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自分が災害弱者に!?第2回 超福祉 障害✕震災ワークショップに参加してきた!

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ライター:わに

みなさんこんにちは!てんかんの当事者でゼネラルパートナーズにてライターをしているわにです。2019年9月5日(木)渋谷ヒカリエにて第2回「超福祉 障害×震災ワークショップ」が開催されました。このイベントは東京都の「仮設住宅不足への対応準備事業」を実施する専修大学が「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展(超福祉展)」を主催するNPO法人ピープルデザイン研究所と、共同で実施。2回のワークショップを経て、2020年、東京都に政策提言することを目指すものです。実際にワークショップに参加してきました!

自分が震災弱者に!?その時直面する課題とは

みなさんは震災への備えはできていますか?水、食料、救急用品、貴重品…など避難生活に必要なものを非常用持ち出しバッグとして備えている方は少なくないかもしれません。しかし「障がいに関係する備え」はできているでしょうか?自身の障がい特性を理解した上で災害時どのような対応を取ったら良いのか、どのようなヘルプが必要になるのか…ましてや避難所や仮設住宅での暮らしになった際には何が必要なのか?想像をされたことはあるでしょうか。

今回のワークショップの目的は「首都直下地震時の仮設住宅不足への対応準備」について、2020年春東京都への政策提言、令和3年予算獲得・事業化に向け、障がい者が直面するであろう課題を明確にし、解決策を考案するというもの。

障がい当事者が自身の障がいについてあらためて考え、仮設住宅での生活になった時どのような配慮があれば良いのかをディスカッションし、アイデアを出し合いました。

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登壇者はNPO法人ピープルデザイン研究所代表・須藤シンジさん、専修大学の佐藤慶一教授、一般社団法人PLAYERS・タキザワケイタさん、株式会社ゼネラルパートナーズブランディング統括局局長・佐藤古都さん。

まずは須藤さんの挨拶からワークショップが始まりました。ワークショップ開催のきっかけは佐藤慶一教授と、認知症の方の社会参画についてのお話をしたことだったそう。東日本大震災を経験したとき、社会的弱者の方に対応するルールブックがあったものの、いざ震災が起こったときには彼らが後回しにされる現状があったとのこと。「震災に対してどう備えるか、なるべく心落ち着いて考えられるかが大事だと思っている。」そう語るのでした。

「平常時にできないことは、非常時にはできない。」佐藤古都さんはゼネラルパートナーズ障がい者総合研究所のアンケートを元に現状を話されました。被災した人で、障がいに起因する困難があった人は35%。被災を仮定した場合、支障があると考える人は55%。備えがある人は26%だったことがわかりました。

困りごとは十人十色、解決への無限のアイデア

今回のディスカッションで注目するのは「発災後の避難」という状況からです。必要に応じて「避難所生活」または「仮設住宅生活」、「在宅被災」などの状況や、逆に仮設住宅に入れないという場合までを想定しています。

「視覚障がい」「聴覚障がい」「車椅子ユーザー」「精神障がい」の4グループに分かれ前回のワークショップででた課題についてグループディスカッションをしていきました。

前回のワークショップの参加者は18名。各グループからはこのような心配の声が。
■視覚障がいグループ
「自宅避難の方が良い」「盲導犬の扱われ方が心配」「音が頼りなので、仮設住宅でも適切な程度の防音が必要」

■聴覚障がいグループ
「筆談を面倒くさがらないでほしい」「緊急の情報は音で来るのでわからなくて不安」

■車椅子ユーザー
「パンクしたら大変」「充電ができないと大変」「地震でドアが開かなかったらどうしよう」
■精神障がいグループ
「感覚過敏にとっては避難所が不安」「障害者手帳を持っていない人も多いから、サポートを受けられない」
※第一回ワークショップの記事はこちらから

今回私は「精神障がい」のグループに参加していましたが、想像以上に様々なアイデアや意見が活発に飛び交っていたことに驚かされたのでした。

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自己紹介を済ませ、早速ディスカッションへ。まず「仮設住宅の選択肢が少なすぎる」ということについてそれぞれのグループで「こんな仮設住宅の選択肢があってもいいのではないか?」など、アイデア出しをしました。

各チームの発表タイムではこんな意見が。
■視覚障がいグループ
「仮設住宅の並べ方を工夫し、コミュニケーションが生まれる工夫をしたい。前提として自宅避難を選ばざるをえないとして、そこに配給される方法や手順の話もした。」

■聴覚障がいグループ
「民泊システムや学校、空き家などの選択肢を増やす。ペット可など。避難する期間によって選べるシステム作りを。」

■車椅子ユーザーグループ
「公民館や空き家、ホテルなどをアプリで検索できるようにしたい。人によって場所の合う合わないもあるので、その情報をストックできるアプリが欲しい。一人になるのが一番大変なので、人がいる場所がわかるようにして欲しい。」

■精神障がいグループ
「空き家を使って、障がい者優先の利用を。そこに住むとしても、内覧ができて選べる権利があると良い。あとは障がい特性によって、どこに建てるか、どこに住むかを分けて考えても良い。障がい者と健常者が一緒に住める、助け合える仮設住宅があると良い。」

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仮設住宅という仕組み自体の問題点として、一度決定すると引っ越すことが難しいと言う問題もあります。それに対しては住む前に体験会や、仮設住宅の窓口に障がい特性を理解している人を配置するのも良いのではないかという意見もありました。

次に「障がいごとの課題の解決策を考案しよう!」というテーマでひとりひとりがアイデアを出し合い、付箋に書きアイデアを集めていきました。一例をご紹介したいと思います。

① 視覚障がい当事者の課題「仮設住宅でも音を頼りに生活したい」
・音で誘導してくれるものを設置する(スマートスピーカーなど)
・近所や仮設住宅同士でのコミュニケーションが必要
・周りの環境音を手がかりにできる場所に仮設住宅をたてる

②聴覚障がい当事者の課題「見た目で聴覚障がいと伝わらず誤解が生じる」
・ヘルプマークをつける
・ブギーボードやスマホケースなど見えるところに聴覚に障がいがあることを表示する
・障がいがあることを書いた専用Tシャツを国が配布して着る
・筆談ツールを設置しておく、窓口をつくる
・UDトークや骨伝導等を使う

③車椅子ユーザーの課題「在宅被災・仮設住宅・屋外を自由に移動したい」
・キャタピラー式車椅子、二足歩行型車椅子があったらいい
・仮設住宅のバリアフリールールを決める
・持ち運び式スロープやLEDスロープなど設備の充実
・移動支援ボランティアに報酬を渡す
・車椅子の使い方を地道に伝えていく
・避難所のデータを可視化してマッチングできるアプリをつくる
・仮設住宅をシェアして助け合いを生むためのマッチングアプリをつくる

④精神障がい当事者の課題「今までとは異なる生活環境に慣れるのが大変」
・住みやすい環境を作っていく(防音・防臭)
・周囲のサポート体制の強化
・障がいの認知を広めていくこと、また、お互いが障がいを言いやすい世の中にしていくこと
・相談できる環境を整える
・自分の障がい特性をカバーするためにできる「自己啓発」を普段から行っておく

様々なアイデアが出てきた中で、次に全員でそれを見て回り自分が一緒に課題を考えていきたいグループに着席し、障がい種別で限定しない新しいグループをつくる形をとりました。やはり自分の障がい以外のこととなると知る機会・考える機会も少なくなってしまうのは事実です。そのため、障がい種別に囚われないディスカッションができる仕組みはとても良いと感じました。

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新しいグループで内容をブラッシュアップしてでた意見がこちら。

■視覚障がいグループ:
・普段から地域の中での困りごとがリスト化されているものを配備し、非常時もそのリストを活用していく。
・必要なサポートの緊急度や具体性、頻度、温度感がわかるものを作る。

■聴覚障がいグループ:
・聴覚障がい専用のヘルプマークをつくる。
・ヘルプマークがない場合の対策として、聴覚障がいであると一目でわかるような専用のTシャツを避難所に常備する。
・避難所の生活や被災地においては、周囲の意識改革も必要であることから、ポスターなどで啓蒙活動をする。

■車椅子ユーザー:
・場所がちゃんと確保されれば自立して動けるので導線のルールを明確化する。
・実際にマンパワーがあれば解決することが多いので、行政支援を使いボランティアではなく「業務」として対価を払ったうえでマッチングする。
・車椅子やその修理キットを支援物資として支援できる企業があるといい。
・壁が薄いことを逆手にとって「シェア」をして暮らす。障がい者、健常者、ママさんなど様々な人とシェアすることで助け合いが生まれる。

■精神障がいグループ:
・震災時、震災が起こる以前にも障がいの認知を広めることは大切。震災時には相談ブースを作る。
・障がい者と健常者の間でどうしても理解がし合えない状況も起こりうるので仲介人をたてる。
・災害時には音声での指示が多くなりがちだが、文字情報でも残すことで発達障がいのある方でもわかりやすくする。

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「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあるように、自分だけの視点では考えつかないようなアイデアや意見が飛び交っている中で、ひとつの課題解決に向けて一緒に考えていくことはとても達成感のあるものでした。

「障がい者と震災」に国の理解を

今回ワークショップに来られていた立教大学で福祉支援活動に取り組んでいる長坂先生は、プレハブを普段からユニバーサルなものとして使い、被災時に移動させて使うというコンセプト「移動式木造住宅」を提唱しています。
しかし、その改良・普及には課題が多いと言います。

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「関西や北海道にて、地震が起きた際に木造の住宅を移動させて使うということが実現した。いかにバリアフリー化をしていけるか、質をあげていけるかが重要だが、国に提案すると『贅沢だ』とはねのけられてしまう。」

バリアフリー化が「贅沢」。

これを聞いた時には非常に憤りを覚えました。仮設住宅にバリアフリー化を施すことは障がい当事者にとっては「贅沢」ではなく「命取り」だからです。これから先、国が当事者の声を聴き、障がいがあることでの困難について理解が進むことを願うばかりでした。同時に震災弱者である障がい当事者に寄り添った提唱をしてくださっている長坂先生のような方がいらっしゃることをとても嬉しく感じるのでした。

日本維新の会所属の参議院議員音喜多駿さんもワークショップを見学され「大半の政治家がこういった実態やニーズをつかめていない。こういった現状をきちんと国は認識していかなければならない。」と、国として震災時の障がい者支援について理解を深めていく必要がある旨をコメントされていました。

ワークショップの最後に専修大学の佐藤慶一教授は「来年の春までに意見をとりまとめて出していきたい。仮住まいについての冊子を作っていくが、今回出てきた話し合いのアイデアを反映していきたいと思っている。」そう述べられました。

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当事者である自分たちの意見が反映され、提言のひとつに加えて貰えるのだと思うととても嬉しく思ったのでした。

このワークショップの様子はYouTubeで公開されています!
ご興味のある方はこちらからご覧ください。
超福祉 障害 × 震災 ワークショップ 障害者と考える福祉避難と福祉仮設住宅

■関連リンク
【イベントレポート】第1回 超福祉 障害✕震災ワークショップ

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ライター わに

17歳の時に側頭葉てんかんを発症、精神障害者手帳2級の障がい者。 酸いも甘いも経験してきた熟れ時アラサー女子。 「全力で働き全力で遊ぶ」がモットー。 誰彼構わず噛みつき周囲をヒヤつかせるため「わに」。 過激な記事を投稿しようとし編集長に止められるのが日課。

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