どこの映画館でもバリアフリー上映が可能に! 〜聴覚障害者向け「『メガネで見る字幕ガイド』体験会」に行ってきました♪〜

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ライター:Media116編集部

こんにちは!Media116編集部です。今回は『メガネで見る字幕ガイド』の体験レポートをご紹介します。これまで、聴覚や視覚に障がいがある人が映画館で映画を楽しむためには、バリアフリー上映期間を利用するしかありませんでした。でもその期間は大抵一週間程度と短く、対応する映画館も限定的です。観たい映画があったら、まずバリアフリー上映に対応しているのか、どの映画館で利用できるのかを確認して、スケジュールを調整し、場合によっては職場に休暇願いを出し…と、映画を観るまでがまず大変。

でも、そんなストレスを回避できる「UDCast」というアプリケーションをご存知ですか? Palabra株式会社のアプリで、以前Media116でも紹介しましたが、UDCastを利用すれば通常の上映期間にどの映画館でも字幕や音声ガイド付きで映画を楽しむことができるのです!
先日、川崎チネチッタで開催された聴覚障がい者向けの「『メガネで見る字幕ガイド』体験会」に、聴覚障がい当事者の皆さんと一緒に参加して、UDCastによる字幕ガイドを体験してきました!テクノロジーの進化によって、これからの映画鑑賞はどのように変わっていくのでしょうか。参加者の皆さんの感想や、このシステムを開発したNPO法人 メディア・アクセス・サポートセンター(以下MASC)の川野さんにお話を伺います!

スマートグラスで初めてのUDCast体験!

シアター内参加者集合

<シアター内での参加者集合写真>
後方左側から、関さん、所さん、竹本さん、岩崎さん
手前左側から、佐々木さん、鈴さん、稲川さん

体験会に集まったのは、聴覚障がいを持つ7名の方。チネチッタのエントランスでスマートグラスが手渡されると、もの珍しさに、まずは一通り外観を確認。ネックストラップ部分にマイクが固定されていて、レンズ部分は厚めでやや重量感があります。まだシアター外でしたが、とりあえず装着。互いにメガネ姿を見せ合ったり、ひとしきりスマートグラスそのものを楽しむと、劇場スタッフの方に促されるままシアターの中へ…。一体どんな映画体験が待っているのでしょうか。

MOVERIOアップ写真
今回使用した「MOVERIO BT-350」(EPSON製)

鑑賞した作品は東野圭吾原作の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。とある雑貨店の新聞受けを介して1980年と2012年が錯綜する物語で、シーン毎に描かれている時代が頻繁に切り替わります。今回、スマートグラスを利用した映画鑑賞を初めて体験した7名の参加者皆さんに、使用感などについて伺ってみました。

Q:体験会にご参加の皆さんに伺います。普段は、どんな風に映画を楽しまれていますか?

鈴:映画は好きで、洋画も邦画も同じくらいよく映画館に観に行きます。予告を観て、興味がわいた映画が邦画だったら、字幕付きの上映があるか、いつからか、どこの映画館で観られるかといった情報をネット検索で調べて観に行きます。邦画は行くまでの作業がとても面倒なんだけど、やっぱり映画館で大音量を感じて、臨場感を楽しみたいです。


佐々木:私も映画が好きでよく観ますが、邦画の場合は、DVD化を待つことが多いです。バリアフリー上映はほとんどが平日なので、仕事を休まないと行かれないのがネックになっています。

稲川:もともと洋画ばかり観ていたんですが、大人になるにつれて邦画にも興味を持つようになりました。普段は、バリアフリー上映に対応しているかどうかを家族や友達に頼んで確認してもらってから観に行っています。

稲川さん@エントランス

竹本:映画館で観るのは字幕上映の洋画です。邦画は、映画館で観るのは最初から諦めていたので、いつもDVD待ちですね。

岩崎:もともと好んで映画鑑賞する方ではなかったんですが、孫ができてから、一緒に映画館に観に行くようになりました。でも、小さな子供と一緒なので、たとえ洋画でも吹き替え版です。そうなると内容が分からないので寝てしまいます(笑) 字幕付きで観ようと誘って連れて行ったこともありましたが、その時は孫が大変な思いをしたかもしれませんね。テレビ放映だとたいてい字幕がついているので、テレビで観ることが一番多いです。

所:子供の頃から、映画もテレビも日本のものは何を言っているのか分からないので面白いと思ったことがありませんでした。映画といえば洋画。邦画を観るときはDVDで観ます。

関:昨年、初めて映画館で字幕付きの映画を観て、感激しました。それまで映画は、テレビ放映で観ることはあっても、映画館には行って観る気になったことがありませんでした。字幕があれば、もっと映画を観に出かけられるになると思います。

所さん&関さん@エントランス

Q:「メガネで見る字幕ガイド」を利用してみた、率直な感想を教えてください。

鈴:映画館に行く前の調べものが本当に手間だったので、バリアフリー上映期間でなくても、スマートグラスさえあれば字幕付きで楽しめるというのが、とても楽ですね。ちょっとグラスの重さが気になりましたが。

佐々木:グラスがずれると文字が見えなくなるので、調整するのが面倒でした。でも、このグラスがあれば、土日に映画を観に行けます。やっぱり平日に仕事を休んで映画を観に行くというのは、はなかなか難しいですからね。

佐々木さん@シアター

稲川:これまでのバリアフリー上映だと、役者さんが話すより先に字幕が表示されてしまったりして、会話が分かりにくいシーンが少なからずありましたが、このグラスだと、タイミングがピッタリで、話の流れがとても分かりやすかったです。これがあれば、大学の友達(健聴者)と一緒に映画を観に行きやすいです。社会的にもよい影響が期待できるツールだと思いました。

竹本:映画にはポップコーンがつきものですよね!でもポップコーンを食べるとグラスも一緒に動いてしまって字幕が見えなくなるので、会話途切れたスキを狙って食べました。おかげで忙しかったです(笑)こういう機械を使わないでも済むように、邦画も基本的に日本語字幕をつけてくれたらいいのに。

岩崎:グラスの視野が狭いので、字幕の位置と自分の体勢と、ちょうどいい状態を模索しているうちに小一時間かかってしまいました。小さな子だと使いこなせないかもしれませんね。私も、すべての上映作品に字幕がつくことを望みます。

岩崎さん@シアター

所:今日は字幕のおかげで、しっかり内容を理解することができました。邦画はつまらないと思っていたけど、すっかり感情移入して感動してしまいました。特に、今回観た映画は、時間の流れが戻ったり進んだりして、もし字幕がなかったら全く理解できなかったと思います。バリアフリー上映期間はとても短くて予定を合わせることが難しく、観に行きたい映画があっても、DVD化を待つことがほとんどでした。こんなメガネがあるなら、これからも是非是非使ってみたいです。

関:難聴で聞こえが悪いと、長い会話を聴くのはとても疲れのですが、今日は疲労感もなく楽しめました!皆さんがおっしゃるように、メガネのフィット感には改善の余地があると思いました。誰が何と言っているのかが分かりやすかったですが、役者さんの位置に合わせ字幕も表示位置や色を変えたらもっと分かりやすくなるかも!

意見交換会
<意見交換会の集合写真>
MASC(NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター)理事・事務局長の川野浩二氏(右端)と参加者の皆さん

日本独自のバリアフリー上映システム「UDCast」の可能性

Q:MASC川野さんに伺います。まずはUDCastの仕組みについて教えてください。

川野:UDCastは、映画本編の音声を予め解析することによって、字幕表示を同期させることができます。スマートグラスやスマートフォン、タブレットなど、対応するデバイスにがあれば、映画館の場所や規模に関わらず字幕表示を利用できます。館内に新しい設備などを導入する必要がないため、地方の小さな映画館でも映画のバリアフリーを保証することができるのです。

Q:どういった点が日本独自なのでしょうか。

 アメリカでは、映画がフィルムだった時代から聴覚障害者向けに字幕対応が行われているのですが、いずれも映画館の設備として導入する必要があり、多額の設備投資が可能な映画館しか対応できません。UDCastは設備投資が不要である点で、世界に例がありません。また、映画本編の時間に完全同期しているため、映像の進行とズレることなく、途中からでもすぐに利用することができます。こうした便利なシステムが日本で実績を積み、世界へと広がれば、福祉の枠組みを超えて産業として拡大していける可能性があると思います。

十人十色、百人百色にカスタマイズされた映画体験を

Q:参加者の皆さんが挙げた課題として、スマートグラス自体についてのご意見が目立ちましたね。

川野:デバイスは今後も進化していくでしょうし、今回は両眼式のグラスを使用しましたが、片眼式といってスカウターのような形状で、もっと軽量のものもあります。字幕の表示位置に関しても、スマートグラスに表示させると、グラスと一緒に字幕も動きますが、ARの技術を利用して、スクリーン側に固定されているように表示されるデバイスも開発中です。例えば頬杖をつきながら映画を観るときに、自分の頭の傾きに合わせて字幕も傾いた方が観やすいか、スクリーンに対して平行に固定されていた方が観やすいかによってデバイスを変えるなど、将来的には個々人ごとに自分に合ったデバイスを選択できるようになっていくのが望ましい環境ではないでしょうか。
 また、この技術は聴覚障がいや視覚障がいの方だけではなく、外国の方向けに多言語対応に利用できます。産業として発展していく可能性が大いにあり、経済産業省からも注目されています。産業化にともなってメーカー間の競争が生じれば、自ずとよりよい製品が開発され、低価格化も期待できます。

Q:最後に、読者の皆さんへメッセージはありますか?

川野:MASCでは、字幕制作の「モニター会」を設置しています。映画の制作過程で、監督、プロデューサーと一緒に字幕を制作するための当事者モニターの会です。制作側の意図を確認しながら、当事者にとって分かりにくい部分を修正したり、字幕のクオリティーを維持・向上するための活動をしています。こうして作られた字幕や音声ガイドは、そのままDVDやBlu-ray、テレビ放送など様々なメディアに展開して使用することができます。Webサイトで、一緒に字幕制作に参加してくださるモニターさんを募集していますので、お時間があれば是非ご登録ください。
モニターさん募集

 映画館で映画を観る良さって、映画以外の刺激を極力排した閉鎖空間で、没入感と臨場感を味わうことではないでしょうか。新しいテクノロジーによって、障がいがあっても映画がより身近な楽しみになっていきそうです。人の感性は十人十色、百人百色。バリアフリーがさらに進化して、障がいや人種などの違いにとどまらず、映画を観る人がそれぞれに最適なデバイスを身につけて、映画館の座席で上映開始を待つ…なんて日が、いつかくるのかもしれませんね!

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