一つじゃない 第21回
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ライター:風来坊
障がい者として就職活動を行うにあたり、私は「通院」がしやすい(早退や休みがとりやすい)企業であるかどうかということを重視しています。人によっては体調面の心配から通勤しやすい企業を選ぶ人もいるでしょう。
こうした障がい者の理想は障がい者を理解したくない人から見たらただのワガママなのかも知れません。
では、障がい者の理想をワガママと捉える地域に住む障がい者はどんな生活をしているのでしょうか。
<就職活動6thシーズン>
障がい者として就職活動を始めて半年が過ぎました。
既に障がい者専用という就職サイト、政府が民間の派遣会社に委託している就職支援サービス、宮城県が民間派遣会社に委託している就職支援サービスが当てにならないことは判明(過去記事「一つじゃない19」参照)しているので、現在の私の就職活動はハローワークのみです。
しかし、ハローワークの求人は中々動かない(新しい求人が出にくく、既にある求人はかなり前から出っぱなし。※個人の感想です)という性質があるのでハローワークも望み薄…と思いきや私にもできそうな職種の求人が出ていました。
それも2件!
私の仕事に支障をきたしそうな障害は、
・利き手の小指が動かない
・利き手の薬指が大きく曲がっている
企業に配慮して欲しいことは、
・利き手が不自由なので作業に関しての配慮をして欲しい
・精神障害(不眠、過食)の治療のための通院時間の確保
となっており、そうした私の希望に合致した求人と出会えるのは稀なのですが今回は2件と出会えました。
今回、出会った企業は下記の通り、
A社
雇用形態 パート労働者
職種 一般事務(PCでの資料作成、電話応対、他)
賃金 宮城県の最低賃金より高い
就業時間 8時間か4時間
労働日数 週3〜5日
B社
雇用形態 パート労働者
職種 事務(伝票整理、書類作成、他)
賃金 宮城県の最低賃金
就業時間 8時間
労働日数 週4〜5日
早速、ハローワークの職員に相談し応募することにしました。
私「A社に応募したいのですが。」
職員「A社…A社は待遇が良いのですが採用基準が厳しいみたいで誰も採用されないんですよね。」
私「…。」
ということでA社への応募は保留することに。
続いてB社の求人に応募しようと思ったのですが、面接会場が本社でも就業地でもないとんでもない僻地だったのです。
私の住む宮城県I市も相当な田舎なのですが、そこから更に二時間近く自動車で向かった先の僻地にあるのが面接会場。勿論、公共交通機関なんてありません。
私は長時間の運転は医師に止められているのでB社の求人は諦めました。
<皆はどうしているんだろう?>
私の障がい者としての就職活動のテーマは「居住地での就職活動」なのですが、私の居住地はかなりのド田舎なので障害者雇用をする企業がそもそも少ないという現状があります。そこに「出来る職種が限られている」と制限を付けているのですから私の障がい者としての就職活動が上手くいかないということはわかっていました。
そんな中で、ふと、
「宮城県I市に住む障がい者はどのように生活しているんだろう?」
と気になりました。
気になったことは調べずにいられないのが私ですから宮城県I市について調べることにしました。
<宮城県I市の実状>
宮城県I市は、
総人口143,047人(令和元年)
身体障害者手帳保持者5,922人
療育手帳保持者1,155人
精神障害者保健福祉手帳保持者1,024人
指定難病医療費受給者1,108人
小児慢性特定疾病医療費119人
上記の数字から、宮城県I市の総人口の6.5%は役所に自身の障害を申請していることがわかります。当然ですが「福祉に辿り着いていない人」や「役所に申請しない選択を選んだ人」はこの6.5%に含まれていないので、実際に宮城県I市で障害を持つ人は総人口の10%を超えるはずです(※個人の感想です)。
そんな宮城県I市が障がい者から取ったアンケートによると、
「働いている」と答えた障がい者は全体の36.9%
「働いていない」と答えた障がい者の回答理由は…
・病気や障害のために仕事ができない54.6%
・長時間の労働が困難21.7%
また、「働きたい」と考えている障がい者は38.4%いるそうです。
そして、「働きたい」と考えている障がい者が就職活動を行うにあたって重視することベスト3が、
・障害のことを理解してくれること33.8%
・通院やその日の体調に合わせて休みや遅刻、早退ができること21.9%
・障害があっても働きやすいように環境が工夫されていること17.3%
となっており、このことから私の仕事選び(片手が不自由でも出来る仕事選び)はアンケート結果で多くの障がい者が就職活動を行う際に重視する「障害のことを理解してくれる」や「障害があっても働きやすいように環境が工夫されていること」と同じであることがわかりました。
更に、私の企業に配慮して欲しいことも「通院やその日の体調に合わせて休みや遅刻、早退ができること」というアンケート結果と同じでした。
私の障がい者としての就職活動が進まないのは「私のワガママ」が原因だと思っていました。
しかし、私の希望は誰しもが持っている普通の希望だったのです。
では、なぜ私の障がい者としての就職活動が進まないのでしょうか。
そこで、私は宮城県I市の障がい者の就労状況を調べることにしました。
<宮城県I市の障がい者雇用の実状>
令和元年に宮城県I市の福祉施設から一般企業での就労に移行できた人は17人。
しかし、I市の就労継続支援A型事業所職員の話ではI市における一般就労には疑問点があるそうなので宮城県I市が公表している17人という数字は鵜呑みに出来る数字ではなさそうです。
では、宮城県I市の障がい者雇用率はどうなっているでしょうか。
法律で決められた障がい者雇用率は「2.3%」(令和3年現在)
宮城県全体における障がい者雇用率は「2.21%」(都道府県別ランキング32位)
そして、宮城県I市の障がい者雇用率は宮城県内で最下位の「2.06%」
このことから宮城県I市は障がい者が活躍する下地が出来ていない地域であることが分かりました。
私の障がい者としての就職活動のテーマである「障害が有っても住んでいる地域で生きたい(働きたい)」ですが、若しかするとその当たり前の願いは宮城県I市では非常識な願いなのかも知れません。
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ライター 風来坊
東北の片田舎在住のアラフォー。 児童虐待、いじめ、パワハラ、自傷による措置入院を経験。 田舎では福祉に偏りがあると考え30代から大学で福祉を学ぶ。 数年前には事故で利き手が不自由になり、現在はリハビリを兼ねた趣味(プラモデル、ニードルフェルト、UVレジン)に没頭中。 いつか全ての人が楽しめる駄菓子屋を開きたい。
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