職を決めました。しっかり仕事をして、自身の生活環境を整えて、限られた時間に集中して練習をする。与えられた時間が限られているからこそ、質の良い練習ができると考えています。

上田監督の取材写真

Q.選手にとって、バスケットボール以外の時間を充実させることが良い影響を与えるものだとお考えなのですね?

 障がい者スポーツと言うと、自然と「どうぞ支援してください」というスタンスになりがち。でも、私は「こちらが何もしていないのに、どう支援してもらうの?」と思うんです。まず、自分たちが誰かを支援して、その人たちに自分たちのファンになってもらい、応援してもらえるようになりたい。

そんな思いで昨年、NPO団体も立ち上げました。聴覚障がい者から学んだコミュニケーションの大切さなどを、いじめ問題、学校の問題、職場での問題などの解決に生かしてもらえるよう、講演活動をしたり、子どもたちの未来が明るいものになるよう、シングルマザーの就労支援をしたり。デフバスケットボールは社会を良くするツールの一つだと思っています。選手たちにも常にそういう気持ちでいてほしいんです。

聴覚障がい者が「輝ける場所」 デフバスケットボールを知ってほしい

Q.デフバスケットボール界を活性化させるにあたって、課題は何だと思いますか?

 何よりも人材発掘とこのスポーツ自体の普及ですね。日本代表選手はトライアウトで選抜しているのですが、それに参加してほしい選手にこちらから積極的に声をかけに行っています。有望な選手の噂を聞きつけたら、実際にプレーを見に行くこともあるのですが、例えば中学、高校の普通の部活動に入っている子は「自分は普通にできるんだ」「聴覚障がい者のスポーツだから」とデフバスケットボールに前向きでないケースもあって。その部分のイメージ改革は必須だなと思っています。

 日本代表選手の中には、一般のチームにいた時は補欠だったけれど、デフバスケットボールのチームに入ったら試合に出られる実力がついた人もいるんです。一般のチームにいた時は聞こえないがために指導内容がわからず、まわりのまね事をするだけ。でも、日本代表の合宿に来てしかるべき指導を受けたら、水を得た魚のようにどんどん成長して、見違えるようなプレーをする選手になって。だから、普通高校の部活動や一般のチームで大変な思いをしている子どもたちには特に、デフバスケットボールの存在、そして楽しさを知って自分が輝ける場所を見つけてほしいなと思っています。

上田監督の練習風景

Q.記事を読んでいる、聴覚障がい者の皆さんにメッセージをお願いできますか?

 耳が聞こえないからといって、できないと決めつけないでほしい。一番良くないのは、足らないものを埋めようとしないこと。できることや得意なことを伸ばすのはラクなことですから。私にもどうしてもできないことはありますが、それを障がいとは呼びません。「障がい」という言葉で片づけるのではなく、やろうとする気持ちを持つことで身に付くものがあり、人は変われるということを、私はデフバスケットボールを通して目の当たりにしてきました。

聞こえていても、分かり合えないことはいくらでもあります。みなさんは、「聞く」ではなく「受け取る」こと、「感じ取る」ことを中心に生活しているんだから、聞こえている人より感受性が優れているはずです。だから、誰かと接する時に「どうしてわかってくれないの?」ではなく、「受け取って」「感じ取って」、相手との時間を大切にしてほしいです。
そしてぜひ、一緒にデフバスケットボールをやりましょう!

プロフィール

上田頼飛(うえだよりたか)1981年、大阪生まれ。2006年、大阪体育大学卒業。バスケットボール選手を目指していたが指導者へ転向。14年にデフバスケットボールの男子日本代表監督に就任。15年の世界選手権大会(台湾)で特別コーチ賞、大阪バスケットボール協会より優秀コーチ賞を受賞。16年から真言宗山階派の僧侶。16年11月よりNPO「one-s future」を設立し、デフバスケットボールを通じて学んだコミュニケーションの大切さを広める活動を行う。
※デフバスケットボールに興味のある人は、協会のHPもしくは上田監督のブログやSNSから「上田監督宛て」と明記してメールを送付。
http://jdba.sakura.ne.jp/
http://ameblo.jp/yori1981/
staff@ones-future.com

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ライター Media116編集部

障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。

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