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一つじゃない 第10回

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ライター:風来坊

社会福祉法人や特定非営利活動法人(NPO)等は「困っている人」の役に立つことを目的とした集団です。
しかし、国の行いで「困っている人」が不利益を受けていたら社会福祉法人や特定非営利活動法人はどちらの味方に付いてくれるのでしょうか?
本来の目的である「困っている人」の味方でしょうか?
それともお金をくれる国に味方するのでしょうか?

<はじめに>

2016年に施行された「障害者差別解消法」は本来の趣旨通りに運用されているならば障がい者の社会参加の増加に大きな役割を果たすだろう。
しかし、実際に障害者差別解消法を知っている者はどれくらいいるだろうか。

<障害者差別解消法とは>

障害者差別解消法とは、障害を理由に障がい者の社会参加を妨害することを禁じ、且つ「合理的配慮」という障がい者が社会生活を送る際の困難に対し他者に協力を求めることができる可能性を含んだ法律である。
この法律における合理的配慮の対象は「障害当事者」と「公務員」のみである(一応、民間にも努力義務として合理的配慮を求めているが「やってもやらなくても同じ」というお飾りである)。
※過去記事参照 小学生にもわかる「障害者差別解消法」~人に優しくする法律~

<宮城県の条例とは?その実状とは?>

2021年に宮城県で施行された「障害を理由とする差別を解消し障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(以下、共生社会づくり条例)」では、そうした障害者差別解消法を更に補強し、県単位で障がい者の社会参加を促進し、合理的配慮の対象は「民間」まで拡大した条例になるはずだった。
しかし、宮城県は様々な抜け穴をこの条例に用意していたのである。

・抜け穴① 守っても守らなくても良い。
 共生社会づくり条例の相談窓口の「宮城県障害福祉課」にこの条例について「合理的配慮が民間も義務になったが守らない者に関してはどこに通報すれば解決されるのか?」と問い合わせたところ…
「この条例に罰則はない。そのため県としては何もしないが障がい者が不当な扱いを受けた根拠になるので解決したければ障がい者本人が個別に裁判を起こせば良い。」
というのである。
 噛み砕いて言うなら
「守っても守らなくてもどっちでも良い。文句があるなら自費で相手を訴えな。」
というのである。

・抜け穴② 宮城県内でも運用基準が曖昧
 宮城県障害福祉課に問い合わせると、宮城県庁(宮城県)と国の障害者差別解消法の運用基準は一致しているとのことであった。
しかし、宮城県教育委員会、宮城県議会、宮城県警は宮城県庁とは違った独自の基準で障害者差別解消法及び共生社会づくり条例を運用して良いというのである。
実際に宮城県警に「障害者差別解消法の理解」について質問状(メール)を送ると「障害者差別解消法の合理的配慮とは、警官が対象を障害者と認識し一方向的に提供する配慮である。」という旨の回答があった(原文は私の個人情報も入っているので今回の公開は控える)。しかし、合理的配慮は障害者差別解消法も共生社会づくり条例でも当事者と第三者との建設的な話し合いの上で行われるものであり「一方向的」に展開されるものではないのだが宮城県警ではこれが障害者差別解消法及び共生社会づくり条例の合理的配慮の正しい理解と主張し、宮城県庁もそれを認めているのである。
 …どうだろうか。
守っても守らなくても良い、
しかも、公務員は自分勝手に運用できる、
そんな法律や条例を「民間」だけが守らなければならない理由とはなんだろうか?
 はっきり言おう。
 罰則がなく、公務員も守らない、そんな障害者差別解消法及び共生社会づくり条例は、行政が福祉の責任を民間に押し付けるための有害物質なのである(実在する物質ではないが…)。

<ソーシャルアクションとしての署名活動>

実際に使用している署名用紙

 障害者差別解消法及び共生社会づくり条例は誰もがしっかり守れば障がい者の社会参加が促進され、その結果として障がい者のQOL(生活の質)が向上し、地域経済も活性化、納税者の増加にも繋がり、地域どころか国にとっても恩恵しかないのである。
 この恩恵を国や県が受けるためには、民間に法律や条例を押し付ける前に公務員が先んじて障害者差別解消法及び共生社会づくり条例を厳守し民間のお手本になる必要がある。
そのため現在はバラバラで運用されている障害者差別解消法及び共生社会づくり条例の基準を統一させ、更に公務員一人一人に浸透させる作業が必要なのだが、私が宮城県庁や宮城県警にその旨を申し入れたが聞き入れてもらえなかった。
そこで私はソーシャルアクション(民の力で国を変える運動)として
「全ての宮城県の地方公務員に障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消に関する法律)の理解を促進させることを求める署名」を集めることにしたのである。
当初は2022年2月から活動することを想定していたが同時期に宮城県内でのコロナウィルス感染拡大が起こり、実際に私が活動できたのは3月中旬から4月上旬までであった(4月中旬以降も活動継続)。

<ソーシャルアクションとしての署名の成果>

コロナ禍という現状を踏まえ署名は、親戚、知人、ご近所という狭い活動範囲で行っているが数十の署名は集まっている。
それに反して、本来ならば障がい者の味方であるはずの社会福祉法人等からは協力を得られていない。

社会福祉法人等の署名参加状況

<おわりに>

障がい者の社会参加を促進するために作られた障害者差別解消法及び共生社会づくり条例。
しかし、国や自治体は障がい者の社会参加を快く思っていないのではないだろうか。
今回、私は署名というソーシャルアクションを通じて改めて障害者差別解消法及び共生社会づくり条例の形骸さを感じ、また、本来であれば障がい者の味方のはずの社会福祉法人等が一皮めくれば「みなし公務員」であり、己の保身に必死な種族だと再認識したのであった。

本当に障がい者の味方になってくれるのは誰なのだろうか?

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ライター 風来坊

東北の片田舎在住のアラフォー。 児童虐待、いじめ、パワハラ、自傷による措置入院を経験。 田舎では福祉に偏りがあると考え30代から大学で福祉を学ぶ。 数年前には事故で利き手が不自由になり、現在はリハビリを兼ねた趣味(プラモデル、ニードルフェルト、UVレジン)に没頭中。 いつか全ての人が楽しめる駄菓子屋を開きたい。

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