「私」の身代わりがオフィスに出社。リモートワーキングロボットが広げる可能性
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ライター:遠藤光太
障害や疾患のある人々にとって、人混みを通って出社することには困難やリスクがあります。コロナ禍では、そうした困難やリスクがより顕在化し、広く皆が直面していることでしょう。
そんな私たちに、これからの働き方のヒントを示唆してくれるロボットが現れました。
「リモートワーキングロボットプロジェクト」は、ヤンセンファーマ株式会社が提供を開始した、オフィスで社員の代わりに移動してくれるロボットです。当メディア『Media116』を運営するゼネラルパートナーズでは早速、社員がリモートワーキングロボットで勤務をしてみました。
使ったのは、就労移行支援事業所「いそひと・リンクビー大手町」副施設長の森さんです。「いそひと・リンクビー大手町」は聴覚障害・発達障害のある方を対象とし、ゼネラルパートナーズが運営しています。
写真:リモートワーキングロボットで働く森さん
姿や佇まいで感じる『今日は元気そうだな』
森さんはクローン病を抱えています。治療に免疫抑制剤を使用しているため、新型コロナウイルスの感染リスクが高まっているそうです。ロボット導入前には、週3〜4日は在宅勤務をしていました。
お話を聞いたのは、2週間のお試しレンタル期間が終わろうとする頃です。「寂しく感じますね」と語るほど、リモートワーキングロボットを用いたお仕事は充実していたようです。
「普段の在宅勤務でノートパソコンを使ったWeb会議アプリ(Zoom)は使っていますが、顔だけは見えても、利用者さんの姿がなかなか見えません。でも出勤していれば、利用者さんが歩いている姿や佇まいから『今日は元気そうだな』『大丈夫かな』と捉えているんですよね。それがロボットだと、広く全体を見渡せるので、利用者さんの姿や事業所の雰囲気がわかります。その人だけじゃなくて、その人の周りが見えるので、その場の雰囲気がなんとなくわかるというか。
立ち話ができるのもとても良いです。立ち話ができると、その場所に実際にいるように雑談ができる。みなさん興味を持ってくれて、話しかけてくれたりしますし、気軽に話せる感じがします」
リモートワーキングロボットは、自宅から移動の操作ができ、オフィスの中を自由に動き回ることができます。また、ディスプレイの位置を上下に動かすことができるので、立ち話も会議も自在に参加できます。
それでも、難しく感じたところも森さんにはあったそうです。
「場の空気のようなものはZoomよりはわかるのですが、情報はどうしても少なくなってしまいます。私たちの事業所は対人支援をしていますので、細かい相手の表情を見る、会話ではないアイコンタクトを拾うといったことがあるのですが、そこはやはり難しさはあるかなと思います。
ただ、私は副施設長として全般的に施設運営に関わっていて、利用者さんの自己理解を深める研修の講師、就職活動のサポート、卒業生の定着支援などをしていますが、個別の業務で考えると、ほとんどできると思いますね」
リモートワーキングロボットが広げる可能性
森さんは、支援者としてポジティブで新しい可能性を感じていることも話してくれました。
「身体障害の方も、精神障害の方も『在宅なら仕事ができる』という方は非常に多いと思うので、在宅で仕事ができる可能性を広げてくれるかなという感じがしますね。
私はクローン病という病気で、人によって症状は異なるんですけれども、トイレの回数が多いとか、急にトイレに行きたくなるとか、ちょっと疲れてベッドに横になりたいといったことがあります。また、人によってはお昼ご飯を食べずに栄養剤で摂っている方もいます。口から摂っている方、鼻からチューブで摂っている方、点滴のように摂っている方もいるので、そういう方は家の中で仕事ができるのは非常に良いことですね」
同じく「いそひと・リンクビー大手町」で働く同僚職員の杉田さんは、「ロボットは『生き物感』があるんですよね。職員や利用者のみなさんも、『森さん、森さん』と話しかけたくなっている様子でした」と感想を教えてくれました。
写真:ロボットを丁寧にセッティングしました
新しい時代の働き方を実現するために
ヤンセンファーマによると、働く人の3人に1人が病気を抱えながら仕事をしていると言われているそうです。また、2020年6月の時点で毎日出社している人の割合が55.3%と同社の調査結果から出ており、まだまだオフィスと在宅勤務の適切な組み合わせが模索されている状況です。
今は、働き方が変化する過渡期と言えるでしょう。ロボットのように柔軟な働き方が広がれば、働きたくても働けなかった人の仕事を増やし、働いている人の働きやすさを高めてくれます。もしかすると、会社や病院、工場、あるいは街角で、たくさんのリモートワーキングロボットに出会う未来が待っているかもしれません。
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