発達障害の山口さん(仮名)が前向きな人生を生きるための貴重な“心構え”を築くまで
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ライター:発達障がいの方向けサービス LinkBe(リンクビー)
皆さん、こんにちは。発達障害の方専門の就労移行支援「LinkBe大阪」スタッフの黒木です。さて、人は誰しも「人生を前向きに生きたい」そう渇望するものかと思います。障害を抱えて生きる方々にとってもそれは同じこと。そうした生き方を実現する方々は、自分自身の中に、ある種の“心構え”を持っていたりします。そこで今回は、発達障害のある山口さん(仮名)に、人生をポジティブに生きるためのご自分なりの“心構え”を、いかにして築いていったかを語っていただきました。
自らの考え方や価値観が絶対ではない、と気づく
山口さんは以前、自分の人生に漠然とした不満を抱いていました。同年代の人々は社会で着実にキャリアを築いていっている、それに対し、自分は立ち遅れているのではないか――そんな不満です。
しかし、あるときから山口さんは気づくようになります。比較は無意味である、と。同年代の人々と自分を比較してしまうのは、自分が自分の価値観に無意味に縛られているからではないか、と。
「自分自身、自分の考え方や価値観に固執しすぎていることに気づいたのです。たとえば、自分と同じ30歳前後の男性であれば月にこのぐらいの収入があって、社会的地位はこのぐらいで――そんな自分の価値観にとらわれ、それに沿ったキャリアを築くことの出来ていない自分をうまく受け入れることができなかったのです。だから、どうしても人生をネガティブに考えがちだったわけです」
本当に前向きな人生を実現するためには、もっと柔軟に物事を受け入れる必要がある――この大切な視点に、山口さんは気づいたわけです。
世の中にはさまざまな境遇の人たちがいるという事実
では、自分自身、より柔軟に物事を受け入れられるようになるには何が必要なのか。もっと幅広い視野を持つことが大切であると、山口さんは考えました。そして、そのためには、さまざまな人たちと語り合う必要がある、と。
「自分と同じ発達障害のある仲間たちをはじめ、多くの人たちと話し合う機会を持ちました。とくに発達障害のある仲間たちとの語らいからは、自分と境遇の似た人たちであることもあって、非常に多くの示唆を得ました。この障害のある人たちには、独特の言語や世界観を持つ魅力的な方々が多いのです。そうした人々と話し合う中で、自分のちっぽけな物差しで物事を判断することの愚かさに、少しずつ気づくようになっていきました」
同時に、山口さんは発達障害だけでなく、さまざまな障害を持つ人たちの事例を調べ始めました。その中で強く感じたのは、世の中にはさまざまな境遇の人たちがいて、その一人ひとりが与えられた条件の中で必死にがんばっているのだという事実。そう、人間の社会的な“あり方”というのは、以前、山口さんが考えていたように、年齢に応じて『月収はいくらで、地位はこのぐらい』というように一般化できるものでは決してないのです。
そのことを知り、人生に対する考え方も大きく変わりました。自分が縛られていた価値観への“こだわり”が消え、「以前よりはフラットな視点で自分のことを見つめられるようになった」(本人談)のです。それが、障害者のみならず、前向きな人生を生きることを望む者だれもが持つべき重要な“心構え”であることは言うまでもありません。
前向きに生きるために、いい仕事がしたい
山口さんは今、障害者採用での就職を目指して活動を続けています。しかし、果たして人は何のために就職し、働くのでしょう。
それは、第一義的には賃金=生きていく糧を得るためです。しかし、それだけではありません。人は働くことで、社会の中で自分が一定の役割を果たしているという、かけがえのない充足感を得ることができます。それはもしかすると、生きていく糧を得ることと同じぐらい、あるいはそれ以上に貴重なものかもしれません。最近、山口さんも、そのことを強く意識するようになりました。そして、社会の中で一定の役割を果たすこととは、前向きな人生を築いていくための重要な条件の一つである、とも。
「他の誰かと比較して良くなるのではなく、私は私という一個人として、長所を生かしながら前向きな人生を築きたい」
「多くの仲間たちと語らう中で、私はそう強く思うようになりました。前向きに生きるために、いい仕事がしたい、そしてできる限り長期にわたって就労を続けたい――いまの私はかつてのように年収や社会的地位といった“モノサシ”にこだわってはいません。そう、他の人にとってそうであるように、私にとっても就職とはゴールではなく、スタートなのですから」
こうして前向きに生きるための“心構え”を築いていった山口さん。彼が就職というスタートラインに立ち、よりポジティブな人生行路に向けて一歩を踏む出す日は近い――そう確信します。
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