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「ヘルスキーパーになりたい」視覚障がい者を取り巻く現状と課題

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ライター:Media116編集部

こんにちは!Media116編集部です。現在、マッサージ師を輩出する指導をされている東京視覚障害者生活支援センターから、週1回通所者の方がゼネラルパートナーズに実習に来られています。私も取材前に実際にマッサージを体験してきました。とても気持ちが良く、取材前なのにうとうととしてしまう程でした…!マッサージ後、取材の中でヘルスキーパーを目指す視覚障がい者を取り巻く環境や課題について当事者のAさんと指導員の宮之原さんからお話を伺うことができました。

「もっと勉強しなければ」ヘルスキーパーを目指し学ぶ毎日

施術してくださったのは30代の男性Aさん。Aさんは晴眼者だった頃にあんま師の学校に通われ、国家資格を取得されています。元々緑内障を抱えていたのですが徐々に進行し現在は視覚障がい重度2級と診断されています。

マッサージ師としては3年の経験のあるAさん。ホテルでのマッサージサービスで働かれていた経験もあります。現在は週5日アルバイトをされており、月100件施術をしているといいます。Aさんが東京視覚障害者生活支援センターに通所されたきっかけは雇用形態をアルバイトから正社員に変えたいと思われ、企業のヘルスキーパーになるという道を選ばれました。アルバイトをしながらその合間に通所されているそうです。

センター

実際に実習された感想を伺うと「課題が沢山あります。ヘルスキーパーの仕事は学校で習ったことや仕事でやってきたことは違い、もっと勉強しなければと思います。様々な人や、それぞれのお困りも千差万別で勉強になります。」と、自分のスキルを磨いていくことに対してとても意欲的な方なのでした。

ひとつの目標に向かって互いに共有し、学び合う

現在東京視覚障害者生活支援センターには9名の通所者がいらっしゃるそうです。通所者は指導やレッスンを一方的に受けるというよりも、通所者同士で知識や経験の共有をしながら自分のスキルを高めているそうです。

出身校も年齢も違う、多種多様な方々が集まる同センターではその多様性こそが武器になるのだといいます。直近で学校を卒業した方の話からは新しい医学的知識を学び、実際にあんま師として働かれている方からは経験を学び…お互いに学び合い知識をつけ経験を磨いているのです。

話し合い

「視覚障がいは情報障がい」いま必要なこととは

「視覚障がいは情報障がい」だと宮之原さんは言います。転職情報などが人づてでしか入ってこず、新しい情報がなかなか入ってきづらい現状があるそうです。「外の世界」へリンクするためには人材紹介会社のような「外の世界」とつながりのある企業と結びつきを強めていく必要があるのです。

プロジェクトの担当は、今回の実習の例のように、有資格者を抱える同センターと企業から頂いた求人を抱える会社が結びつくことで良い相乗効果が生まれるといいます。企業とあんま師の懸け橋になることについて、こう抱負を語ります。

「一人でも多くのあんま師の就業の手伝いをしていきたいと思っています。マッサージルームを導入しようという企業は既存の社員の健康を維持したいと思われています。健康経営と障害者雇用、それを同時に解決する手段としてヘルスキーパーを雇用することも良いと思います。例えば育児しながら勤務している女性にとってはマッサージルームが社内にあることで働く場が自分にとって優しくなり、視覚障がい者にとっては働く場ができるというwin-winな関係をつくることを目指していきたいです。」

握手

特性を理解してもらうことが勤続のカギ

ご自身も視覚障がいのある職業指導員の宮之原さんはヘルスキーパーとして視覚障がい者を雇用する際、企業側に理解して欲しいことが沢山あるといいます。例えば、マッサージに関しては視力を必要としない「技術」として確立していますが、会社までの通勤や仕事先での機器の使い勝手などが課題になると言います。

宮之原さん曰く、企業や機器メーカーは見えている前提で備品を選んでしまうことがあるため、実際に入社すると視覚障がい者が使いづらい場合があると言います。例えば機械式のベッドの方が高性能で良いのでは、と企業側が思って導入しても全盲の方からするとどこがどう動くのかイメージが難しいのでシンプルな真四角なベッドの方が使い勝手が良いこともあるそうです。他には視覚障がい者の安全な利用のために、揃える備品は医療器具の認証番号がとれているかチェックして欲しいという要望もあるそうです。

そういった雇用側の晴眼者と雇用される側の視覚障がい者の間で認識のすれ違いがあることを踏まえ、通所者を企業に紹介する際に気を付けていることがあると言います。
「色や光の強さ、見える部分など人それぞれ見え方が違います。その人の特性、残存視力をいかに仕事上で生かしていけるか伝えることが大切です。」
それぞれの障がい状況を理解してもらえるよう働きかけると同時に、その特徴をいかに仕事で生かせるかという入社後の働き方まで見据えた調整が必要なのです。

企業で必要とされるのは「マルチな施術者」

ヘルスキーパーの需要が高まる中で課題になっているのは、視覚障がい者側にとって国家資格を取得すること自体が非常に難関であること。そして企業側にとっては独立したヘルスキーパールームの確保や保健所への登録などヘルスキーパーを雇用するためにいくつかのハードルがあること。特にヘルスキーパーが働きやすい環境にするための工夫は重要だと言います。極端に言えば「全盲でも扱える部屋」になっているかということ。視覚障がい者にとっては音が頼りであるため、例えばドアの開閉音ひとつとってもあるとないとでは安全面にも関わってくるのです。

宮之原さんは紹介した方がヘルスキーパーとして長く勤続できるように指導の段階で気を付けていることがあるといいます。それは「マルチな施術者になること」。

マッサージ

一般の店舗は常に客の入れ替わりがあり、自分の施術と客のニーズが合えばリピーターになります。しかしヘルスキーパーは一定の人に好まれるだけではなく、社員全員から好まれるようにならなければならないのです。老若男女、様々なカラダの悩みがある社員全員のニーズを叶えなければいけません。会社に順応し、長く勤務していくためには社員全員をリピーターにすることが必要なのです。

健康経営への注目度が向上してきているいま、ヘルスキーパーという仕事は更に必要とされていくでしょう。それに伴って視覚障がい者にとっては新鮮で有益な情報を得る手段、そして企業にとってはヘルスキーパーを受け入れる体制づくりが大切になります。ヘルスキーパーと企業との懸け橋となることには大きな意味があると感じたのでした。

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