共演バンドに「嫉妬を覚える」と言わしめる! 破天荒の知的障がい者バンドスーパー猛毒ちんどん

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ライター:Media116編集部

確固たる「訴えたい想い」があり、それを赤裸々につづった歌詞を、どう思われるかなんて考えずに、ひたすら力の限り歌い、踊る。その圧倒的な熱量に、オーディエンスはいつの間にか心を奪われ、歓声を上げ、一緒に歌い出す。
楽曲のジャンル云々の話ではなく、存在そのものが思いきりロック。彼らのライブパフォーマンスを見て感じた率直な感想がそれだ。『スーパー猛毒ちんどん』は知る人ぞ知る、知的障がい者を中心としたロックバンド。その彼らがライブパフォーマンスを続ける真意、背景とは?

「おふくろはおふくろの人生を生きて」俺は俺で仲間たちと生きるから、ふざけて笑える仲間と…

『スーパー猛毒ちんどん』は、15年ほど前に結成された。知的障がい者が働くリサイクルショップ「にじ屋」のメンバーを中心に、「にじ屋」を運営するさいたま市の「虹の会」を母体とし、スタッフやバンドの活動に賛同し加入を希望した健常者で構成されている。現在、総勢25名ほどでライブに向け楽曲制作や歌の練習に励んでいる。

知的障がいを持つメンバーは、ほとんどが親元を離れて暮らしている。「どんなに障がいが重くても地域で暮らすのがあたりまえ」という信念を掲げる「虹の会」の方針で、「にじ屋」で働き給料をもらい、スタッフのサポートも受けながら自立した生活を送っている。
バンドメンバーでもある“ちゃびえさん”は「障がい者を生んだ親は、一生子どもの面倒を見て生きていかなくてはと、当たり前のように子どもの人生を背負う。でも、親は親の人生を生きればいい。子どものために、何の不自由もない暮らしを提供し続けることはない。親から離れて彼らは彼らの人生を歩む、そのための環境を虹の会は実践し続けてるんだと思う。」と話す。

親に守られた生活は、もちろん安心・安全だ。けれど、同時に彼らを狭い世界に閉じ込めてしまうことにもなる。そのために苦しい想いをしている障がい者がいるということもまた事実。『スーパー猛毒ちんどん』の楽曲の一つ「カレー」には、こんなフレーズがある。

毎日同じ電車に乗って/工場で一日中カレーを袋詰め
そういえば朝から誰ともしゃべっていない
俺は黙ってカレーを詰める/笑うことも忘れた/俺は仲間が仲間がほしい/ふざけて笑える仲間が

障がい者として「与えられた毎日」を生きる。そんな閉塞感を抱えながら暮らすことの息苦しさがメンバーの実体験で語られた曲だ。

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「虹の会」では、プライベートは自由。さらに、遊びに行くためならスタッフから借金をしてもいいという驚くべきルールがあり、映画に行ったり、仲間たちと飲みに行ったり、プロレスを見に行ったり。時にはストリップを見に行くこともあるというのだから、単調な毎日とはほど遠い。髪の色を染めるのも自由。「何のために人は稼ぐ?やりたいことやりたいからじゃんね。“不良障がい者”なんて言われることもあるけど普通だよねえ。(ちゃびえさん)」

目立ってなんぼ、さらしてなんぼ。 後ろ指さされるくらいがちょうどいい

『スーパー猛毒ちんどん』のパフォーマンスは、かなり過激だ。まず、その見た目。顔を白塗りにして派手な衣装を着ている人もいれば、ふんどし一丁のような露出多めの人もいる。とにかく“普通”な人がいない。これが彼らのスタンス。こんな奇抜なビジュアルにするのにはワケがある。それは「逆襲だから」。

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障がい者だから、ただそれだけの理由でいじめられる。道の真ん中を歩けない。そんな不遇な人生を送ってきた彼らが、「俺はロックスターだ!」と胸を張ってステージに立ち、観客を煽る。自分たちを虐げてきた人たち、世の中に反旗をひるがえす。そのためには「ちょっと大げさなくらいのアプローチをしないと」。

そして、もう一つ過激なのは、オリジナル曲の歌詞。コンポーザーで虹の会の副会長でもある佐藤一成さんがメンバーの話を聞き、実体験を歌詞にして曲は作られている。なかには「先生にいじめられた」という障がい者支援学校での教師によるいじめを歌った曲も。また、2016年に知的障がい者施設で利用者が多数殺害された通称「相模原事件」の後に作られた曲の一節は、こうだ。

>>もう限界/満たされない/その矛先を俺に向けるな/母ちゃん俺たちは殺されるために生まれてきたのか/ここで一生終わるものか(「ボーン・トゥ・グローリー」より)

オブラートに包まない。想いを隠さない。そんな真っ裸の楽曲を堂々と、「俺たちはかっこいい!」と胸を張って歌うのだから、その迫力はものすごい。
彼らのパフォーマンスに、健常者のバンドも舌を巻く。ライブイベントで共演したヤング100Vのボーカル・茶谷恒治さんはこう話す。「ライブ中は圧倒されっぱなしでした。自身の生い立ち、障がいについてのストレートな歌詞は、同じ思いを持つ人に届けば社会がとても変わると思います。伝えたいことをちゃんと伝えられて社会も変える力がある。同じようにバンド活動をするものとしては、かなり嫉妬を覚えます」。

以前はバンドの売り込みをして出演交渉をすることが多かったが、最近では、出演オファーが舞い込むほどに。逆襲のエンターテインメント。その世界観が認められつつあるのだ。

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「親が見に来ないバンド」 自分だけの人間関係を生きること

『スーパー猛毒ちんどん』のライブを、メンバーの親はほとんど見に来ないという。なぜなら、「学芸会ではないから」。「おいおい、母ちゃん来てんのかよ」と、バンド内では親が来ることを「恥ずかしい」と感じる意識があるのだとか。

あくまで、『スーパー猛毒ちんどん』の活動は、プライベートの仲間との時間。加入は強制ではないし、練習は「にじ屋」の仕事を終えてから。好きで、自主的にやっている趣味だ。だが、みんなでやる逆襲でもあるのだ。そこが、一般的に障がい者施設で行われるいわゆる「音楽療法」とは違うところ。与えられた“優しい音楽”を言われた通り奏でる、支援活動の一環ではないのだ。

以前、障がい者ばかりが出演するイベントに出演した時、歌う曲を指定されたことがあった。「先生にいじめられた」とか「毎日閉塞感に苛まれている」などという過激な歌詞は、その場にはそぐわないと判断されたからだ。また、そのステージで彼らのパフォーマンスをノリノリになって見ている障がい者の子がいたが、そこに親がやって来て、「見てはいけないもの」と言わんばかりに連れ帰ってしまったことも。

ちゃびえさんは「障がい者はもちろん酷い扱いを受けるべきゴミではないけれど、みんなピュアでいい人なんてことも決してない」と話す。当たり前のように不満はあるし、こうしたい!という欲望もある。彼らはそれを好きなように表現しているに過ぎないのだが、“障がい者界”ではどうしても異端児として扱われてしまう。

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『スーパー猛毒ちんどん』のファンで、別の障がい者施設に務めた経験があるヨシコさんはこう話す。「障がい者施設はやはりスタッフ中心の生活で、特に昔からの施設であれば「収容」という色がまだ強く残っています。虹の会は障がい者が主体で、サポートも必要な部分のみ。みんなで一緒に生活していくことが当たり前というスタンスに共感します」
また、守られた世界を飛び出した彼らに「この人たちの『共犯になりたい』と思って引き込まれます」とも話す。

自由に生きたい、仲間が欲しい、本音をさらけ出したい。欠点もあるけれど人との触れ合いの中で経験し、学んでいく。それは、障がい者だからとか、健常者だからとか、そんな垣根を飛び越えたところにある人間の欲望や本質だ。彼らのパフォーマンスが多くの人の心に響くのは、誰の心にもあるモヤモヤした感情を歌っているから。「障がい者のバンド」という色眼鏡を外して、ぜひ一度、ライブを体感することをおすすめしたい。

バンドプロフィール:
「スーパー猛毒ちんどん」
1982年設立「どんなに障がいが重くても地域であたりまえに暮らす」ことを目指し活動するさいたま市の障がい者団体「虹の会」の活動のひとつとして結成されたバンド。主に、知的障がい者が働く「にじ屋」のメンバーが中心となり、他業種のメンバーのサポートも受け、活動。ドラム、ベース、ギター、ボーカル、踊り、旗振り、音響、絶叫と、様々な担当がいるロックバンド。代表曲「おれたちは先生にいじめられた」など、リアルで心に直接突き刺すような、常識を打ち破る曲が魅力。

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障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。

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