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立ち上がらなければ。共生のために変わるべきは社会だけではない!

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ライター:わに

皆さんこんにちは!ゼネラルパートナーズでライターをしているわにです。私はてんかんとそれに付随する「器質性気分障がい」があります。今回は国際福祉機器展の中のひとつのセミナーに参加してきました。「障害のある人が社会参加しやすい共生社会の実現~2020年とそれ以降に向けた取り組みと課題~」というセミナーを障がい当事者目線で聞いてきたレポートをお届けします。

年々変化する障害者を取り巻く環境

今回登壇されたのは、社会福祉法人日本身体障害者団体連合会会長・東北福祉大学総合福祉学部教授の阿部一彦さんです。ご自身もポリオの当事者で下肢に障害があります。

阿部さんはこのセミナーの冒頭でこう仰っていました。
「国では(障害者を取り巻く環境について)色々と議論しているが地域に届いているかはわからない。国単位ではなくそれぞれの地域に(施策を)反映してくことの重要性をこのセミナーで考えたい。」

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そう阿部さんが仰るのは社会福祉がかつては「中央集権体制」であり国の管理下に置かれていた状況があるからです。しかし近代では障害への理解が進みつつあり、国のトップダウン型から地方自治体が独立して施策を考える「地方分権」となっていると言います。

「地域レベルの活動があってこそ。地域における多くの当事者団体、地域の団体の連携で障がいのある住民と障害のない住民とのつながりが増え、支え合いができる。」そう阿部さんは仰います。

障害者を取り巻く環境の歴史を紐解いていくとその変化の過程が見えます。
1964年に開催された東京オリンピック・パラリンピックでは脊髄損傷の障害がある人だけがパラリンピックへの参加を認められていたそうです。その他多くの障害のある方は入院しているという状況があり、海外からの反応は「日本の障がい者は病人なのか?」という批判的なものでした。

逆に欧米では障害のある方が地域で働いている事例もあり、そういった方が日本へセミナーに来ることで当事者の中には日本でも将来地域で生活できるのではないかという希望を持った人もいたと言います。

1970年~1990年は障害者を「保護」し、社会福祉施設整備を整える時代でした。
1990年~2010年までは障害者の自立を支援する時代でした。在宅福祉サービスの整備もなされていきます。

1990年以降は国ではなく地域が主体となって障害者を取り巻く環境の整備をしてきたそうです。そして2000年には社会福祉法の制定で主体が利用者に成り変わっていきました。2006年には障害者自立支援法が施行され、障害者の「生活の充実」「心の豊かさ」に価値をおく成熟型時代へと変化していきました。

その後、2020年東京オリンピック・パラリンピックが決まったことが「絶好の機会」となるのです。ユニバーサルデザインの広がりや心のバリアフリーの認知度が向上し、「誰もが暮らしやすい社会づくり」に向けて社会が動いていくようになります。

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2011年の障害者基本法の改正では「発達障害」「その他心身の機能障害」というワードが含まれ障害者の範囲が広がるとともに、障害だけではなく社会の中にバリアがあるという「社会的障壁」というワードも明確に示されました。

「社会的障壁」大きな意味をなすその一言

「社会的障壁」とはどんなことを指すのか?
・社会における物事(通行、利用しにくい施設、設備など)
・制度(利用しにくい制度など)
・慣行(障害のある人の存在を意識していない慣習、文化など)
・観念(障害のある人への偏見など)
・心の壁(心のバリア)

「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているので、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという社会のモデルが出来上がっていったのです。社会的障壁を解消するためには当事者の活動も重要になります。その際に掲げられた合言葉は
「Nothing about us without us」(私たちのことを私たち抜きに決めないで!)でした。

法改正後には当事者が入った評価会議が行われたりするようになり、当事者の参画が社会的に可能となってきました。

合理的配慮と障害・障害者理解

「合理的配慮」の不提供も差別になることは皆さんご存知だと思います。ひとりひとりにとって困ること、それが「社会的障壁」です。ひとりひとりへの配慮をすることこそが「合理的配慮」ですが、当事者側にも努力が必要であると阿部さんは仰いました。

ひとりひとり違った「社会的障壁」があり、それはどんな不便でどう困っているのかを伝えていくことが大切だと言います。例えば東日本大震災では見てわかる障害のある方は近所の方が水汲みやおすそ分けなど支援をしてくれたにも関わらず、目に見えない障がいのある方が支援を受ける機会は少なかったと言います。目に見えない障害のある方は何に困っているのか伝わりづらいことと、同時に近所の方や親戚にも言いづらい。それが現実だと言います。

障害理解・障害者理解の観点からまだ心のバリアフリーが十分に整っていないことが分かったのでした。周囲も当事者の立場にたって当たり前に配慮を行うことが大事だと阿部さんは仰いました。

阿部さん

ユニバーサルデザインの街づくりと心のバリアフリーの体現

2020年の東京オリンピック・パラリンピックは「絶好の機会」と先ほど書きましたが、街づくりの面でも良い機会となっています。東京2020に向けた重点的なバリアフリー化や全国各地における高い水準のユニバーサルデザインの街づくりが始まっています。

移動しやすく生活しやすいユニバーサルデザインの街づくりに向けてより一層強力かつ総合的に、国、地方公共団体、民間が一体となって取り組みを進めていく重要性を阿部さんは語りました。
「ユニバーサルデザインの街づくりは災害発生時に障害のある人を含め人々の避難行動を円滑にすることから、災害に強くしなやかな国づくりの観点からも重要な取り組みである。」と言います。

ユニバーサルデザイン2020行動計画の中でも「心のバリアフリー」の重要性が高まっています。

「心のバリアフリー」とは?
「様々な心身の特徴や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うこと(2017年2月ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定)」

「心のバリアフリー」を体現するためには3つのポイントがあると言います。
1. 障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」を理解すること
2. 障害のある人(及びその家族)への差別(不当な差別的取り扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること
3. 自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を養うこと

3つ目の「多様な他者」には障害者だけではなく外国人なども含まれています。

握手

身近な具体的な取り組みとしては、学校教育では教科書に「心のバリアフリー」について明記されるとともに教員に対する研修がなされるようになります。企業においては研修マニュアルに沿って社員教育の実施をし、障害者の活躍がしやすい環境をつくっていきます。

具体的な取り組みが様々ある中で阿部さんが一番重要だと仰るのは「障害のある人による取り組み」です。

自らの障害を理解し、社会的障壁を取り除く方法を相手に分かりやすく伝えることができるコミュニケーションスキルを身に着けること、そのために障害のある人自身やその家族を支援する必要があると語りました。

社会的障壁を社会が取り除くのを待っているのではなく、私達当事者も変わらなければならないのです。

誰もが暮らしやすい共生社会の実現

誰もが元気に生きがいをもって生活を営むためには、人々が集まり、互いに支え合って活動することが大事だと阿部さんは仰います。
「障害のある方が社会参加すること、それが元気のもとで健康につながる。出かける場所が大切になってくる。そのためには不自由な場所の整備が必要。観光のバリアフリー化もできると良い。孤立するというのは大変な事である、孤立しないための取り組みが大事である。」

その上で阿部さんはこう語りました。
「かつての社会は健康な人に合わせた社会だった。今もその傾向が残っている。でもこれからは障害者に基準を合わせた社会を築くことが必要で、それは不便を元に社会を変えていくチャンスがきている。そして国、地方公共団体、私達はそれを生かさなければいけない。」

障害のある方や不便を感じている方、高齢者や妊婦、ケガなどによる一時的障害者を含めて、彼らに基準を合わせた社会を創り社会的障壁を取り除く。それが「誰もが暮らしやすい共生社会の実現」であると締めくくりました。

手助け

当事者目線でセミナーを受けて思う、徒然

私自身てんかんと器質性気分障害がある当事者で、当事者目線でセミナーを受けてきました。阿部さんのセミナーの中で強く印象に残っているのは「当事者自身が障害理解・障害者理解を発信していくことの大切さ」でした。

特に精神障害の当事者の方であればわかって頂けるかもしれませんが、精神障害というもの、そして精神障害者に対しての理解はまだまだ進んでいません。ましてや自ら精神障害者であり、こんなことに困っている、と発信することは気持ち的に容易なことではありません。それこそが社会的障壁であり「心のバリア」なのだと気づかされました。

しかし、同時にあぐらをかいていてはいけないのだと思いました。社会側が変わってくれるのを受け身で待つのではなく、自分自身が変えていく。ひとりひとりのその意気込みや行動こそが社会を動かしていく原動力になるのだと。

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ライター わに

17歳の時に側頭葉てんかんを発症、精神障害者手帳2級の障がい者。 酸いも甘いも経験してきた熟れ時アラサー女子。 「全力で働き全力で遊ぶ」がモットー。 誰彼構わず噛みつき周囲をヒヤつかせるため「わに」。 過激な記事を投稿しようとし編集長に止められるのが日課。

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